第6話 After Time

「おー。ありがと、ありがと。」


ボブ男はへらへらとお礼を言いながら自分たちの荷物を持ってきてくれた男たちに笑顔を見せた。


けれど、その男たちは愛想笑いでその場を濁しスタコラすぐに帰っていった。


友達ではなさそうな様子だし、学校では愛とは逆に周りをざわめき立ててしまうこの男は一体何者なんだろうと思っていると、ボブ男は座っていたソファー席に荷物を置き、またナゲットを食べ始めた。


愛も久しぶりにファストフード店に来れた上、ボブ男に奢ってもらえたLサイズのポテトとミニパンケーキを食べれて幸せそうにしている。


授業をサボって遊ぶのはあんまりいいとは思えないけど、愛の幸せそうな笑顔が久しぶりに見れたからこれはこれでよかったなと思っていると愛とコーラを半分こして飲んでいたボブ男が俺の目の前にナゲットを出した。


結心「…食う?」


俺はまだ信用出来ない男に口を開くつもりがないので無視を決め込んでいると、愛がボブ男からナゲットを奪いそのままボブ男の口に放り込んだ。


愛「偏食って言ったじゃないですか。しかも人前で食べるのあんまり好きじゃないのでここでは食べないと思います。」


結心「へー…。じゃあらぶ子は食べ物何が好きなの?」


愛「私は甘いもの好きです。」


結心「具体的に。」


愛「それはその日の気分でNo. 1が決まるので決めきれないです。」


結心「…今日は、パンケーキ?」


と、ボブ男は愛のひたひたハチミツパンケーキをつまみ、愛の口元へ持っていった。


すると愛は何も臆せず、ボブ男の関節1個分まで口に入れてしっかりとハチミツも舐めとり甘味の美味しさに目をとろけさせる。


愛「今日イチ美味しいですっ。」


結心「そっか。No. 1ゲットー。」


と、ボブ男は俺に自慢するように目を合わせて煽ってきた。


俺はそんな奴を無視して愛に早く帰ろうと提案するけど、愛はまだポテトを楽しみたいらしく余ったハチミツをつけてのんびり食べる。


けど、俺は愛の耳を痛める『門限』を口にしてボブ男を引き離すことに成功した。


結心「んじゃ、また明日。」


愛「はーい!送ってくれてありがとうございまーす!」


と、愛はボブ男が見えなくなるまで手を振り、家に入るといつも通り自分の部屋に直行した。


けど、今日はすぐに風呂へ向かわず、ベッド上に座っている俺の前でほっぺたを膨らませた。


愛「結心さん、いい人だよ?」


とと「いい奴が人使って荷物持って来させるの?」


愛「え?それはあの人たちがお店に来る予定だったからって結心さん言ってたじゃん。」


とと「嘘だよ。」


愛「違うよ。」


とと「違うのにあの人たちはお店で何も買っていかないで帰ったの?」


愛「…ちがうよ。」


とと「愛、ちゃんとこっち見て。」


俺はだんだんと俯く愛の顔を上げようと声をかけると、少し遠くの茶の間から愛のお母さんが夜ご飯が出来たと大声で伝えてきた。


愛「…今日は別々でご飯ね。私は先にお風呂入るから。」


そう言って愛は顔を俯かせたまま、寝間着を取って足早に出て行ってしまった。


俺は茶の間に行く気が起きなくて座っていたベッドに寝転がり、ずっと飾られている星空のような間接照明を眺めて時間を過ごしていると石鹸とミントの匂いがする愛が帰ってきて俺に抱きつきベッドに寝転がった。


愛「結心さんはいい人かまだ分からないけど、お友達にはなれるかなって思ったの。だからととくんも毛嫌いしないで結心さん知っていこうよ。」


とと「…愛がそう言うならそうするけど、好きにはならないと思う。」


愛「いいよ。好きなのは愛だけ、でしょ?」


と、愛は俺の前だけで言う口癖を言って少し眠そうな顔で笑顔を見せてくれた。


とと「うん。好きなのは愛だけだよ。」


俺がそう言うと愛は仲直りの鼻キスをして眠りについた。


俺もその寝息を子守唄にしながら寝付き、明日から愛のお友達作りに協力することにした。



環流 虹向/桃色幼馴染と煙気王子様

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る