くるくる

@pochi1n

第1話上編

AM2:05私は見てしまった。

もう、この部屋に住みだして、三か月以上経つ。

今まで全く気づかなかった…

回っている。くるくると…

え?何がって??

足が。天井付近で。

足と言うより、下半身?腰から下が回ってんの。

くるくると。バレエのダンサーの様に。

まぁ、美脚も美脚よ。羨ましいくらいだわ。

ちょっと筋肉がついているけど、まぁ、綺麗。

スラッとして、制服?なのかな?ギンガムチェックの膝丈よりやや上目のスカートが栄える栄える。

その辺のアイドルなんかより余程「シコい」ビジュアルだったんだわ。

可愛い女の子が大好物の私は思わず

「綺麗…」

と呟いてしまった。

高卒で地元で一番大きな運送会社に就職をした。

経理事務だ。

就職を機に、実家から出て一人暮らしを始めたんだ。

地元とは言っても、私の実家は少し外れの山奥にあったから、自分の欲望のままに生活できそうな市街地での一人暮らしに親の反対をゴリ押しで押し切って家賃48000円の自分の城を手に入れた。

アレもしたいコレもしたいと云う様々な欲望は理想と現実の残酷なギャップによって無惨にも霧散してしまったけれども…

忙殺…まさにその言葉しか当てはまらないであろう毎日…

入社して二週間程したら先輩が飛んだ。少しだけ窶れていたけど色白でスラッとして、笑顔の優しい綺麗な先輩だった。

「春香ちゃん、大変だと思うけど頑張ってね。辛い事とかあったら相談してね?」

そんな不慣れで毎日テンパっていた私に優しい言葉をかけてくれた翌日に、たった一人の私の部署の先輩は会社に来なくなってしまった…

緑川春香18歳…社会人一年生の私はそこから爽やかな名前とは裏腹の凄惨な毎日を送る事になってしまったのだ。

社長の息子の上司はまさに置き物…何もしねえならもう会社に来ないでくれないか?

入社一月後には朝、顔を見る度に笑顔の裏でそんな事を思ってしまうくらいに荒んでしまった。

伝票をその日に持ってこないおじさんドライバー達、しれっとタバコなどの嗜好品の領収書を出してくるおじさんドライバー達…

本日の下着の色を聞いてくるおじさんドライバー達…

…バ◯ス!…

もう、滅びの呪文が止まらない。

入社後、二ヶ月で私は100回は世界を滅ぼしているだろう。

良かったな…おじさん共…私がラピュタの支配者じゃなくて。

入社して三ヶ月も経つと1日5回は世界を滅ぼすとんでもないdelete monsterが完成していた。

まぁ、妄想でだけれども。

新人研修有り?嘘じゃん!GW休暇有り?はぁ???なにそれ?オイシイノ?有給休暇有り?そんな文字は知ってます!そんなの取ってる社員を見た事ありませんが?

全部嘘ぢゃん!このご時世にセクハラ発言も横行する様な絵に描いたBLACK!

高校新卒だった頃の純朴な私の中身をノシをつけて返して頂きたい。

毎日の早朝出勤、日付を跨ぐんじゃないか?という残業…週末なんて終末でしかない仕事の量!量‼︎量‼︎!

もう、日曜は一日中泥の様に眠る日々…

そんな、地獄の死の行軍を乗り越えて辿り着いたお盆の連休。

なかなか、寝付けない私はふと天井を見上げたんだ。

AM2:05回ってる…くるくると…

「綺麗…」

ポロッと出た一言…

回転が止まる。

ヤベェ!聞こえたか?なんかされるのか?!

少し恐怖でドキドキしてしまったが、どうやら様子が違うようだ。

その足?下半身?は天井付近で少し照れたようにクネクネしていた。

「何それw可愛いw」

しかし、私は見てしまったのだ。

その可愛いギンガムチェックのスカートの中の男物の下着を…

女子にはない股間の確かな膨らみを…

スラリと伸びた綺麗な足。

ギンガムチェックの可愛いスカート。

「あゝ、だからちょっとゴツいんだ…」

妙な納得感。恐怖心はもうない。

よし!今日はもう寝よう!




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