第4話 Learn Time
「大丈夫だよ。ご飯食べるだけだもん。」
俺の心配をよそに愛は大丈夫の一点張り。
愛がそう言うなら俺はこれ以上口出しはしないけど、未成年のくせに繁華街の路地で隠れるように煙草を吸っていたロン毛ボブ男を俺は信用出来ない。
そんな気持ちを愛は長年の勘で分かってしまうから、久しぶりに喧嘩をしているとあのボブ男が教室の扉から顔をぴょこっと出して愛に手を振ると教室がざわめき立つ。
結心「ぼっちちゃん!サンルームの席取っておいたからそっちで食うぞー。」
愛「はーいっ。」
けれどクラスのざわめき声は愛の耳に届いていないらしく、いつも通り俺を抱きしめながらボブ男に駆け寄った。
愛「ぼっちじゃなくて、愛ですよ。」
結心「はいはい。そんなことより、とと丸は元気?」
と、ボブ男は嫌がる俺の頬をまた突きながらサンルームがある階へ向かう。
愛「機嫌悪いです。今日は学校休めって言われました。」
結心「それって俺のせい?」
愛「…たぶん。い、いや、ちょっと私のお腹の調子が…」
結心「いいよ、別に気にしないし。」
そう言って愛の気遣いを無下にしたボブ男は賑わっているサンルームに着くと、1番日当たりが良いのに肩を震わせている1人の男に近づいた。
結心「ありがとー。じゃあばいばいっ。」
と、ボブ男はやらしい笑顔をして、冷や汗をかき顔を強張らせながら会釈をした男をどこかへ行かせると足りない椅子2つをそばにあったテーブル席から奪って俺たちの目の前に置いた。
愛「…あの人、売店間に合うかな。」
結心「え?間に合わなくても死にはしないんだからいいだろ。」
愛「でも、お腹空いてるのきついです…。」
結心「じゃあ早く食お。あいつのために。」
そう言って愛から俺を奪ったボブ男は俺を席に座らせてから愛の肩を押し、席に着かせた。
結心「らぶ子の今日の昼飯は?」
愛「えーっと、今日は寝坊したので日の丸弁当です。」
愛は昨日ランチ代を貰うのを忘れたらしく、残り物を弁当にぶち込んだと言っていたけど米と梅しかなかったらしい。
結心「…とと丸は?」
愛「ととくんはあんまり食べないんです。気が向いたら食べるって感じです。」
結心「気が向いた時って何食べるの?」
愛「んー…?何食べてるっけ?」
と、記憶力が弱い愛は首を傾げて俺に聞いてきた。
とと「…ワタ。」
愛「ああ!そうそう、ワタ食べてたー。」
結心「…モツ煮とかそういうこと?」
愛「そうです!ととくん偏食だから学校の売店では今までご飯買ったことないんですよ。」
結心「あー…、そんな気するわ。」
ボブ男は俺の事を見ながらコンビニ袋から出した冷えた牛丼をテーブルに置いたまま口を近づけて、愛がした事ない食べ方で食べ始めた。
愛「結心さんっ!犬食いは良くないですよ。スプーンも持ち方どうなってるんですか?」
愛はいつも通りのスプーンの持ち方をボブ男に教えて姿勢を正すように胸を持ち上げた。
結心「…こう食わないとこぼす。」
愛「こぼすなら容器を口の下に持っていけばいいんです。」
ボブ男は不服そうな顔に米粒を大胆につけながら愛が言った通りの食べ方で食べづらそうに食を進める。
俺はそんな2人を見ながらいつもとは違うランチタイムを過ごした。
環流 虹向/桃色幼馴染と煙気王子様
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます