第19話 決着

「…な、何者なんだ…。

 くそ…っ!

 こうなったら…!」


魔王の着ている服がボコボコと動き始めた。


いや、服の下の体が不自然にうごめいているのだ。


「な、なんだ?」



「う、うぐぉぉうおおぉおお!!!」



人の姿だった魔王が、3mはあるモンスターへと姿を変えた。



「は、はははっ!!

 驚いたか!!

 前の魔王の体を取り込むことで俺は正真正銘の魔王になったのだ!!

 そのせいで城や街には入れなくなったがな…!

 この力を解き放てば、強さはさっきまでとは別物だぞ!」


「あ〜、それで勇者を奴隷にしたのか…。」


「兄貴、あれはもう人間じゃないっす。

 やっちゃいましょう。」


「そうだな。」


「くたばれ〜!!!」


「お前がな。」



蒼真は拾っておいた小石を中指で弾いた。



『中指フェイルノート』だ。


この距離で魔力を込めると、自分たちまで巻き添えをくう。



…ッパー……ン!



「…結局、最後まで一撃でしたね…。」





…その後。



四天王の城を町の人たちに渡し、さらに四天王たちに召喚の城の復旧もしてもらった。


この世界のルールとして魔王はどうしても復活してしまうらしいので、元の状態に戻るように四天王が協力してくれた。


ただ、また極悪人の勇者が召喚されてしまった場合は、四天王ではどうしようもないということだった。


そこは蒼真や光が神様と話をしてみるということで話がついた。


蒼真と光が神様のところへ再び転移されるまでは数日あったが、その間に蒼真は綺麗なお姉さんたちから搾り取られ続けた。


光はハーレムを期待していたが、残念ながら全て蒼真に持っていかれてしまった。


まあ、ほぼ通訳しかしなかったからね。




そして、2人は女神のところへ転移された。



「お2人とも、おかえりなさい。

 あのクソジジイが元凶でおかしくなっていた世界が、元通りになりました。

 本当に、本当にありがとうございます!」


「もうちょっと最初に説明して欲しかったですけどね。

 ところで、あのクソジジイがまた余計なことをする可能性はありますか?

 向こうの世界の人が心配してたんですけど…。」


「力を抑えてるので大丈夫だとは思うんですけど、蒼真さんの件がありますからね…。」


「消滅させたりはできないんですか?」


「神同士で直接戦ったりすることはできないんです…。」


「神同士じゃなければいけるんっすか?」


「ま、まあ…。

 でも、神の力は大きいので、神以外では相手にならないのです…。」


「兄貴ならどうっすかね?!」


「無理だと思います。

 蒼真さんは確かにあの世界の限界値の倍ほどのステータスを得ることができましたが、あの邪神崩れは限界値の30倍以上の強さを持っていますから…。」


「上限値の30倍って…、30000くらいってことっすか?」


「そうですね…。」


「兄貴、確か今の兄貴の中指って、50000超えてますよね?」


「うん。

 魔王城でレベルカンストしたからな。」


「え?」


「あいつには恨みもあるし、始末できるならしときたい。」


「え?

 本当に?

 ちょっと失礼して…。


 ご、51500!?」


「あのジジイのところに飛ばしてもらうことはできます?」


「51500…。

 あ!

 は、はい。

 2人は厳しいですが…。」


「じゃあ、俺1人でいいよ。

 光は先に日本に戻してもらえよ。」


「いいんすか?」


「ああ。

 俺もあいつを消したら戻してもらえるんすよね?」


「は、はい。」


「じゃあ、光。

 元気でな。」


「兄貴も。

 気をつけてくださいね?

 最後の最後で死なないでくださいよ?」


「ああ、気をつける。」


「兄貴、ありがとうございました。」


「こちらこそ。」


「それでは、光さんを先に地球に戻します。

 光さん、ありがとうございました。」


「…お二人とも、さよならっす…。」



光は淡く光って、そして消えた。



「では、蒼真さん、よろしいですか?」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る