第445話 先生って?

キラキラ木漏れ日の森の中


「ありゅうひ♪」

『ある~日♪』


『ある日っていつかな~?』


「もりにょな~か♪」

『森の中♪』


ぴゅい『もりのなか~?』

きゅい『いまだね~?』


「くましゃんに♪」

『熊さんに♪』


『くまさん?』

『くまいるの?』


「であ~っちゃ♪」

『出会~った♪』


『であっちゃった?』

『であっちゃったの?』

『たいへんたいへん!』


「はなちゃく もりにょなか~♪」


みゃあ『おはなみてるにゃ!?』

きゅるるん『『『そんなばあいじゃ』』』

きゅるるん『『『『ないよーっ』』』』


『熊さんに出会~った~♪』


『わぁーっくまどこー?』

『きゃーっにげなきゃーっ』

『『わーわーっ』』

きゅるるん『『『おかあさーんっ』』』

きゅるるん『『『『たすけてーっ』』』』

『みんな、落ち着くのだ!これは歌なのだ!』

『え~?ほんと~?』

ぴゅいきゅい『『なんだ~』』

『『そっか~』』

『『『よかった~』』』

みゃあ『逃げなくていいにゃ?』

『大丈夫なのだ!』

きゅるるん『『『よかった~』』』

きゅるるん『『『『あんしん~』』』』


響く幼児とぬいぐるみの歌声。

ハクの背中に跨ってサーヤとおばあちゃんが楽しそうに歌ってます。おばあちゃんはサーヤの前にお座りです。

それから何やらちびっ子たちのツッコミが?わーわー?



『うふふ。可愛いわぁ。でも、くまさんに出会う前にぃ、すでに凛がくまさんよねぇ?』

おばあちゃんと仲良くお歌歌ってたら、結葉様がクスクス笑いながら言いました。


「う?たちかに~」

くまさんだね~。もう会ってた~♪

『あらあらまあまあ?私は可愛いくまの編みぐるみであって、熊ではないわよ?』

「う?くましゃん。にぇ?」

くまさんだよ?ね?

『サーヤ、本物の熊はこんなにプリティでふわふわで愛らしくはないわよ?あっちは怖~くてごっつい熊で、私は可愛い可愛い愛らしいくまの編みぐるみなのよ。分かったかしら?』にこにこ

「あ、あい。わかっちゃ」こくこく

逆らっちゃダメな気がする~


『まあ、実際問題、森の中で熊に会ったらダメだよな。あっ、サーヤ「な」だけは歌えてたけどな、「の」も歌えるようにしような』

「あ、あい」

おいちゃんが、何気にダメだししてきます。ぐすん。


『うふふ。さて、けっこう森の中に入って来たわねぇ。ちょうど少し開けた場所に出たことだしぃ、この辺でいいかしらねぇ?』

〖そうね。いいんじゃない?ちょうど座れそうな倒木もあるしね〗

結葉様がこの辺にしようって言うと、いつの間にか一緒にいたジーニ様が賛成してます。ジーニ様いつからいたの?お留守番じゃなかったんだね。


〖何を言ってるの?私がサーヤの初めてを見逃すわけないじゃない。それに留守番ならシアを置いてきたから大丈夫よ〗

そ、そっか~



その頃、お家では

〖お母様~っ!許さないわよぉ!リノの見張りに私を椅子に魔法で貼り付けるなんて!〗

『む~む~(解いてくださいませ~)』

〖うるさいですよ!お母様、覚えてなさいよ~〗


リノ様の見張り役を強制的に任命されたシア様が、大変お怒りのご様子。ちなみに、貼り付け魔法はタイマー式なのでもう解けてます。そんなシア様の元へ


『あ、あの、シア様。冷たいお茶でもどうぞ』ことっ

『シア様、ゲンさんがシア様のために作って下さった新作デザートです。どうぞ』ことっ

荒れ狂うであろうシア様の鎮静剤役として生け贄⋯ケフッ。居残りとなった二人が⋯


〖あ、あら、山桜桃に春陽もお留守番だったのね?おほほほ。ありがとう。まあ!美味しそうね。さっそく頂くわ〗

『『どうぞお召し上がりください』』


シア様が、目の前に用意されたお茶とデザートを口にすると


〖あ、あら?お茶も初めての味ね。とってもすっきりね。それでいてほんのり甘いわ。とっても美味しい。それにとっても可愛いわ〗

びっくりおめめのシア様!その様子を見て

『水出しのアイスティーに、凍らせたカットフルーツを色々入れてあるんです』

と、山桜桃が嬉しそうに説明する。

『まあ!素敵ね!デザートも美味しい!それに美しいわ!』

興奮しながらも上品にデザートを口に運ぶシア様。お上品だけど手は残像でぼやけます。

『甘夏という新しくゲンさんたちが栽培した柑橘を贅沢に使ったチーズケーキです。まだ誰も食べてないんですよ。シア様が第一号です。クッキーもどうぞ』

そんなシア様に今度は春陽が特別をアピール!

〖まあ!ほんと?う~ん美味しいわぁ~。こんなご褒美があるならお留守番もいいわねぇ。幸せぇ~♪お母様、今回は許してあげるわ。ほら、山桜桃と春陽も一緒に食べましょ!一人で食べるのは寂しいわ〗

まんまと乗せられるシア様です。


『『はい!ありがとうございます』』

『(さすがゲンさん。予想通りです)』

『(おかげで助かりました)』

おいちゃんはお見通し。


『む~む~(私にも~)』


お留守番組も楽しく過ごしてます。



そして、こちらではジーニ様が持論を語っている間に

『ちょっと待ってな』

『ちょちょいと整えてやるからよ』

『まかせな』

『『『錬成』』』

親方たちの手によって、そこら辺に転がってた数本の倒木が一瞬でつるんとしたお肌に!綺麗な丸太ベンチの出来上がりです!


「ふお~」

すご~い!

『あらあらまあまあ、さすがね~』

みんなでパチパチパチ~♪


『ほらサーヤ、これならトゲが刺さったりなんてことないからな。凛さんも毛糸引っかからないだろ』

そう言って親方がハクの上からヒョイッとサーヤとおばあちゃんを下ろして、丸太の上に座らせてくれました。みんなも続きます。


「あいがちょ!つるちゅりゅ!すべしゅべ!きもちいにぇ!」

『あらあらまあまあ、サーヤったら、半分ずつ言えてるなんて逆に器用ね。親方たち、ありがとう』

『おう!でもこんぐらい大したことねぇよ!』

『ここ頻繁に使うなら東屋でも建てるか?』

『今日の様子みてからでもいいんじゃねぇか?どうよ?結葉様』

親方たちが結葉様に聞くと


『う~ん?そうねぇ。しょっちゅう来るかわからないしねぇ?ジーニ様、色んな場所巡るんでしょぉ?』

〖そうね。どの辺に何があるか調査も兼ねてるから、目印くらいあってもいいかもしれないけどね。東屋はおいおいでいいんじゃないかしら?他にもいい所があるかもしれないしね〗

『分かった。必要になったら言ってくれ』

森の中にかわいい東屋。出来たらきっと素敵だね!


『その時はよろしくねぇ。それじゃあ、喉を潤してからこの辺りで薬草を探したいと思いますよぉ。みんな、いいですかぁ?』

「あ~い!」

『うん。い~よ~』

ぴゅいきゅい『『たのちみだね』』

『『どんなの探すの?』』

『『『さがすのとくい~♪』』』

みゃあ『フィオねぇね、ヴェルにぃに、アーブにぃにがもえてるにゃ!』

『妖精の本領発揮なのだ!』


みんなやる気満々です!特にフィオ、ヴェル、アーブの妖精トリオは植物を探すのは大得意!

『せいれいがんの~』

『れんしゅうにもってこい!』

『いっせきにじょう?』


「うにゅ?」

ん?なんかちがうかな?

『それを言うなら一石二鳥だな』

おいちゃん、すかさずツッコミ。


『『『そう!それ?』』』

どうやら三人は、おいちゃんに習った言葉を使ってみたかったみたいです!


『ぼくたちも木の上なら』

『任せてなんだけどな』

フライとフルーはフルーツ見つけるの得意だもんね!


『うふふ。そうねぇ、頼りにしてるわ妖精トリオ。フライとフルーは手先も器用だからぁ 、今日薬草も覚えたらもっと色々出来るようになるかもねぇ』

結葉様が楽しそうに言うと


『『『えへへ~たよりにされちゃったね~』』』

妖精トリオは照れ照れで体くねくね

『ほんと?』

『じゃあ、がんばるよ!』

フライとフルーはやる気満々、握りこぶしを作ってます。がんばれー!


『それじゃあ、始めましょうかぁ。初めて見る葉っぱを見つけたら声をかけてねぇ』


「ふぇ?」

『『『『え?』』』』

しーん


『ん?どうしたのぉ?』

結葉様、可愛らしく顎に指当てて頭こてんってしてるけど


「しょ、しょれだけ?」

だってほらね?

『何か気をつけた方がいいとか~』

ぴゅいきゅい『『しちゃいけないこととか?』』

みゃあ『さがしかたとかにゃ?』

『採取の仕方とか、何かないのだ?』

みんなで、あんまり適当に言われた気がしたから聞いてみると


『え~?』

え~?って、結葉様?


『おいおい⋯ちびっこ達の方がよっぽどしっかりしてんじゃねぇかよ』

『本当だよ⋯。サーヤちゃんたち偉いね。そうだよ、気をつけなきゃいけないことがあるからね』

ドワーフさんたちが呆れて代わりに教えてくれました。


『まずは必ず大人と一緒に行動することだね』

こくこく。みんなで真剣に聞きます!

『トゲがあったり、触るとかぶれるものもあるからな、勝手に触っちゃダメだぞ。サーヤはもう先に手袋つけた方がいいな』

こくこく

『匂いが強いものも要注意だよ。酷い匂いの物だけじゃなく、いい匂いの物もだよ』

いいにおいでも?なんで?こてんっ


『植物の中にはな?甘~い匂いを出して獲物を誘い込む奴もいるんだ。ちびっこは食べられちまうかもしれねぇぞ?』

ひえっ!?こわい!こくこくこくこく!

みんなで高速でうんうんします。

気をつけなきゃいけないこともたくさん!良かったね。教えて貰えて。


〖結葉はまったく⋯。みんな?見つけたものの特徴や、取り扱い方、それから効能⋯ん~、何に使えるかを覚えるのも大事よ。大人なら絵に書いたり特徴を書いたりするんだけど、あと魔法で覚えたりね。みんなはどうしようかしら?〗

ジーニ様が言いながら考えてます。


『ん~押し花はどうかしら?この世界の物も出来るのかしら?』

おばあちゃんも考えます。

『どうだろな?草なら出来るんじゃないか?親方、この世界に押し花ってあるか?』

おいちゃんも親方に聞いてみると


『聞いたことねぇな?どうやるんだ?』

『紙に挟んで重しを乗せてね、水分を抜いて保存できるようにするのよ。ぺちゃんこになるから本みたいにまとめることも出来るしね』

『紙使うならねえだろ?紙は俺たちがゲンに聞いて作るまでなかったんだからよ。少なくとも庶民はな』

『『あ』』

そうか。紙が一般的じゃなかった!

『ただ、乾燥するだけなら魔法で出来るな』

『あ、そうか。魔法があったな』

『それなら採取したままの形で標本みたいにすることも可能かしら?でも持ち歩くなら押し花にして本にした方が⋯』ぶつぶつぶつぶつ


「ふあっ」

あ~おばあちゃんが、

『思考の彼方に行っちまったな』

「あい。ちばらく、かえっちぇこにゃいかも⋯」

おばあちゃんがああやってぶつぶつしだしたら長いのです。


『まあ、思いついたのみんな試せばいいんじゃなぁい?それよりぃ、日が暮れちゃうわよぉ?始めましょ~♪』


しーん


〖結葉、あんた⋯〗

ジーニ様がっくり

『適当にも程があるよな』

『あんた、仕方ないよ結葉様だよ』

『そうだな、今更だな』

親方たち、半ば悟りを開いてる?

はぁ⋯

大人がみんなため息ついてます。


『ほらほらぁ、始めるわよぉ』


「あ~い」

『『『『『は~い』』』』』

みんな、なんとも言えない顔で葉っぱを探し始めました。


あれぇ?結葉様、先生だったよね?先生ってなんだっけ?


☆。.:*・゜☆。.:*・゜

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