8. Sunday Morning

 フェス会場へ向かう車の中、車内の雰囲気を盛り上げようと、先生が選曲したASIAN KUNG-FU GENERATIONを聴きながら、今日の出演アーティスト情報を勉強する。甲斐先生は、初めこそ面倒臭がっていた軽音楽部の活動を心から楽しんでいるように見える。フェスの心得やらアーティストの解説やら、朝から忙しい。


 レンタルしたミニバンの席順でなぜか俺が助手席になり、先生の話に耳を傾けていた。


「朔は、好きなアーティストとかいるの?」


「特定でこのアーティスト、っていうのは特にないです。俺、こう見えても洋楽が結構好きで、MAROON5とかCOLDPLAYとか、叔父さんの影響でJamiroquaiとかよく聴きますね。」


 先生は、「へー、何だか意外だなぁ。」と言ってハザードランプを点ける。渋滞にはまった。


「朔は爽やかなイメージだから、メジャーどころを聴いてるのかなって思ってた。どっちかっていうと、バンドっていうよりアイドルっぽいもんね。すっごい女の子に人気じゃん。」


 自分で言うのもなんだが、バンドを始めてからというもの、俺は前よりもモテている。好いてくれるのは嬉しいけれど、そのせいでプライバシーは侵害され、気安く女の子と話もできなくなった。

 最近は物が失くなったりしだしていて、少々ナーバスだ。思い出して溜め息をついた。


 今はバンドのメンバーといるときが一番落ち着く。学校では香月と一緒にいることが多いが、あいつはさりげなく女子の害から庇ってくれたり、男子の嫉妬をかわしてくれたり、本当にいいやつだ。咲樹のことが気になっているみたいで、友人としても兄としても応援したいと思う。


「朔は、将来のこととかなんか考えてるのか?プロになるとか。」


 考えていなくもない。音楽で表現することは本当に楽しいし、やりがいがある。なんとも言えない表情をしていると、先生から提案があった。


「お前にその気があるなら、ボイストレーニングとか受けてみないか?夏休み集中特訓。部費で補助出すし。音楽の先生としては、お前の歌声に可能性を感じてるんだよ。だからその気があるなら、もっといい声聴きたいし。ボイトレの先生は俺の知り合いの奥さんなんだけど。」


 単純に興味はあったし、夏休みの予定も部活以外は特に無いため、受けてみますと返事をした。


 フェス会場に到着すると、すごい人だった。慣れている楓くんがテントを張る。


「なんか、こんなにアウトドアだと思わなかった。楓くんすごいね。テント張るのめっちゃ速い!」


 咲樹がはしゃいでいる。楓くんの彼女の由紀乃さんとも仲良くなっていた。


「咲樹ちゃん、日焼け止めはしっかり塗らないと駄目よ。紫外線はほんとに怖いんだから!」


 由紀乃さんは来年からは美容関係の専門学校に進むそうだ。落ち着いていて、綺麗にしていて、癒し系だ。彼氏がいるという雰囲気が出ている。


「ほら、男の子たちも。日焼け止め塗らないと、日焼けして皮が剥けて汚いことになるから。薄くでも良いから塗っておきなさい。」


 すっかりみんなのお姉さんのような存在だ。楓くんといいカップルだと思う。


 咲樹はどう思っているのか分からないけれど、香月といい感じだし、俺にだけ浮いた話がない。楓くんカップルを見ていると、羨ましく感じるな。でも、この頃は女性不信というか人間不信になりかけているため、恋とかに積極的になれないでいる。


 フェスはものすごく楽しかった。今まではパフォーマンスする側しか体験したことなかったが、オーディエンスとしてパフォーマンスを体験すると、自分達の演奏や演出もこうしたいとか、ああしたいとか、考えが膨らむ。やはり、プロのミュージシャンはすごいと思った。気持ちをグッと引き込む魅力がある。


 フェスも終盤となり、日帰りで帰ることになっているためテントを片付ける。


「すっごい汗かいた。臭い?」


 咲樹と何の気なしに話していると、香月と視線が合う。


「え?くっさ。あはは、うそうそ!臭くないよ。着替え持ってきて良かったねー。さすが楓くんの助言。」


 咲樹は俺の首の近くでクンクンして笑っている。香月が俺たちのやり取りを見て、自分のTシャツの臭いを気にしているのが分かった。咲樹もその姿に気付いて香月に近づく。


「香月も臭くないよ。ほら、早く着替えて、片付けないと!」


 香月もクンクンされ、めちゃくちゃ照れている。咲樹は男友達がいなかったからか、男子との距離感は俺との距離感と同じだ。


「香月。なんか、うちの妹がごめん。」


 無意識とはいえ心を弄ばれている香月が気の毒になった。香月は深く溜め息をつく。


「・・・俺もどさくさに紛れて嗅げばよかった。」


 心の声を呟いた香月の背中を思いっきり叩く。やはりそういう発言は、兄としてちょっとムカついた。


 帰りの車では、一番後ろの席に楓くんと彼女、後部座席に俺と咲樹、助手席に香月が座った。眠たくならないようにテンポのいい曲がかかっているけれど、楓くんたちは疲れたのか寝ていた。


「そうだ。文化祭は俺がセレクトした二十曲祭りにするから。来年はKing Gnu祭ね。」


 先生の突拍子の無い話に、俺たちは抗議するが、先生は子供のように駄々をこね、結局やる方向で決まってしまった。


「だって、楓が卒業するまでもう二年もないんだぞ?この年になると一年なんてあっという間なんだよ。俺は焦ってるよ。お前らのバンド、俺が一番のファンなんだよ。」


 先生の言葉を受けて、咲樹が口を開く。


「私も楓くんが卒業するタイミングで部活を引退しようと思ってます。受験勉強を本気でやりたいから。」


 初耳だ。俺は香月と顔を見合わせた。


「咲樹は成績もいいもんな。志望校決めてるの?」


「実は、朔にも初めて言うんだけど。東都大学の医学部に進もうと思っていて、コツコツ勉強してます。」


 咲樹は俺を見て少し笑いながら、黙っていてごめんと言った。咲樹ならしっかり考えているとは思ったが、さすがは目指すところが日本最高学府だ。


「香月は?決めてるの?」


「まぁ。東都芸術大学の器楽部に行きたいと思ってますけど。」


 え!香月も決めてるの!?


「香月は中学の時にヴァイオリンの全国コンクール準優勝だしな。次は優勝か?色っぽい音出るようになったか??」


 甲斐先生が情報通であることに少し驚いた。


「この前、ヴァイオリンの先生に褒められました。やっと分かったかって。ベースにも活かせられるようにしたいです。バンドって、けっこう楽しいし。」


「へぇ。どうやったら色っぽい音が出せるようになった?」


 先生の質問に、香月は「ふっ。秘密です。」と言って窓の外に視線を移す。その仕草に少し色気を感じた。恋をすると色気が出るのかもしれない。



 フェスの二日後。ボイストレーニングが始まった。トレーニングの内容は、イメージと全然違った。肺活量を上げるためにジョギング。腹式呼吸を強化するために腹筋。声を出すときに体をふらつかせないために体幹を鍛えるという、超ハードな肉体改造だった。


 初日は家に帰るとふらふらになった俺を見て咲樹が駆け寄ってきた。二日目は筋肉痛との戦い。三日目ぐらいから声を出す練習が始まり、ただ黙々とメニューをこなしていたら、俺の体は細マッチョへと変化していった。


 例の文化祭の練習をするために、久しぶりにバンドメンバーが集まる。


「朔?お前、なにその体つきの変貌っぷりは!」


 楓くんが一番驚いていた。勝手に触ってくる。


「やっぱり筋肉はちゃんと付いてたほうがドキッとするよね。ね、咲樹ちゃん。」


 見学に来ていた由紀乃さんが咲樹に話を振る。


「うん。腹筋とかちらっと見えたときに割れてるとヤバイよね。腕とかも。」


 咲樹が男子をどういう目で見ているのか、貴重な会話だ。香月がショックを受けている。ヒョロヒョロだから。今度トレーニング誘うわ、と言うと密かにやる気だった。


 歌の練習に入ると、更に皆が驚く。


「え!?そんなに高い声まで出せるようになったの?息もすごく続くようになってるし、音程もぶれないし、声量もアップしてる。これは、楽器隊も足を引っ張れないぞ!」


 珍しく、香月が気を引き締めていた。

 

 休憩のため自販機のところに行くと、体育館で練習しているバスケ部が見えた。ちょっと懐かしくなって少し覗く。


「あれ、佐倉!どうしたの?見学?」


 同じクラスの村上に声をかけられる。


「いや、部活の休憩中にちょっと懐かしくなって見てただけ。」


 意外と閑散としてるな。部員が少ないのか?村上は何故か目を輝かせる。


「え、佐倉って中学はバスケ部だったの!?」


「うん。副キャプテンだったんだけど、高校では軽音部やりたかったからさ。」


 村上は顧問の先生のところへダッシュしていき、顧問の先生もこっちに来た。


「佐倉くん!バスケ経験者なんだって?助けてくれないか!」


 がしっ、と手を握られる。上級生の部員も来て取り囲まれた。

 え、なにこれ。


「頼むよ。実は今度の大会の初戦の日、俺の従兄弟の結婚式と重なっててさ。部員がカツカツだからどうしようって困ってたんだよ。」


 村上も手を握ってくる。日にちを聞くと、二週間後だった。まぁ、その日はボイトレも休みの日だし、良いか。


「期待に応えられないかもしれないですけど、俺でよければ・・・。じゃあ、明日から練習にも合流して良いですか?」


 困っている人を見過ごせない。人助けのつもりで受けてしまった。



 バスケ部の皆は良い人たちで仲良くなることも出来た。マネージャーの松森先輩には入部しろとしつこく勧められたけど、お手伝い要員で、と丁重に断る。


「なんか、佐倉くんが来てからギャラリー増えたんだけど。イケメンがいると活気が違うな。甲斐先生に交渉しようかな。」


 顧問の先生に冷やかされる。声援を送られると手を振ったりしてしまうのが良くないのかな。嬉しいことはちゃんと嬉しいよって表現しないとダメだってばあちゃんも言ってたし。


 試合の前日、尚に電話した。なんと、初戦の星山商業高校に勝つと、南校と対戦になるからだ。


「えっ!じゃあ、明日会えるんだ!嬉しい!絶対勝てよ。」


「いやぁ、俺はお手伝いだしさ。部員もカツカツで、補欠も名前だけみたいな感じなんだよね。」


 うちの東高校はこの辺の高校の中では偏差値が高い進学校で、がっつり部活をやりたい人はあまりいない。故に、大会での成績はあまり良くない。


「明日の試合って、竹下先輩も出るの?」


「当たり前じゃん。次期キャプテンだよ。なんか、マネージャーと付き合ってるらしいよ。」


「え、彼女いるの?・・・かっこいいし、性格も良いから、そうだよね。尚は?彼女出来た?」


 気になっている子はいるらしい。

 そんなことより、竹下先輩に彼女がいることに、何故かショックを受ける。女の子でも良いんだ・・・。ゲイじゃないんだ。じゃあ、バイセクシャル?あー、混乱。


 

 そして迎えたバスケの大会初戦。久し振りのちゃんとした試合が楽しくて張り切ってしまった。


「きゃー!佐倉くーん!」


 商業に進学した同じ中学校の子も声援をくれて、手を振ると喜んでくれた。喜んでくれると俺も嬉しい。素直に、ああやってきゃぴきゃぴしている女の子も可愛いと思う。


 初戦で敗退する予想だったけれど、相手のコンディションも良くなかったみたいで勝ち進んでしまった。


「わー、どうしよう。南高と対戦するなんて思ってなかったから緊張する。」


 俺は違う意味で緊張する。正直、竹下先輩を見たら動揺しちゃうんじゃないかな。


「さーく!久し振りー。元気だった?あれ、なんか筋肉質になった?」


 聞き慣れた声の主にバックハグをされて振り向く。


「久し振り!本日はお手柔らかにお願いします。」


 尚に挨拶をすると、後ろの方に竹下先輩がいて、目が合ったので、会釈だけした。


「対戦相手と試合前に話してちゃ評判悪くなるんじゃない?また試合が終わったら話そう。」


 尚と別れ、こっちはこっちで一応戦略会議を行う。ネックは竹下先輩のディフェンス。そこを抜けてシュート出来るか、らしい。こっちのディフェンスはキャプテンの鉄の護りが売りらしい。確かにSLAM DUNKのゴリっぽい。


 試合が始まり、南校の攻めに必死に食らいつく。よし、今ならシュートが打てる!

 ベストタイミングでパスが回されゴールに向かうと、竹下先輩が立ちはだかった。目を覗き込むと、ちょっと動揺している感じがした。

 その一瞬、くるっとターンしながらディフェンスを潜り、シュートを打った。


「きゃー!入った!佐倉くーん!」


 竹下先輩に微笑みかけると、目を逸らされた。


「どうしたんだよ、竹下。調子悪いのか?」


 相手チームの会話が聞こえる。なんだろ、この気持ち。先輩に彼女が出来た腹いせみたいな感じかな。小気味良い。


 結局、実力に差はあったので、南校には敗退した。


「キャプテン、負けちゃってごめんなさい。また人が足りない時は呼んで下さいね。」


「いやいや、一勝出来ただけでもありがたかったよ。いつでも遊びに来て良いからね!」


 お礼を言って帰り支度を済ませ、会場を後にしようとすると、マネージャーの松森先輩に引き留められる。人気の無い体育館の裏に連れていかれた。多分この後告白されるんじゃないかな。


「佐倉くん、私、佐倉くんのことが好きなの。付き合って下さい!」


 最近はこのパターンが多い。そして俺はまた、煮え切らない態度でその場を流す。


「ごめんなさい、今は恋愛とか考えられなくて。でも、気持ちはありがたいので、三分だけなら恋人になっても良いですよ。」


 そう言ってアラームをセットする。


「え、三分!?」


「あー、ほらほら。もう十五秒経っちゃった。先輩は恋人に何して欲しいですか?」


 焦って考えている。「どうしよう、どうしよう・・・」とあたふたしている姿が可愛いと思ってしまう俺は、我ながら性格悪いな。


「じゃあ、抱き締めて欲しい。」


「もぉ、汗臭いとか思わないでね。」


 ぎゅっと抱き締めると、彼女は嬉しそうに俺の背中に腕を回す。その五秒後くらいにアラームが鳴った。


「短い間でしたけど、ありがとうございました。」


「えー、三分なんて・・・。寂しい。」


「わがまま言わないでください。じゃあ、特別にこれで許して。」


 頬にキスをすると、彼女は顔を真っ赤にして俯く。


「秘密にしておいてね。バラしたら、先輩のこと嫌いになります。」


「分かった。一方的な気持ちだったのに、ありがとう。内緒にしておくね!またバスケしに来てね!」


 丸く収まった、のかな?良かった。もう何人目かな、このパターン。さて、俺も帰るか。


「佐倉!今のって・・・。」


 振り向くと竹下先輩がいた。見られてた・・・。


「ご無沙汰してます・・・。」


 沈黙・・・。その時、スマホが鳴った。尚からで、助かった。


「元気そうで良かったです。本当はバスケ部じゃないんですけど、今日は応援で・・・。あと、彼女が出来たそうですね。今度、文化祭でバンド演奏するので、是非良かったら彼女と一緒に見に来てください。じゃあ、尚に呼ばれたのでまた。」


 逃げるように走って、先輩の前から姿を消した。一番動揺してるのは俺かも。

 


 軽音部の方では、ボイストレーニングは夏休み中ずっと続き、俺の歌声は格段に成長した。そして、声楽にとても興味が湧いた。

 ボイストレーニングの先生は、色っぽい女の先生だったけれど、スパルタ過ぎて恐怖だった。そしてその先生に、「あなた、もう少し色気が出ると声に深みが出てくるから、頑張ってね。」と言われ、香月と同じ悩みに突入した。

 色気って、何?

 


 新学期が始まり、前より私物が失くなるようになった。放課後に忘れ物を取りに教室に戻ると、女子が俺の机を漁っている現場に遭遇した。


「朔君が触ったってだけで尊いー!」


 いやいや、犯罪だろそれ、と心の中で突っ込む。どうしようかと思案していると、後ろから腕を引っ張られて柱の影に隠れる形になり、その女の子がツカツカと教室に入っていった。


「あなたたち。それ、やられた側の気持ちを考えるべきよ。特に仲良くもない人が勝手に自分のもの触って、時には盗まれて、気持ち悪いでしょ?高校生にもなって、恥ずかしくないの?」


 彼女の剣幕に押されたのか、俺の机を物色していた子達はすごすごと帰っていった。彼女は柱の影に隠れていた俺を引っ張り出す。


「出過ぎた真似してごめんなさい。咲樹から話を聞いていて、何だか見過ごせなくて。あ、私のことご存じですか?。藤原椿です。咲樹さんと仲良くさせていただいています。」


 丁寧な口調で、そして優雅なしぐさでお辞儀をする。咲樹と仲が良いのは知っていた。育ちの良さが滲み出ている。


「こっちこそ、ありがとうございました。」


 お礼を言うと、彼女の表情は厳しくなる。


「あの、出過ぎたついでに言わせていただきますが、あなたも、もっと毅然とした態度で人に接するべきだと思います。さっきも何で見てるだけなんですか?彼女達は犯罪紛いのことをしてしまうところだったんです。未然に防ぐべきでは?」


 彼女の気迫にすぐに返事が出来なかった。


「・・・いえ、全くその通りで、返す言葉もありません。」


 いつも受け身な自分が招いている事態だということを痛感した。どうすべきだったのか。はっきりと叱咤する彼女は眩しい。



 次の日、部活で文化祭の練習をしていると、先生からの指摘が入る。曲目はMaroon5のSundayMorningだ。Maroon5は俺がよく聴いていると先生に言ったため、選曲されたらしい。


「英語の発音は物凄く上手いんだけど、気持ちが乗ってないね。もっと歌詞を解釈して。」


 解釈ねぇ。和訳して朗読もしてみたけど、なかなかスッと入ってこない。


「Maroon5の曲って、歌詞の内容けっこうエロいんで、どう表現すれば良いか・・・。」


「お前、健全な男子高校生ならエロいことぐらい想像するだろ?洋楽の良さというのは、日本語だと恥ずかしいこともさらっと歌えてしまうところだよ。もっと想像しろ。好きな子と、あんなことやこんなことしたいって、あるだろ?日曜日の朝、目覚めるとベッドの上。隣には彼女がいて・・・。」


 その時、委員会で遅くなっていた咲樹と香月が音楽室に入ってきた。二人は顔を赤くしている俺の顔と、先生を交互に見る。


「先生、まさか朔に変なこと・・・!」


「ちげーよ。音楽的指導をだな。」


 みんなの会話を聴きながら、先生が言っていた様に歌詞の内容を思い浮かべる。朝目覚めるとベッドの隣に好きな人・・・。

 ダメだ、出てこない。竹下先輩しか出てこないよー!

 ・・・ん?ちょっと待てよ?そのまま竹下先輩で歌ってみるか。


「そうだよ!その感じだよ。こういうのが色気って言うんだろうな。」


 これは不本意だ。なんで?俺は竹下先輩の事が好きなの?いや、好きだけどそういう好きじゃないって。思い込んでるだけ?己のセクシャリティが分からなくなってきた・・・。文化祭、誘うんじゃなかった・・・。

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