第347話 親方の工房で

サーヤが何かやらかしてないか気にしつつ。やらかしてそうだな⋯



「へっぷちんっ!」

〖サーヤ、風邪ですか?〗

「うにゅ~?ずぴっ」

〖お熱はないですね〗

「あい。はっくちっ!」



『さあ、入れよ』

『どうよ!中々だろ?』

『へ~これが親方の工房か』


俺には少し屈まないと通れない扉を潜る。

綺麗に整ってるな、どこに何があるか一目瞭然ってやつだな。手入れが行き届いた良い工房だ。流石だな。


『おう!今、火入れるからよ。ゲン、お前インベントリに素材が仕分けされてんだろ?鑑定も出来るなら、尚更お前が欲しい石が分かるんじゃないか?なきゃ、ここにある石も見てみろ』


なるほど、鑑定も併用すればいいのか。玉鋼やる必要も無いのか?不純物は分離してるようだからな。


『このヒヒイロカネってやつ、柔らかさと粘りがあって良さそうだな。柔軟性がありそうだ』

ボソッと言うと、親方兄弟の呆れた目が


『⋯伝説のヒヒイロカネをハサミに?しかも羊用?』

『知らねぇって怖ぇな』

『ああ。もはや罪だな』


罪ってなんだよ


『後で刀も打つなら練習にもなるだろ?』

練習は大事だぞ?


『まあ、知らんのだから仕方ないがな。まずは鉄や鋼で試そうって気は無いのか?せめて魔鉄に魔鉱石とかよ?』

『ヒヒイロカネはミスリルより珍しいんだぞ?』


そうなのか?

『んじゃ、この硬そうなアダマンタイト?オリハルコン?ってやつも珍しいのか?』


『『⋯⋯⋯』』じと⋯


『な、なんだよ』

めちゃくちゃ三白眼な目で睨まれてるんだが⋯


『兄貴、俺もうヤダ』

『ああ、弟よ。気持ちはよくわかる』

ウンウンって頷き会いながら泣くなよ。悪かったよ。そうか、珍しいんだな。


『珍しいなんて言葉で済むかああ!!』

『幻の幻の!幻の石なんだぞ!?そ、それを、それを⋯』

『兄貴いぃぃ』

『弟ぉぉぉ』

『俺たちは命懸けで手に入れたのによぉ』

『しかも、ほんのひと握りサイズだってのによぉ、それをそれを』

『『なんなんだよおぉぉっ』』


あ~そうか。それは、ほんとにすまん。

でもな?それ以上に気になるもんが


『なあ、このエンシェントドラゴンの鱗とか、逆鱗ってのも素材になるのか?』

石じゃないけど石扱いなのか?って言うか、素材として使えるのか?


『『は?』』

ん?なんか泣き止んでくれた?


『エンシェントドラゴンってもしかしてもしかしなくても、アルコン様のことだよな?もしかして、アルコン様歩く高級素材?あ?エンシェントドラゴンの角の欠片とか、牙の欠片なんてのもあるぞ?爪もか?』

なんで欠片?ん~?


『『⋯⋯⋯』』


『あっ、そうか。昔アルコン様、あそこで暴れたんだっけか?そん時にジーニ様たちに落とされたってことか?なあ?』


『『⋯⋯⋯』』


ん?いないのか?


『親方?どうした?』

親方たちを見ると、なんだよいるじゃねぇか。しかもさっきと同じ場所に。


『親方?なあ?』

なんだってんだ?近づいてみると


『『⋯⋯⋯』』


息、してない?


『お、おい!親方?二人とも起きろぉ!息しろ息!お~い!』

ゆさゆさゆさゆさ!


『『ハッ!ゲッホゲホゲホゲホ』』

お、おぉ。良かった。


『あ、兄貴、俺、川の向こうに死んだ親父とお袋が見えた気が⋯ゲホッ』

『お、お前もか?俺も見た⋯あんな顔してたんだっけな。はるか昔過ぎて忘れてたぜ⋯ゲホッ』

川の向こうに親?さ、三途の川?


『だ、大丈夫か?』

渡らずにすんで何よりだな


『『んぁあ?』』

ぎろりっ


『うぉっ?』

に、睨まれた


『『大丈夫なわけあるかあああああ!!』』

お、おぉ、大丈夫そうだな?


『お、お前!なんっちゅうもんを掘り起こしてやがんだ!』

『かかか、返してこい!今すぐ返してこい!』

おぉ、復活した。


『いや、勝手にインベントリに入ってただけだし?わざとじゃねぇぞ?それにアルコン様だって返されても困るんじゃ?』

欠片だし?大昔の物みたいだしな?アルコン様に使っていいか聞いてみるかな?


『そういう問題かあああ!』

『お、お前、絶対ハサミになんか使うなよ!?絶っっ対!使うなよ!?』


え~少し混ぜるくらい⋯


『『絶っっ対!!使うなよ!!!ぜぇぜぇぜぇぜぇ』』


そ、そんな全力で反対しなくても

『わ、分かったよ』

ハサミには使わないよ。ハサミには


『あ、兄貴、ダメだ。こいつは見張ってないと、絶対やらかす!』

『おう。その通りだな。絶対ヤバいやつだ!』


なんだよ。そんな危険物みたいに。


『十分、危険だ!』

『自覚しやがれ!』


ええぇ~


『うううぅ、兄貴。あいつ絶対分かってないぞ』

『うううぅ、そうだな。弟ぉ』

『『うっうっうっうっ』』


なんだよ。結局泣くのかよ。どうしろと?


ギィィ

ん?扉が開いたか?


『親方?なんだなんだ。騒がしいと思ったら帰ってたのかよ。しかもなんで泣いてんだ?いい歳こいたジジィが抱き合って泣いてるとか、気味悪ぃぞ?ん?客人か?人間?』


第一村人との遭遇、か。



⋯その頃のサーヤたちは?


「『じゃんけん、ぽんっ』」

「あっちむいちぇ、ほいっ!」

『ほいっ』


ぴゅいきゅい『『ハク、セーフ』』

『『サーヤ、がんばれ~』』


「あいっ」

『負けないよ~』


「『じゃんけん、ぽんっ』」

『あっちむいて~ほいっ』

「ふん、にゅっ」


ぴゅいきゅい『『サーヤ、ぎりぎり』』

『『『セーフっ』』』

みゃあ『ハクにぃに、がんばるにゃ』


『ありがとう~』

「ふぎゅ、まけにゃい」



〖くすくす〗

『ジーニ様ぁ、サーヤたちは何を真剣にやってるのぉ?』

〖ふふ。それがね、ハクを抱きしめてお昼寝するか、ハクがみんなを抱きしめてお昼寝するか、三本勝負なんですって〗

『ええ~?』



「『じゃんけん、ぽんっ』」

「あっちむいちぇ~ほいっ!」

『ほいっ、あっ』


ぴゅいきゅい『『サーヤ、かった~』』

みゃあ『まだにゃ!』


「ふうふう」

『む~』


『サーヤ、あんまりムキにならないのよ』

『ハクもだぞ』

フゥとクゥも苦笑い



〖くすくす。あらあら、鼻息荒くなっちゃって〗

『ええ~?それ、何が違うのぉ?結局ハクがお布団になるんじゃなぁい?』

〖それがね、本人たちは違うんですって。くすくす〗

『ふぅん?』



「はく、ぎゅ~ちちぇ、ねんね!」

『ぼくがみんなをくるんってするんだよ~』

「ふぎゅう~」

『む~』


「『じゃんけん、ぽんっ』」



〖くすくす。あ~かわいい♪〗

『平和ねぇ』

〖いいじゃない?平和で〗

『そうねぇ』



☆。.:*・゜☆。.:*・゜

お読み頂きありがとうございます。感想などとても嬉しいです。ありがとうございます。


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