第三話 エマージェンシー!?朝方姉妹、参戦す?



令和3年5月某日放課後



 その言葉を扉越しに聞いたあたしは、戦慄した。



side.yuzu.



 

 「これなら、思い出してくれるかな?『、、、、、、。ょ、陽平くんのことが、すき、、です。つ、、、つきあって、、くださいっ。』、、なんて、、ね?」


 「な、、、、っ!?ぉ、おまえ、、っ!?」


 お兄ちゃんが凄く動揺したのが手にとるようにあたしには分かった。


 ずっと。


 ずっと。


 物心が付く前、産まれ落ちた瞬間からの付き合いだもん。分からない筈がない。


 ずっと見つめ続けていたから。


 例え、あたしの抱く、この想い、この感情が、一般的なこの世間においては禁忌以外の何物でないとしても。


 それでも、好き、なんだから、仕方がないじゃない。


 この想いを否定したら、あたしはあたしじゃない。


 だからこそ、



 『宵上、、、、ゆう、、奈、、?』



 名前を、



 『ピンポーン♪だい、せい、かいっ!』



 姿を変えてまで、再び、『あたしの』お兄ちゃんの前に現れたっ、あの女っ!!



 倉橋、、、いいえ。宵上ゆう菜。



 「今でも、変わらず、貴方が好きです。わたしと、、、結婚を前提にお付き合いしてください。」




 ナニ戯言ほざいてんの?この女。頭おかしいんじゃない?



 お兄ちゃんをあんなに苦しめる原因を作ったくせにっ!



 アンタなんかに、お兄ちゃんは絶対に渡さないっ!!



 お兄ちゃんのお嫁さんには、柚子がなるんだから、、、。



         ◆



        第三話

 エマージェンシー!?朝方姉妹、参戦す?



         ◆




 遡る程、約2時間近く前。


 あたしは今日最後のLHRの場である教室にいた。これで、今日一日もお終い。帰ったら何しよう?今日はお父さんもお母さんも早番だから、もう帰宅している筈、なら、夕飯作るのはお母さんかな?


 でも、昼休みの件もあるし、早くお兄ちゃんの舌に残る味をあたしの料理で上書きしたいな。


 そんなことを考えていると、


 「柚子ぅーっ!今日こそ、カラオケ行くよっ!?カラオケっ!!」


 今もクラスメイトで中学から仲の良い、新庄茜が快活に笑いかけてきてた。


 いつの間にか、LHR終わってたんだ、、、。


 「ぁ、あはは、、、。また、やっちゃったなぁ。」


 「柚子、、、。」


 弱々しくポツリと呟いた言葉は茜の耳に届いてたみたい。


 「あー、カラオケ?またぁ?仕方ないなぁっ!この柚子ちゃん様が付き合ってやろうっ♪」


 誤魔化すように努めて明るく振る舞う。


 だって、茜は知ってるから。


 あたしが。


 朝方陽平を、お兄ちゃんを、家族としての親愛の情で思っているわけじゃないって。

 

 醜く歪んだ、許されない想いを抱いた浅ましい女だってことを。


 お兄ちゃんを1人の男の人として想い、いつかは心も身体も、ただ1人の女として結ばれることを心底願う。なんて、到底あり得ない、そんな欲求に身を浸し続けている。


 そんなあたしを知ってる。


 唯一無二の親友なんだから。


 「ん!じゃ、今日はうちら2人でオールで歌い明かそうぜぃっ!!」


 「いやいや、普通に明日も学校あるじゃんっ!」


 いまは、こんなノリは正直ありがたいかな。


 ありがとね、茜っ!



          ◆




 『〜♪立ち上がれっ!世界のーっ!ゆううつを〜っ♪〜〜〜ッッッ♪』


 あー!やっぱり、歌は好きーっ!


 昔から、歌を歌うと元気が出るっ♪


 歌っている時は、いじめられていた時も、ケンカした時も、嫌なことがあった時も、意味なんてなくイライラしちゃった時も、頭からそんなことを消す事ができた。


 歌に逃げているとも言えるかもしれない。


 でも、なにより、シンプルに、あたしは歌が大好きなんだっ!


 昔、お兄ちゃんが褒めてくれた、歌がっ!!


 お兄ちゃんにいつかあたしの心を伝えたい、大好きって、伝えたいっ!



 お兄ちゃんっっ!!!



 『信っ、じ〜てっ、We♪canっ、Flyッ♪』


 カラオケに着いてから30分くらい?ぶっ続けで好きな歌メドレーをして、たった今終わった。歌い終わった後の胸に残り続ける、この熱と、なんとも言えない余韻が堪らなく好き。


 誘ってくれた茜には悪いことしたなぁ、、、とは思うけど、いつもメドレーした時は、聴き手に専念してくれる。


 ありがとう、茜。


 「ひゅー♪ひゅー♪ゆ、ず♪ゆ、ず♪Fu〜♪」


 「、、、ふぅー。ありがと、茜♪」


 座って、アイスティを一口飲んで息を吐く。はぁー、充実感〜っ♪


 「はい、次、あか、、「おまたーっ♪茜ー、柚子ー!」、、、あっ、美咲」


 「おー♪美咲ぃ〜!いらっしゃーいっ!でも、ざーんねーん、yuzu.の単独メドレーはたった今終わりましたーっ」


 「えええぇーっ」


 息を切らせてやって来たのは、同じ高校の普通科に進学した中学時代からの友人、新山美咲だった。


 美咲は、茜からの言葉に心底残念そうに項垂れた。歌っていた張本人のあたしが言うのもなんだけど、そんなに残念がるものかねー?ただ気持ちよく、好き勝手に、歌っていたあたしにはわからないや。


 「独占しちゃってごめんね?はい、次、茜ね!」


 「えー?ゆずぅー、もうワンモア〜っ!?」


 あたしが茜にマイクを渡すと、美咲がアンコール要求してきた。


 「ちょっと、美咲ぃーっ?うちのソウルボイスがこれからシャウトするのに、それかぁ〜っ!?」


 「えー!?だって、茜の歌を聴くより遥かに柚子の神歌聴きたいしっ♪」


 「あんだとぉーっ!!」


 あー、あー、、、なんか、2人で戯れあい始めちゃったし。


 「ハイハイ!歌えばいいんでしょっ!?歌えばっ!いま、一番お気に入りの一曲だから、覚悟して聴くよーにっ!」


 アニソンだし、まだカラオケでは出てないから、アカペラになる。でも、いま、大好きな曲だからっ!


 すぅーっと、浅く息を吸って、吐く。


 よしっ!いくよっ!!



     『ストロボメモリー』




          ◆




 「「はぁー、余は満足じゃあ♪」」


 「茜も美咲も、こういう時のテンションリンクっぷりは相変わらずだよねぇ」


 あれから更に3人で心のままに歌って笑って、なんか、いま、とっても女子高生してるなぁ〜なんて、思っちゃったあたしって、なんか既におばさんくさいっ!?もしそうなら、軽くショックかも!?お、お兄ちゃんに、、、。


 『柚子、なんかお前最近おばちゃんぽいな?』


 とか、笑いながら言われたりしちゃったらっ!?


 「ん?柚子どしたん?」


 「いつもの病気でしょう?ブラコン病w」


 「いつものとか言うなぁーっ!ていうか、病気扱いぃっ!?」


 「過度なブラコン、シスコン、ファザコン、マザコンは立派な病気っしょっ!」


 「うぐっ!」


 的確に鋭利な一撃があたしの心を穿つっ!お、おのれ、美咲めぇっ!自分だって、ショ○コンな癖にっ!


 「あっはっはっw拗らせ同士お仲がよろしいようで〜?」


 「「ぐぬっ!?」」


 ギ、ギャルの見た目なのに常識人なんだよね、茜って。こう見えて、裕福な家庭のお嬢様だし。


 あたしの本質が分かっていて、親友だとも言ってくれる。逆の立場なら、あたしには同じことできるかな、、、?あはは、、、わかんないや。

 

 「それにしても、やっぱり、柚子は歌めっちゃ上手だよね!男性ボーカル曲とかもサラッと自分流にアレンジして歌えちゃうしっ!ただでさえ、その!ほぼ無化粧で完成されてる感という嫌味レベルなルックスに、150台の身長から溢れるダイナマイトおっぱいっ!可愛くて、トランジスタグラマーとか、どんだけ、需要掻っ攫っていくんかね!?この子はぁっ!」


 「そうだ!そうだ!!桃華先輩もクール系美人でデカメロンだしっ!どうなってんだ!朝方家の血はぁっ!?」


 な、なんか目が血走ってるんだけどっ!?


 「ちょ、ちょっとぉっ!?そ、そんなことあたしに言われたって!ご先祖さま探し出して文句言ってよぉっ!?」


 「「うるさぁぁぁっいぃーーっ!!問答無用っ!その乳もぎってくれるわぁーっ!!」」




 「お客様、もう少し、お静かにお願い致します」




 「「「あ、す、すみません」」」


 店員さんに怒られた。


 でも、なんか可笑しくって、3人で意味不明にお腹を抱えて笑い転げた。




          ◆




 「でもまあ、陽平くん込みでも、ほんと、異常レベルの高スペックな顔面偏差値だよ?朝方家って」


 「たしかに、たしかに!あー、今日も陽平くんかっこよかったなぁ♡」


 「美咲は幼い容姿の男子にしか興味ないんじゃなかった?」


 「まあ、性的な獲物としては、確かにそうなんだけど?やっぱり、イケメンって観てると目の保養になるじゃん?」


 ウチのお兄ちゃんはマイナスイオンあふれる緑豊かな大自然か何かなのかしら。


 「そいえば、柚子。今朝、何をぷりぷり怒ってたん?」


 まさにいま思い出した!と言わんばかりに絶妙なタイミングで今朝方の教室での一幕について追求が来てしまう。


 「あー、そ、そうだった?あ、もう、こんな時間っ!?あ、あたし帰る「ちょいまちっ!」、、ね」


 またしても、獲物を見つけた顔で舌舐めずりする美咲が、がっちり腕を掴んでいる。


 「あー、うちのクラスに倉橋って言う眼鏡女子が居るんだけどさー?その子さ、柚子の大事な大事なお兄ちゃんの隣の席なわけっ」


 「それだけぇ?」


 茜はわざとらしく、話のネタのピントをずらして説明した。それに美咲はつまんないネタぁ?とばかりの反応。でも、あたしをイジる本題はきっとここからだ。


 「そんなわけないっしょ!?その子と陽平くん、同じアニ研?所属で仲が結構よさげなんよ〜。ほら、陽平くんって、あたしら除けば、基本的に会話すらしないじゃん?でもー?」


 「はっはーん?その倉橋って子とは仲良さげなんだぁ?」


 うっ、、、2人してめちゃくちゃニヤニヤして見てくるしっ!


 「悪い!?だ、だって、お兄ちゃんが、彼女に美人なのに勿体ないっ。とか言ってたんだよっ!?あたしやお姉ちゃんには言ってくれたことないのにっ!?」


 とうとう、あたしの中の女の顔が嫉妬を剥き出しにしてしまった。


 「「ほっほぉーんっ」」


 ニヤニヤニヤニヤニヤニヤニヤニヤニヤニヤニヤニヤニヤニヤニヤニヤニヤニヤニヤニヤニヤニヤニヤニヤニヤニヤにやにやにゃ。


 「わ、わるいっ!?どうせ、重度なブラコンだもんっ!実のお兄ちゃん相手に本気で片想いしてる痛い子ですよっ!!!」


 堪らず吠えた言葉に場は静まりかえった。


 「あ、、、。ごめん、あたし、帰るね」


 「「スッキリした?」」


 「、、、え?」


 あたしの本音を知ってる茜なら別として、なんで美咲まで。


 「あの、実はかなり面倒くさい柚子とマブダチレベルまでレベル上げ済みなウチなら、気付けるし?」


 「うちは喋ってないよん!勝負下着に賭けてもいいしっ!!」


 「柚子は、普段から抱えすぎなんだよ。大、親、友、な、あーしらにくらい、ゆう、げろっちゃいなよ?w」


 「ま、そいうことよね。うちらくらいは荊棘しかない柚子の恋路を応援してるからさー」


 「「溜め込まずにうちらの前で位本音出して喚けばいいじゃん?ww」」






 「、、、ありがと」





 「そいえばさ?倉橋って子。下の名前って、もしかしなくても優奈とか言う?」


 なんか女の友情物語みたいな展開になって、すっかり涙ぐんだあたしに美咲は思い出したのか聞いて来た。アレ?なんかコレ、答えたらイケナイ気がする。


 女の勘が警鐘を鳴らしているのを自覚する。


 「そうそれ、そういう名前だったね」


 黙り込むあたしの代わりに茜が答えてしまう。


 「あー、やっぱりそっかあ。あーし、あの子と中学1年の時、同じ塾通っていたんだけどさぁ。当時は苗字違ったんだよねー」



 ドクンって心臓が痛いくらい強く弾むのが分かった。



 「へぇ。なんていう名前だったんー?」



 「えっとねーーーー、あ、そう、宵上ー




 バアァーンッ!!




 あたしは美咲が言い終わる前に、カラオケ代を机に叩きつけて、駆け出していた。



 「「柚子っ!?」」



 最悪ッッッ!!



 なんで、気づかなかったの、あんなに、あ、ん、な、にっ!



 お兄ちゃんを傷付ける原因を作った魔女の分際でええーーーーーーーッッッ!?



 また、あたしの、お兄ちゃんの前にのうのうと現れたカァーッ!



 無我夢中で学校へ目指して走った。


 張り裂けそうな程早鐘をうつ、胸の鼓動を無視して走り続ける。



 頭の中にあの時のお兄ちゃんの姿がフラッシュバックを繰り返す。



 また、お兄ちゃんを傷付けなんてさせないっ!


 お願いっ!間に合ってっ!?



          ◆



 あれから、幾度か転けそうになる身体へ無理矢理叱咤を入れて、10分間走り続けた。そして、あたしはアニ研の部室前にたどり着いた。身体の疲労がピークに達していて、軽い酸欠から目眩までしてる。でもっ!


 でも、間に合、、、。


 

 「これなら、思い出してくれるかな?『、、、、、、。ょ、陽平くんのことが、すき、、です。つ、、、つきあって、、くださいっ。』、、なんて、、ね?」


 「な、、、、っ!?ぉ、おまえ、、っ!?」



 間に合わなかった。



 お兄ちゃんが凄く動揺したのが手にとるようにあたしには分かった。



 『宵上、、、、ゆう、、奈、、?』



 お兄ちゃんがあたし達姉妹にとって、世界で1番忌々しい名前を口にする。たったそれだけなのに、あたしの中にどうしようもない嫉妬や憎悪の暗い感情が激しく蠢いた。



 『ピンポーン♪だい、せい、かいっ!』



 名前や姿を変えてまで、再び、『あたしの』お兄ちゃんの前に現れたっ、あの女っ!!



 倉橋、、、いいえ。宵上ゆう菜。



 「今でも、変わらず、貴方が好きです。わたしと、、、結婚を前提にお付き合いしてください。」




 ナニ戯言ほざいてんの?この女。頭おかしいんじゃない?



 お兄ちゃんをあんなに苦しめる原因を作ったくせにっ!



 アンタなんかに、お兄ちゃんは絶対に渡さないっ!!





 「ダメェぇ〜ーーーーーッッッ!!」




 ドアを壊してしまうかのような勢いで開け放ち叫んだ。


 「宵上優奈ぁーっ!!『あたしの』お兄ちゃんに近付くなあぁーーっ!!!!」




 自分に酔いしれている在り様をしたあの女は、完全にイレギュラーだったであろうあたしの登場に凍りついていた。これは好機だっ!


 「お兄ちゃん!?帰るよっ!」


 「ちょっ!おい?柚子っ!?」


 強引にお兄ちゃんの手を取ると力任せに部室の外に連れ出した。力では全く敵わないことなんて普段なら分かるのに、その時はそんな冷静な判断できなくて。


 でも、あたしの知るお兄ちゃんなら、取り乱しているあたしを優先して抗ったりしない。そんな確信が無意識のうちにあったのかもしれない。結果として、お兄ちゃんは何か言いたげな様子を押し殺してあたしに手を引かれるままに、誰も人の居ない裏側の校門を抜けた。


 「、、アッ!?」


 遂にあたしのカラダが先に悲鳴をあげたのか、急に足から力が抜けて転びそうになる。


 「ッ!?あぶねっ!」


 「、、、ぁ」


 寸前でお兄ちゃんが抱きしめて助けてくれた。嬉しい。でも、、、。


 「、、、お兄ちゃんのぇっち」


 お兄ちゃんも慌てて助けてくれたのは、わかるんだよ?でも、、、ね?


 「お兄ちゃん、あたしのおっぱい、鷲掴みしてるね?ラッキースケベぇ、、っ」


 「ッ!ほわいっ!?」


 「ふふふっ、柔らかい?服越しでも、世界中で、初めて、最初にあたしのおっぱいさわったんだよ?」


 「か、からかうなっ!?」


 慌ててるお兄ちゃん、可愛い♡


 「助けてくれたのに、からかってごめんなさい、、、」


 「柚子、、。いや、気にしてないさ、いつもの「でも、つぎ触る時はもう少し優しくしてね?仕方なかったけど、ちょっと痛かったんだからね?」、、なっ!?」


 未だ、抱きしめられているあたしの体に感じる、お兄ちゃんの温かさに、はにかみながらも戯けてみせた。


 「〜〜〜〜〜〜〜ッ」


 お兄ちゃん、顔が真っ赤だよ?


 これはココロの中でそっとつぶやいた。


 それから、あたしはお兄ちゃんにおんぶをおねだりして、そのまま家までおぶってもらって帰宅した。途中で生徒会活動帰りのお姉ちゃんと合流した時のお姉ちゃんの様子はおかしかった。


 だって、すっごく羨ましそうにあたしを指差しながら、金魚みたいにお口をパクパクしてるんだもん。


 あのお姉ちゃんは傑作だったなぁ。


 あとでめちゃくちゃ怒られたけど。



          ◆



 夕飯のあとにあたしの部屋でお姉ちゃんに宵山優奈の事を報告したら、すごく険しい顔に変わった。


 「あの女、懲りずに陽平に近づいて来たのね。あれだけのことやらかしておいて、かなり図々しいわね」


 Gさまに代表される害虫を見つけたかのように、あの女を忌々しい存在に断定するお姉ちゃんは明らかに冷たい怒りを全身に漲らせている。


 「クラスには柚子がいるから、これからはまだ幾らでも対処可能だけど、放課後の部活動時間が厄介ねっ」


 「お姉ちゃん、その件だけど。あたしとお姉ちゃんもアニ研に加入するとかはどうかな?」


 「あなたは、陽平と趣味が共通してる部分があるから良いかもしれないけど、私はど素人よっ!?それに、私は生徒会活動にモデル業もあるから、、、」


 「でもでも、お姉ちゃん、生徒会役員だし、その権限を使って部活動に貢献できるんじゃない?それに何よりっ!」


 あたしはズビシッとお姉ちゃんに指差して、


 「柚子〜?人を指さすんじゃ、ありませんっ!」


 怒られた(T ^ T)


 「そうじゃなくって!お姉ちゃん、校内一の美人だしっ!それだけでアニ研の人達喜ぶと思うよ?プロモデルらしくコスプレモデルとかしてあげるとか?お兄ちゃんも鼻血出して喜ぶんじゃないっ!?」


 「よ、ようちゃんが、私に悩殺ッッッ!?∑(゚Д゚)」


 ふっふっふっふっ!お姉ちゃんは、お兄ちゃんにウケが良いことを伝えれば必ずやる気になっちゃうんだよねーっ!


 ちょっぴり、利用してるみたいで罪悪感があるけど、これは、あたしと同じで、『女の子として』お兄ちゃんが好きなお姉ちゃんのためでもあるからっ。


 「うん、絶対にっ」


 「ええっ!絶対にっ!」


 あたし達は力強く頷き合った。


 「「絶ーーーーったいに、あの女には渡さないっ!!!」」


 こうして、あたしとお姉ちゃんのお兄ちゃん護る会が無事結成されたのだった。




 見てなさいっ!明日からは、ずっとあたし達姉妹のターンなんだからっ!!





          ◆





side.xxxxxx.


 「お母さぁーん、お兄ちゃん知らない〜?」


 夕飯の後片付けをのんびりしていたアタシに愛娘の一人、柚子が問いかけて来た。一緒に長女の桃華もいる。二人とも入浴の準備をしていたから、お風呂に入るつもりかしら?


 でも、確か。


 「陽平くんなら、つい今さっき、お風呂に入ったばかりよ?」


 アタシがそう告げると、柚子は悪戯を思いついたかのように、桃華は落ち着かない様子で恥ずかしそうに、だけど二人ともある決意を秘めた眼をしていたのが分かった。


 かつてのアタシと同じ感情を宿した二人の娘たち。


 そんな二人に、親としては失格なのかもしれないけど、


 「あなたたち?あんまり陽平くんをいじりすぎちゃダメよ?さあ、上がる前に入って来ちゃいなさいっ」




 「「うんっ♡」」




 勇ましく、二人の乙女は恋する人がいる戦場に赴いていく。


 「花さん?二人を焚き付けすぎじゃないのかい?」


 居なくなった二人と入れ替わりに来たのは、三人の子供達の実父にして、今のアタシの世界で唯一愛する旦那様。


 「母親、失格かしら?」


 「キミが母親失格なら、僕も父親失格だろうねぇ」


 アタシ達夫婦は微笑み合う。三人にこれから待つ未来は、あの子達にはきっと優しくない。


 でも、、、。


 「あの子達なら、アタシとは違う未来を見せてくれるかもしれないから」


 「そうだね」





 「うわああああああーーッ!?ゆずぅ!?ねえちゃんっ!?な、なにしてんダァー!?」




 慌てふためく愛息の叫び声が響いてきて、アタシ達は笑い合った。



次回に続く。



あとがき


※ 11/15.16:20 桃華、柚子に属性?追記しました。



というわけで予告通り、朝方姉妹の個人情報解禁っ!


朝方桃華

物語のメインヒロインの1人。

根が真面目ゆえのパッと見で分かる対人関係苦労人タイプ。その気質故かドM内蔵。攻められたい、責められたい、躾けられたい完備。属性はまだヒ、ミ、ツ。

陽平の一つ年上の実姉。高校二年生。中学三年の春から芸能事務所にスカウトされてプロモデルとして活動してる高校内外問わずの有名人。

朝方美人姉妹の背が高い方。

身長170センチ。長身らしくスラリとした抜群のスタイルを誇りながらもグラビアアイドル顔負けの極大おっぱい(G)持ちの方。

スリーサイズ、B86.W59.H87.

普段はクールな知的美人で機転が利くが、陽平と柚子のことになるとポンコツ化することも。勉学優秀、運動神経抜群、並レベルで料理できる。

歌などの芸術関係の才能は皆無。特に歌が悲惨。



朝方柚子

物語のもう1人のメインヒロイン。

好きな相手には染め上げられたい願望を持つM気質からの、好きでもない異性には激しく駆逐したいドS気質を併せ持つ稀代の可変気質持ちヤンデレちゃん。

兄陽平の年子の妹。高校一年生。姉の桃華とは普通に仲が良い。姉と一部を除き正反対の身体特徴。

身長153センチ幼なボディに姉と同じGカップを搭載する闘いの中で常に成長する最終兵器。

スリーサイズ B90.W65.H89.

歌が好きで最低週1で必ず陽平を引き連れてカラオケに行く。気に入ればアニソンだろうと隔てなく好んで歌うし、音域の幅が広く、男性ボーカル曲もサラリと自分流にアレンジできる。最近は、SSSS.ダイナゼノンED曲ストロボメモリーが好き。勉学、運動ともに優秀、姉桃華より遥かに料理上手。

中学時代は3年間陸上部所属、走り高跳び選手。

現在は帰宅部。後にアニ研に入部し、優奈を威嚇する日々。




次回は、再び陽平視点に戻ります。さて、どこからスタートするでしょう?

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