第476話 サーヤだよ!ハクだよ!

ちびっこたちもようやく落ち着き、結葉様の罰も

『いや~ん、ご馳走食べたいわぁ。サーヤ~ぁ』

「めっ!だにょ!」

〖結葉!サーヤにお触りもダメよ!〗

『そんなぁ~ぁ』

と、決定したところで⋯


『ところで、エル様、あちらはどなたですかの』

『ずっと立ち竦まれておるようで気の毒ではありませんかのぉ』

じぃじと亀じぃがエル様に訪ねながら、ある方向を見ると、そこには


『い、いやいや⋯』

うんうん

みんなで仲良く頷くドワーフさんたちがいた。


〖ああ、すみません。戻って早々の騒ぎで、つい、うっかり〗にや


と、口では殊勝なことを言っているが、その顔は⋯


『あっ、しまった。すまんな、ドワーフたち。今親方たちを呼んで来よう。モモ、スイ、親方たちが今どこにいるか知っているか?』


エル様は確信犯的な感じがするが、

〖ふふ、何のことでしょう。ですが、こちらの様子を知って貰えたのでは無いですか?ふふ⋯〗


ぶるるっ


で、でも、アルコン様は双子を慰めるのに必死で、本気で忘れていたようで、素直に詫びている。


『い、いや、お気になさらず』

『そ、そうですよ。お気になさらず』

ドワーフさんたち、お顔がヒクヒクしてます。


『いや、そういう訳にはいくまい。モモ、スイ、親方たちがどこにいるか分かるか?』

ぴゅい『ずびっ。おやかた、めーめーしゃんのとこ』

きゅい『ずぴっ。おかみしゃん、きぬしゃんたちと、こうぼう』

ぴゅいきゅい『『さっきはいたよ』』

『さっき?』

ぴゅいきゅい『『だって』』

きゅい『ぼくたち』

ぴゅい『おむかえ』

ぴゅいきゅい『『いったから~』』

『そうか。確かに我らを出迎えてくれたものな。それまでのことしか分からぬな』

ぴゅいきゅい『『そうだよ~』』

モモとスイは、自分たちが迎えに行くまではそこにいたとアルコン様に教えました。


『ということは、二手に別れた方がいいか?』

『いえ、親方は今、羊毛を刈っているはずです。それを工房に運ぶはずでしょうから、羊たちの小屋に寄ってから一緒に工房に行けば良いかと』

アルコン様の問にギン様が答えます。

『そうか、あれはなかなかの重量だからな我も運ぶのを手伝おう』

『そうですね。私も手伝いましょう』

どうやらアルコン様とギン様が迎えに行ってくれるようだ。だが、


『もし良かったらよ、一緒に連れて行ってもらえないだろうか』

『せっかくだから色々見てみたいしな』

『羊毛刈ってるのも見たいしな』

『あっ!あれかい?親方のナイフがダメだったっていう!』

『そりゃあ、ぜひ見たいね!』

『そうだね!見なきゃいけないね!』

ドワーフさん達はもう、お上りさん状態!この機会にぜひ聖域を隅々まで見学したいと意気込んでいる。


あれ?そもそもどうしてドワーフさん達は連れられてこられたんだっけ?

〖ふふ。何故でしょうね?〗

ま、まあ、あとで分かるかな?


『では、行こうか』

『行きましょうか』


〖行きましょう♪〗

〖はい。お母様〗


『『え?』』

降って湧いたジーニ様とシア様の声。アルコン様とギン様が驚いて振り返ると、後ろにみんながゾロっと並んでいた。


『『は?』』

『なぜ、みんな行くんだ?』

『さ、さあ?』

アルコン様とギン様の疑問に答えたのは


〖あら、だってお客様をそのままに出来ないでしょう?〗

〖それに、医神が何が企んでるようですしね〗

〖おや。心外ですね。ふふ〗

〖〖どの口が言うんだか〗〗

ジーニ様とシア様。エル様が絶対何か企んでるから行くと、そして


「ぐしっ。おきゃくしゃみゃ、ごあんにゃい」


サーヤたちももちろん一緒。


『そうだな。親方たちのところに案内しないとな』

「あい。えぐっ。あちょ、さーやにょ、ぱんちゅ」

『そうだよな。今親方たちいないのサーヤのためだしな』

「あい。ありがたや。すびっ」

『あらあらまあまあ。ありがたやって、拝むんじゃないんだから。ほら、お鼻ちーんして』

「あい。ちーんっ」

いつの間にやらサーヤと一緒においちゃんに抱っこされてたおばあちゃんが、ハンカチでサーヤのお鼻をちーんさせます。

『う~ん。ティッシュペーパー、早く作らないとまずいな』

『そうねぇ。今の紙じゃ鼻はかめないものねぇ。がんばってくださいな』

『おう』

おいちゃんの仕事は山積み。

そして、聞きなれない物の名前にドワーフさんたちの目がキラーンとしたことに気づいてない。


『相変わらず、うかつですわね』

『そうにゃね。もうロックオンされてるにゃ』

アイナ様とニャーニャもいつの間にやら復活。

『まあ、無事に戻ってくれてよかったですわ』

『ありがとうございますですわ。お姉様』

『リノ様ありがとうですにゃ』

『いいえ。可愛い妹たちが無事に戻って来てくれたのですもの』

麗しき姉妹愛⋯

『では、ニャーニャ、こちらのリボンを⋯ハアハア』

『嫌ですにゃ!シャーッ』

愛⋯

『お姉様⋯』はぁぁ

なぜ美しいままで終われないのか⋯


『おや?光の精霊王様じゃないかい?』

『久しぶりだね』

『元気そうだね』

『相変わらず』

『癖が強えな』

『変わらねぇな』

ドワーフさんたちも光の精霊王様に気づいたようで、挨拶してます。後半は挨拶なのかは疑問だが⋯


『ドワーフさんたちお久しぶりですわ。アイナとニャーニャがいつもお世話になってますわ。あ、それから、私もサーヤちゃんにお名前を頂きましたの。今はリノですわ。よろしくお願い致しますですわ』にこっ

『おや。そうなんだね』

『リノ様だね』

『キレイな名前じゃないか』

『良かったな』

『じゃあ、リノ様もパワーアップしたんだな』

『アイナ様とニャーニャと同じだろ?』


リノ様とドワーフさんたちも顔見知りだったんですね。和気あいあいとお話しながら歩きます。


『そういやよ、さっき愛し子様「さーや、にゃにょ」が?』

『ん?愛し子「さーや、にゃにょ」様?「しゃま、にゃい」え?』

ドワーフさんのお話に割って入ったのは、いつものごとく


「いとしご、ちやう。しゃまみょ、にゃいにゃい。しゃま、えりゃいちと、さーや、おこちゃま、えりゃくにゃい」

サーヤが愛し子も、様も違うと言ってます。


『『『え?』』』

『『『でも?』』』


「ぶー。さーや、にゃにょ!」

まったくもう!いつも言ってるのにぃ~


『あのね~、サーヤはサーヤって呼んで欲しいんだよ~。あっ、ぼくはハクだよ~。よろしくね~』


『『『え?』』』

『『『フェンリル様?』』』

ハクがいつも通り説明してくれたら、ハクまで様がついちゃいました。


『も~。ぼくもハクだよ~。ぼく、この頃、サーヤの気持ちがはっきり分かった気がするよ~』

「お~。はく、にゃかま」

『仲間だね~』

いつもサーヤの言葉を代弁してくれてるハク。今までは何となく分かってたつもりだったけど、イヒカ様に続いてドワーフさんたちにも言われて、サーヤの気持ちがとってもよく分かったようです。


『くすくす。あらあらまあまあ。そうね、様は大人の偉い人につけるんだものね。まあ、お子様でも付けた方がいい人もいるんだけども、サーヤにはまだ違いがわからなかったから、そう教えたんだけど』

サーヤに教えたのは、おばあちゃん。楽しそうです。


「さーや、えりゃくにゃい。おこちゃま。おやくだち、ちてにゃい」

『ぼくもお子様だよ~。それに偉いのはお父さんで、ぼくは偉くないよ~。様つけられるなら、みんなの役に立てて立派になってからだよね~』

「にぇ~♪」

『ね~♪』


しーん


『あらあらまあまあ。偉いわ。二人とも。そうよね、肩書きはあなた達の力じゃないものね。様は肩書きに見合った成果を見せてからよね』

「あい!」

『うん!』

「でみょ~」

『やっぱり~』

『「様(しゃま)は、いや~」』

『あらあらまあまあ』


しーん


『ハク⋯』

ギン様、息子ハクがこんな風に思っていたのかと感無量⋯


『わはは!気に入った!』

『そうだな!様はまだ先か』

『じゃあ、サーヤにハク』

『『『よろしくな!』』』

『じゃあ、私らはサーヤちゃんにハクちゃんかね』

『『そうだね』』


「あい!よりょちくにぇ!」

『ん~、ぼくも、ちゃん?まあ、いっか~。よろしくね~』


『『『よろしくね』』』


ドワーフさんたちとも無事に仲良くなれたようです。


『ん?ご主人、サーヤちゃんのパンツってなんにゃ?』

『あら?そう言えば先程仰ってましたわね?サーヤちゃんのパンツのために親方たちが今いないって』

『どういうことにゃ?』

『さあ?』


その答えは、


『うふふ。もうすぐ分かりますわ』


☆。.:*・゜☆。.:*・゜

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