第20話 おはよう
…木漏れ日の匂いとハチミツの匂いがする。
私はひとりを持て余してた時に遊びに来てくれた凛先生と一緒にうたた寝をしてしまったらしく、眩しくて目を覚ますと朝日をいっぱい浴びている部屋の窓際に煙をたくさん纏っている結心さんが真っ白な浴衣のようなものを着て外を眺めていた。
そんな結心さんに私は声をかけようと体を起こすとピンク色の影が見え、自分の腕の中にいた木漏れ日の匂いがするととくんに今気づいた。
愛「…ととくん、おはよ。いい匂いするね。」
とと「愛、おはよ。よく寝れた?」
結心「あ、起きたか。」
と、私の声に2人とも反応してくれていつもの朝が来てくれたことに少し嬉しくなり、私は2人に力強くうなずく。
とと「久しぶりにちゃんと寝れたみたいでよかった。」
結心「朝飯、食べにいくか。」
愛「うんっ。でも、服が…」
結心「コートも制服もちゃんと乾かしてあるから。」
そう言って結心さんはいつのまにか壁にかけられている私の制服を指し、立ち上がって背伸びをする。
結心「着替えたら出発な。玄関で待ってる。」
愛「はい。分かりました。」
私は結心さんを見送ってからしっかり乾燥されてシワ1つなくなった自分の制服に身を通して、忘れ物がないか確認する。
とと「今日は良い天気だからずっと日向ぼっこしてたいね。」
愛「そうだね!朝ごはん食べたら学校の屋上行こっか。」
忘れ物は特にないし、カバンの中身もそのままだったので私はしっかりととくんを抱き、スクールバッグを持って廊下を歩いていると昨日お世話になったツバキのお姉さんと出くわした。
「もうお帰りですか?」
愛「はい。昨日はありがとうございます。」
私がお礼を伝えていたものの数秒でお姉さんはタタッと私の目の前に駆け寄り、私の頬を撫でた。
「昨日よりとても血色が良くなってます。これもハーベン様の息吹のおかげですね!」
愛「…は、はい。そうですね。」
私はお姉さんが説明した通り、鼻から体内に取り入れていなかったので少し言葉に戸惑ってしまう。
「今度はホームパーティーでお会いできることを楽しみにしています。では、お出口までご案内しますね。こちらのお屋敷は本家の次に広いお屋敷なので。」
そう言ってお姉さんは私の2歩前を歩き、玄関まで先導してくれる。
その時に数人のお姉さんお兄さんを見かけたけれど、みんな穏やかに微笑んでいて話し方も物腰柔らかく聞いていて心休まるような人たちで、こういう人がクラスメイトや家族だったらいいのにとふと思ってしまった。
「こちらがお出口です。履き物はこちらですよね。」
そう言ってお姉さんは私のローファーを出し、足元のすぐそばに置いてくれた。
愛「ありがとうございます。あのー…、結心さんってもう外にいるんですか?」
「レン…さん?ここの家族のシキヤマ レンのことですか?」
愛「え?いや…、葉せ…」
「この子が神の連れ子かな。」
と、とても落ち着きのある低音の声が私の耳奥を撫でた。
「あ!旦那様、おはようございます。こちらの方々がそうです。」
お姉さんは憧れの眼差しで私の背後にいる人に声をかけて私とととくんを紹介した。
私はまた結心さんを神様と呼ぶ存在に少し身構えながら振り向いてみると、その人の背後にある襖よりも飛び抜けた身長と左目に地球儀が入ってるんじゃないかと思う綺麗な青緑色の目にクギ付けになる。
「私は
と、結心さんと同じ苗字を言った男の人は私に一歩近づいて、手で私を指した。
愛「信実 愛です。それで、こっちが…」
「愛。」
私はまた背後から声をかけられて振り向くと、玄関のドアの隙間から結心さんが私たちに手招きしていた。
愛「あ!お待たせしました!」
結心「早くこっち来い。行くぞ。」
愛「はーい。お世話になりました!」
私は玄関先に佇む2人に一礼して、結心さんがいる外に出ると結心さんはそのまま素早く鍵をかけた。
結心「自転車ないからこっから駅まで走るぞ。」
愛「うわぁ…、結構山奥なのに…。」
とと「頑張れ、愛。」
結心「駅ついたらアイス買うからとりあえず走れ。」
そう言って私の手を握って走り続ける結心さんに私はしっかりととくんを抱きしめながらついていった。
環流 虹向/桃色幼馴染と煙気王子様
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