怨霊の住む館・フラグメント

仲仁へび(旧:離久)

第1章

01 裏切り



 洋館の中、迷い込んだその建物の中で、化け物が追いかけてくる。


 背後から追ってくるそいつから、逃げないと。


 私は友達と一緒に無我夢中で逃げた。


 けれど、だめだ。


「いやだ! 死にたくない!」


 けれど、どうしても追いつかれてしまう。


 私は、とても足が遅いから!


 生きたい。


 死にたくない!


 その衝動が強くなった。


 だから私は、友人の彼女をつきとばした。


 自分が生きるために、人を犠牲にすればいいんだ。


 そう思ったから。


「きゃっ」


 彼女は転んでしまったようだ。


 尻もちをついて、呆然としている。


 そして、私の方を見て「どうして」と呟く。


 私は乾いた笑い声をあげてその場から去っていった。


 自分さえ、生きられたらそれでいい。


 この時は、その思いでいっぱいだった。


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