第478話 みんなで親方たちの元へ

「ぐすっ ぽぽちゃん⋯」

ぽぽちゃんにお手手を伸ばします。でも

『ダメだぞ。サーヤ』

「あい」ぐずっ

分かってるよ~


『あらあらまあまあ、大袈裟ねぇ、サーヤ。抱きつけないのは今だけなんだから』

『泣くことは無い。怪我してるわけじゃないんだから』

「うにゅ~」

おばあちゃんとミアちゃんは、あのもふもふの素晴らしさが分からないの?

そう。サーヤには今、ぽぽちゃんたちにお触り禁止令が発令されているのです。


『まあ、気持ちは分かるな。これは気持ちいい』

『そうねぇ。サーヤがもふもふ言うの納得だわねぇ』

アルコン様、結葉様、そうでしょ?分かるでしょ?


『あ、あのオイラたち歩くだよ』

『そうなんだな』

『あるけるんだな』

ぽぽちゃん三兄弟が自分たちで歩くと訴える訳⋯それは


『『『いやいやいや』』』

『無理だろ』

『無理だな』

『無理ねぇ』

おいちゃん、アルコン様、結葉様にことごとく却下されたその訳は


『ぼくも無理だと思うよ~』

ぴゅいきゅい『『うんうん』』

『『『もふもふすぎて』』』

みゃあ『あんよみえないにゃ』

『転がっちゃうのだ~』

そうなのです。寒さに反応して一気に冬毛になったもふもふたち。とてもじゃないけど立つことすら出来ません。最初、ギン様の背中にまとめて乗ってもらったんだけど


『『『うわぁっなんだな』』』

「うきゃーっ」

『『『ギャーっ』』』

みんながギン様の背中から転がり落ちるぽぽちゃんたちを見て、叫び声をあげました。そんな中、


〖危ないっ〗ぱちんっ


ぷかぷかぷかあ~


『『『うわぁ~あ?あ、あれ?』』』


「ふあ?」

ぽぽちゃんたち浮いてる?


〖ふぅ。間に合ったわね。良かったわ〗にこっ


「ふお?じーにしゃま、たしゅけちゃ?」

〖そうよ。びっくりしたわねぇ、転がっちゃうなんて。これは抱っこしないとダメね〗

「あいがちょ」

ぽぽちゃんたち助けてくれて。

『『『ありがとなんだな』』』

ぽぽちゃんたちもありがとしてます。

〖うふふ。どういたしまして〗


『『『でも~』』』


「ふにゅ?」

〖でも?〗


『なんでオイラたち』

『取り合いになってるだ?』

『にいちゃん、ちいにいちゃん、たすけてなんだな』


あまりにもふもふで気持ちのいいぽぽちゃん三兄弟。誰が抱っこするかで争奪戦?が⋯


『私にお任せ下さいませ!ハアハア』

『お姉様はダメですわ!』

『そうにゃ!危ないにゃ!』

『どうしてですの!?』

『ご自分の胸に聞いてくださいませ!ダメですわね、私も抱っこしたかったですけれど』

『リノ様を抑えるの優先にゃ!残念にゃ!』

リノ様、アイナ様、ニャーニャ脱落。


『それじゃ、ちびっこ担当の俺たちが⋯あれ?』するん

『どうしたの?クゥ⋯え?』するん

『ぼくが抱っこしますよ⋯はい?』するん

『皆さんどうしたんですか?⋯ええ?』するん


『『『『⋯⋯』』』』

なぜか抱っこを諦めて、無言で見つめ合うフゥ、クゥ、山桜桃、春陽。でも、手は無意識にぽぽちゃんたちを撫でています。そして、


『大変です』

『もふもふが』

『すべすべすぎて』

『だっこできません』

四人から伝えられるびっくりな事実⋯フゥたちも脱落


〖ええ?〗

『おいおい』

『そんなことあるのぉ?』

ジーニ様たちもびっくりです。


『そしたら俺が⋯おお?』するん

『何やってんだ?⋯うお?』するん

『何遊んでんだよ⋯なんだ?』するん


『『『⋯⋯』』』

力持ちのドワーフさんたちも試したけど、やっぱり顔を見合わせて


『こりゃだめだ』

『俺たちじゃ』

『手が短い』

なんと!普通の人より小さめのドワーフさんたち、力があっても腕が回りきらなくて滑るようです。

よって、ドワーフさんたちも脱落


「ふお~」

『ぽぽちゃんたち』

ぴゅいきゅい『『すごいね~』』

最強のもふもふです。ちびっこたちで拍手です。


『『『⋯⋯』』』ふわふわ

呆然とするぽぽちゃんたち、まだジーニ様の魔法で浮いてます。


『んな馬鹿な⋯』

『あらあらまあまあ⋯』

『あの毛、欲しい』

おいちゃん、おばあちゃんもびっくり。ミアちゃんだけなんかズレてます。


『では、我が』

『私もぉ』

〖では、私も〗

アルコン様がぽぽちゃんを、結葉様がなずなちゃんを、

エル様がつくしちゃんを抱っこします。


『ああ、確かに腕が回らないと滑るな。だが、魔法で少々安定させれば』

『そうね。軽い風魔法でも大丈夫みたいよぉ。うふふ。すごいわぁ役得ねぇ』

〖ほう、すごいですね。この抱きごこちは〗

さすがです。一発で抱っこ成功です。

勝者はアルコン様、結葉様、エル様でした。パチパチパチ!


『き、緊張するんだな』

『たすけてなんだな』

『恐れ多いんだな』

ぽぽちゃんたち、神様たちに抱っこされてカチコチになってるみたいです。頑張れ!大丈夫!みんな優しいよ!


『まあ、このまま親方たちのとこ行って、毛を刈ろう』

『ミアに欲しい』

『あらあらまあまあ、ミアったら。でも、これぬいぐるみにしたら⋯』ブツブツ⋯

おばあちゃん?何ブツブツ言ってるの?


〖そうね。刈るしかなさそうね。それよりアルコン、後で私にも抱っこさせて〗

〖お母様ずるいですわ。私も抱っこします〗

『ああ、私も抱っこしたいですわ!でもお姉様を放し飼いにはできませんわ!』

『残念にゃ!いっそリノ様を眠らせたらどうにゃ?』

『名案ですわね』

『酷いですわ!アイナ!ニャーニャ!』

おいちゃん、ぽぽちゃんたちの毛も刈るみたいです。そして、ジーニ様とシア様は抱っこ待ちをしています。

アイナ様たちは⋯がんばって!

みんなが魅惑のもふもふに夢中!ぽぽちゃんたち大人気だね!


ちなみにサーヤはハクの背中で

「ふわぁ~もふもふもふもふ~♪」ぎゅう~!すりすり

『ああ、捕まっちゃったぁ』

『逃げられなかったぁ』

と、フライとフルーを抱きしめてもふもふ堪能です。

「ふへへ~♪」

『『食べられちゃう~』』

失礼ですね。食べたりしないよ。うへへへ~


そんなこんなで、ジーニ様たちが交代でぽぽちゃんたちを抱っこしながら、小屋に到着す。そこで飛び込んできた光景は


『いったいこりゃ?』

『あそこで豪快に笑いながら毛を刈ってるのって』

『親父どもだよな?』

ドワーフさんたちが目をゴシゴシしながら言うと

『そうだよね?でもさ』

『目が悪くなったんかね?』

『うちらより、若いよね?』

すごい勢いで笑いながら毛を刈ってる親方たち。こちらから見えるのは後ろ姿。

それでも分かる筋肉の若々しさ!ムキ!肌のハリ!プリ!


奥様たちも目をゴシゴシしながら言ってると、その声に気づいたのか


『よう!どうした?息子共じゃねぇか!』

『ん?嫁も一緒か?』

『揃ってあほ面してどうした!』

『『『ガハハハハ!』』』

くるっと振り向いた親方たち!白い歯がキラリ!

そしてサーヤお気に入りの自慢のおヒゲもふさふさ!サーヤたちがプレゼントしたおヒゲにリボンもアクセント!

若さ溢れる眩しいその笑顔に


『『『うーん⋯』』』バタンッ

『『『あんたーっ!』』』バシバシッ


泡吹いて倒れたドワーフさんたち。奥さんたちが慌ててほっぺたビンタしてます。


『ああ?どうしたんだ?』

『なんで倒れたんだ?』

『さあな?分からねぇな』

特に心配するでもなく、相変わらず騒がしい奴らだなとか言ってる親方たち。


『あら?そう言えば、親方たちが若返ったこと伝えてましたかしら?ニャーニャ』

『んにゃ?そう言えば、ご主人が若返ったことは知ってたけどにゃ?』

『あら~?』

『どうだったかにゃ?』

『でもまあ、今お分かりになったから良いですわよね?』

『そうにゃね。凛さんも言ってたにゃ。こういうのをきっと百聞は一見にしかずって言うにゃ』

『まあ!お勉強になりますわね!』

『そうにゃね~』

うふふ、あははと楽しそうに話すアイナ様とニャーニャにゃん。


『あらあらまあまあ?何か使い方が違う気がするわぁ』

『何気にひでぇな』

おばあちゃん、突然巻き込まれた感有りですね。


『なんだ?知らなかったのか?』

アルコン様が驚いていると、ジーニ様は

〖そうみたいね。でも、医神。あなた気づいててあえて言わなかったわね?〗

エル様にジト目を向けてます。


〖さて?何のことでしょう?フフフ〗ニヤ


絶対にわざとだ!と、みんなが確信した瞬間でした。そして


『ににに、兄ちゃん、助けてなんだな』がくがくぶるぶる


『ああ、つくし!しっかりするだ!』

『ちいにいちゃん!』

エル様に抱っこされたままだったつくしちゃん、間近でエル様の笑顔を見てしまった!


〖ああ!大変!医神!つくしを渡しなさい!〗がばっ

〖むぐうっ〗

〖おや。奪われてしまいましたね。ふふ〗

〖あ~ん、かわいそうに!医神!つくしにトラウマが残ったらどうしてくれるの!〗ぎゅむう

『むぐうっ』

〖ふふ。すみません。でも魔神、つくしが苦しそうですよ?〗

〖あら?〗

『きゅう⋯』

ジーニ様のお胸でぐったりしてしまったつくしちゃん!

「ひぎゃあーっつくしちゃん!」

『ああっ!つくしーっ』

『ちいにいちゃーんっ』

ジーニ様のお胸は凶器!

〖いや~ん、ごめんなさぁい。しっかりして~〗ゆさゆさ

『きゅう⋯』くてっ


「つくしちゃーんっ」

『つくしーっ』

『ちいにいちゃーんっ』


今回の一番の被害者はつくしちゃんでした


〖フフフ⋯〗


☆。.:*・゜☆。.:*・゜

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