第436話 温泉で⋯

かぽーん⋯


温泉に拐わ⋯連こぅ⋯連れてこられたサーヤです。

いつも通り、いいお湯です。いいお湯なんだけどぉ⋯


『すごいですわ!すごいですわ!お肌がすべすべですわ!つるつるですわ!水を弾きますわ!』

さすさすさすさす。つるつるつるつる。


うんうん。そうだね~。温泉すごいよね~。


『ああ!それにこのむちむちむにむにの感触!たまりませんわ!永遠にむにむにしたいですわ~!』

お顔むにむに。お腹もにもに。むにもにむにもに⋯


サーヤは一人でつかりたいなぁ。


『ダメですわ!サーヤちゃん、ぷっかり浮いてしまいますわ!私がしっかりバスチェアになりますわ!ほら、しっかり寄りかかってくださいませ!ああ!なんて幸せなのでしょう!』

ぎゅむぎゅむ~。


「うにゅう~」

そうなのです。リノ様がさっきから、すりすりむにむにしてるのは、サーヤなのです。自分の体で確かめてもらいたいです。

リノ様のお膝の上で抱っこされてるので、たしかにやわらかいけしからん枕が、サーヤの頭をすっぽり支えてくれてます。埋まっちゃいそうです。でも~


「うにゅ~」

がんばれー!サーヤの腹筋&背筋!埋まったら負けです!ぷるぷるぷるぷる。


『ダメですわ!サーヤちゃん!リラックスですわ!さあ、私の胸にどーんと来てくださいませ!それとも、私ではお嫌ですの?』うるうるうる

「うにゅ!?」

ど、どうしよう?泣いちゃった!?

『さあ、サーヤちゃん、私の胸に!』うるうる

「あ、あう~」

し、仕方ない。よっかかろ⋯

ヒョイッ

「う?」

あれぇ?


『ああっサーヤちゃんが~』


『んもう~。光ちゃんたら無理強いはダメよぉ。もう散々サーヤをむにむにしたでしょう?見なさいな。あっちでジーニ様がめんどくさい事になってるでしょお?』


「うにゅ?」

結葉様だ~。助かりました。でも~

「むすびはしゃま?じーにしゃま?」

リノ様から助けてくれた結葉様のお顔を見て聞きます。めんどくさいジーニ様って?


『そうよぉ。ほら、あそこでいじけてるでしょお?』

「にゅ?」

いじけてるの?なんで?とにかく、結葉様の視線の先を見てみると⋯


〖しくしく。サーヤに全く触れないじゃないのぉ⋯髪も体もフゥが洗っちゃうしぃ、せっかく温泉に浸かってるのに、リノに奪われちゃうしぃ。サーヤ~ぁ〗

『ああっジーニ様しっかりして下さい!さっきは仕方なかったじゃないですか!』



「あ~」

そうなのです。先に女湯の洗い場で綺麗にしてきたんだけど、その時に


〖サーヤは私が洗ってあげるわね〗

『ええ?ジーニ様にそのようなことお願いできませんわ!ここは私が!』

〖いいえ!私が!〗

『いえいえ私が!』

と、ジーニ様とリノ様が言い争いになっちゃったんだけど~


『何を仰ってるんですか?お二人とも。サーヤは私が洗います。ね?サーヤ』

「あい」

フゥと二人で呆れて見てると


〖なんでよ!?〗

『なぜですの!?』

そう言われましても、だってねぇ?


『なぜも何も、リノ様は初めてですし、洗い方分からないですよね?』

『うっ!』

そうだよね?洗い方覚えてまずは自分を洗わないと~。


〖私は初めてじゃないじゃない!〗

そんなこと言ったってね~?


『ジーニ様は、リノ様もですけど、髪の長さがあるんですからお手入れに時間かかるじゃないですか。それに、ね?サーヤ』じとっ

「あい。ふぅ。じーにしゃまみょ、りのしゃまみょ」

『「おんな(にゃ)のてき!!」』

二人で一緒に、びしぃっ!です!


〖『は?』〗

何をそんな不思議そうにしてるんですか?


『その豊かで長く美しい髪もさることながら!』

「ながりゃ!」


〖あら、嬉しい♪〗

『サーヤちゃんに褒められましたわ♪』

何を喜んでるんですか?


『そのボンッキュッボンのうらやまけしからんボディ!』

「ぼでぃ!」


〖まあ、我ながらスタイルいいわよね?〗

『はい!私もサーヤちゃんのおかげで若返ってサイズアップですわ!』

〖それは、許せないわ〗

『ええ?なぜですの!?』

むむむ。自慢は良いのです!それにポージングもいらないのです!


『明らかに私とサーヤを足しても余りある凹と⋯面積!』

「めんしぇき!」

間違っても凹凸とか言いません!面積です!


〖あら、まあ、それはほら。私たちは成熟した女性だから?〗

『そうですわね。お二人はこれからですわ』

ぬぬぬ~


『とにかく!髪も体も私たち二人の倍以上の面積があるんですから、時間だって二倍以上かかるんです!ですから二人足しても半分以下の私とサーヤが組むのが一番です!』

「でしゅ!」


〖そ、そんな!美しすぎるがためにダメだなんて⋯〗よろり⋯

『な、なんて罪作りなんでしょう⋯』ふらり⋯

なんだろね?なんだかとってもムカッてした気がします。


『安心してサーヤ。私も同じこと思ったわ』

「あい」

同士です。でも、フゥは近い内にあちら側に行く気がします。ぶー。


そんなこんなで、ジーニ様はサーヤお預け状態だったのです。



「ふあ~」

ほんとだ~。いじいじだ~。

『ねぇ?面倒臭いでしょう~?』

結葉様のため息がサーヤの頭に当たります。


『そんな!お母様ひどいですわ!私は今日初めてサーヤちゃんと触れ合ってますのよ!まだ触れ合ったばかりではないですか!可愛いぷりぷりのサーヤちゃんのお尻をもっと堪能したいですわ!それに皆様、裸の付き合いは大事だと仰ってましたわ!それにお母様ったら、私は『光ちゃん』ではなく『リノ』ですわよ!』ハアハア


しーん⋯


え、えっとぉ?サーヤ、湯着来てるよ~?今日はピンクのウサちゃんのもえちゃんバージョンだよ?サーヤ、なんか危ない?とりあえず、結葉様に抱きついておこう⋯ぎゅう。

『あらあらぁ。ひか⋯リノちゃんったらもう欲望丸出しねぇ。なんか危ない感じよぉ?お母様ちょっと心配。サーヤ、大丈夫よぉ。私が守ってあげるぅ』

「あ、あいがちょ?」

や、やっぱり危ないんだ?


『ジ、ジーニ様 。いじけてる場合じゃないです。サーヤが危ないです』ひくっ

〖そ、そうね。なんだか危険な感じがするわね〗ひくっ

いじけてたはずのジーニ様も我に返ったみたいです。お顔引きつってます。やっぱりサーヤ危ないの?


『お姉様⋯』

『出たにゃ。病気にゃ。変態にゃ』

後を追ってきたアイナ様とニャーニャにゃん。アイナ様は両手で顔を覆って首を降ってるし、ニャーニャにゃんは思いっきり引いてます。

「サーヤちゃん、ニャーニャだけじゃないにゃ。みんなドン引きにゃ。固まってるにゃ」

ん?みんなも?ぐるっと見渡すと確かに⋯


「ふあ~?」

みんなカチカチ?


『あら~。さすがの凛とゲンまで固まってるわぁ』

おばあちゃんは、自分で温泉魔法を編み出して、自分とミアちゃんにかけて温泉に入れるようになりました。濡れないけど、温泉の温かさとか効能とかは感じるんだって。執念だね。

〖それだけじゃないわよ。シアは純粋だから分かるけど、あの医神まで固まってるわよ〗

『クゥと山桜桃ちゃんに春陽くんなんて、お顔が真っ青ですわよ。温泉に浸かってるのに、そんなことあるのですわね』


そうなのです。結局みんなで温泉に来たので、混浴してたのです。ちゃんとみんな湯着をきてるよ?


あっ!温泉はね?ドワーフさん達と精霊さん達が頑張って、温泉を新しく増やして、建物も立派な銭湯みたいなのが出来上がってます!女湯、男湯、混浴があるんだよ。混浴が最初からある温泉で、露天風呂だよ。

湯着もね、絹さんたち親子と、やっぱりドワーフさんたちが張り切っちゃって、湯着だけじゃなくて、髪の毛が濡れないようにタオルでお帽子?ヘアーキャップ?まで出来てます。

なぜか脱衣所に、サーヤ専用クローゼットっていうのも出来て、中には色とりどり、たくさんの湯着や水着、ネコさんとか、クマさんとかのお耳とお顔がついたお帽子がたくさんあります。音の出るサンダルも!

前に改良が必要と言われた、ぴっこんぴっこんなる石はお帽子の動物さんのお鼻の部分についてます。これでもうのぼせないよ!


『あ、あら?私、何かおかしなことを言いましたか?何もおかしなことは言ってないと思うのですが?誰もが思うことですわよね?』きょとん


え~?

〖『思うか!!』〗

あっ、ジーニ様とフゥがハモったよ。


『相変わらず、残念な子なのねぇ』

『お姉様⋯』

『ダメにゃ。病んでるにゃ。手遅れにゃ』

さ、さすが長い付き合いの結葉様たち、容赦ない感じです。アイナ様は泣いてます。


『ええ?可愛い可愛いサーヤちゃんを撫でくりまわしながら髪の毛を洗ってさしあげたり、お体を洗ってさしあげたりしたいとは思いませんの?』ハアハア


しーん⋯


こ、こわこわこわこわ?なんでハアハアしてるの!?

『ハッ!あらあらまあまあ?ダメよ!サーヤこちらにいらっしゃい!』

『そ、そうだぞサーヤこっちに来い!』

あっおばあちゃんとおいちゃんが復活したみたい~


『ハ、ハク、みんな私たちの後ろへ』

『『『『『う、うん』』』』』

『モモとスイもはやく』

ぴゅいきゅい『『あ、あいっ』』

きゅるる『子どもたちも』

きゅるるん『『『『『『『はいっ』』』』』』』

わ~大人が前に出てちびっこ隠してるよ


『あ、あんた!急いでリノ様専用の風呂作っとくれ!』

『そ、そうだね、それがダメなら拘束具とか?』

『監禁部屋とか?』

『そ、そうだな』

『と、とりあえずなんかねぇか?』

『トレントたちに頼んで捕まえといてもらうか?』

拘束?ドワーフさんたちがなんか物騒なこと言い出しました。トレちゃんまで呼ばなくても⋯


『じ、じぃじ様、亀じぃ様。お、オイラなんかおかしいだ。身体中の毛がぞわわわって立っただよ』

『に、にいちゃん、おいらもなんだな』

『わたちもなんだな』

『ぽぽたちよ、様はいらんぞ。安心しなさい。ちっともおかしくないからの。ワシらも同じじゃ。のお?』

『その通りだのぉ。ワシも甲羅に引っ込みたくなったしのぉ』

『私たち』

『『『ずっと隠れてる』』』

『『『そうだか?よかっただ』』』

うわぁ~ぽぽちゃん兄弟もじぃじたちも怖いみたい~。青葉ちゃんたちは完全に怯えてるね。


『皆様、大丈夫ですの?おかしいのではないのですか?』

なんでそう思わないの?と、心底不思議だと首を傾げるリノ様に⋯



『『『『『おかしいのはお前だ!』』』』』


みんなの声が見事にハモった瞬間でした。


『おかしいですわね?』

リノ様、重症です。こわこわこわこわっ


☆。.:*・゜☆。.:*・゜

お読みいただきありがとうございますm(_ _)m

なぜでしょう⋯光の精霊王様、こんな予定では⋯

なぜ勝手にこんな⋯?摩訶不思議

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