237日目 仲介役(後編)

 因みに竹中氏の機嫌が悪いのは、彼が極度の虫嫌いだかららしい。にも拘わらずあんなでっかい蜂幻獣と写真を撮っていたのは――――――。


『あんたが【蠱惑】なんてスキル寄越すからー!』


 ――――――だそうである。

 彼はこの件について思い出すことも嫌らしく、それ以上のことは語らなかった。よく分かんないけど逆恨みもいいところだ。


 よって渋々といった体ではあるものの、竹中氏は私の聞きたいことについては親切に教えてくれた。しかしストービーちゃんを仲間にするというのは、私が思っていたよりもかなり難しいことらしい。


『まず蠱惑は必須ですし、その蠱惑も実用することによってスキルレベルを上げていかなきゃならないんですよ。それも最高レベルのⅤまで。長丁場を強いられることは覚悟しといたほうがいいですね』


 うえ~、そんなに大変なのか~。

 ジョブスキルを取ることや蠱惑取得を目的として集荷衣装を作る、くらいの労力は払ってもいいかなって思っていた。けどたかが一個のイベントのためにそこまで時間かけるのはちょっとなあ。

 しかも頑張ってストービーを仲間にできたからといって、クイーンビーに会えるとは限らないわけだし。これで意味ありませんでした~ってなったんじゃあ、馬鹿らし過ぎるよね。


「さすがにストービーちゃん一匹のためにそんなに時間かけるのはきついですね~……」

『でしょ!? ですよね! 普通の人ですらこうなんですから、俺があの時どれだけ大変だったか……!!』


 うーん、今日の竹氏はなんだか情緒不安定である。いや、前からこれが平常運転だっけ?


『ところで、別に言いたくないことなら構わないんですけど、ブティックさんはなぜストービーをご所望で? まさかあなたもあのお腹に顔を埋めたいとかいう酔狂な人で?』

「わっ、それいいですね~。もふもふで癒されそう」

『………………』


 あ、竹氏が割とガチで引いてる。ストービーちゃん足とかは確かに節足動物ぽさあるけど、全体はほんとにケモケモしくて可愛いのにね。

 別に私普通な感性してる自信あるけど、竹氏に引かれるという状況には一般人代表として納得がいかない。さっさと話題を戻しておこう。


 私はかくかくしかじか、モグマキングのイベントについて説明することに。話を聞き終えた彼は、なぜか訳知り声で一言。


『なるほど。また変なことやってるんですね』


 ……なんか、ほんとなんかな~。今もこうやって唐突な連絡に対応してくれてるし、質問には丁寧に答えてくれるし、ほんと、基本いい人だってのは分かるんだよ。

 けど、なんかな。なんかこの人いちいちうるさいんだよな。

 と、渋面を作る私だったが、竹氏は次の発言により私の表情をあっさり緩めた。


『じゃあブティックさんに協力してくれるよう、ストービーの飼い主に頼んでみましょうか?』

「えっ」

『ご想像の通りあのストービーは俺のペットというわけではなく、別に飼い主がいるんですわ。イベントに一回きり必要ってくらいなら、その飼い主諸共パーティ組んじゃえばどうにかなるんじゃないですかね。きまくら。のイベント条件って結構それで通るやつ多いですし』

「それはありがたいんですけど、いいんでしょうか? あ、因みにストービーがいるからって確定で成功するわけじゃないですよ。そこは私の勝手な推測に過ぎないんで、協力してもらったところで何にも起きずに終わっちゃうことだって全然あり得ます」

『平気だと思いますよー。あの人ブティックさんのファンなんで、喜んで付いて来ると思います。まあ普通に都合がつかないとかはあるかもですが、聞いてみるだけならタダですし。もしオッケーなら当日俺も付き合いますよ』

「おお……じゃあ駄目元で聞いてもらえますか? 正直助かります、ありがとうございます。今度またリル様とのデートがあったら、私衣装作りますよ~」

『マジすか!? ってかじゃあ、俺用でなく、例の飼い主用にいつか仕立ててもらえません? 気が向いたらの話でいいんで。そしたら俺の株も上がる!』

「いいですよ。あ、そっか、その方うちのお得意さんなんですもんね。任せてください」

『っしゃあ! うぇっへっへ、これでマトさんには女子部員の勧誘をもっと積極的にだな……』


 竹氏の邪悪な笑い声は気になったものの、こうして私は仲介役、の仲介を頼むことに成功したのだった。




******




【きまくらゆーとぴあ。トークルーム(公式)・総合】



[Peet]

カッパ作ってみた動画が出てる

耐水、耐風が両方確定でつくかんじ


[ロッタ]

私も色々試してみたけど、染色効果で作る属性クロスと違って属性付与は付かない仕様みたいね

風水対策両方必要な場面もそうそうないし、今のところ出番はないかも


[弐]

モグマ「空は広いのか?」俺氏「yes」

モグマ「海は深いのか?」俺氏「yes」

モグマ「森は楽しいのか?」俺氏「no」

…何が悪かったんや?


[深瀬沙耶]

答え出てるでしょ


[ぺぺろん]

森は楽しいだろ(圧)


[紫苑]

上二つに対して個人の意見で分かれる質問ではある


[弐]

森なんか蚊に刺されるわヒルに噛まれるわタケノコ掘らされるわで楽しくねーわ


[くるな]

人の話を聞くときには基本否定はしちゃいかんの

それはリアルもバーチャルも同じなの


[バーボン]

>>くるな

モグマ「空は広いのか?」俺氏「yes」

モグマ「海は深いのか?」俺氏「yes」

モグマ「森は楽しいのか?」俺氏「yes」

モグマ「地中に暮らす俺は無知なのか?」俺氏「yes」


[とりたまご]

あかーん!


[明太マヨネーズ]

リアルもバーチャルも言いたいこと言えない時代なんやで



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