カゼタ入院記

カゼタ

第1話 入院前に必要な書類のハナシ

 皆さんは、「入院」という経験をされた事があるだろうか?通常、そうそうある経験ではなかろうかと思う。ましてや、三十路に足を突っ込んで一年の若造たる自分自身が、実はもう既に3度、入院の経験があると言うのも、中々に波瀾万丈と言っていい人生だと思う今日この頃だ。

 私が人生4度目の入院を果たしたのは、2021年10月19日、そう、今執筆しているのが11月9日なので、ほんの10日前の事である。ここまでに至る経緯は、それこそ対面で語れば小一時間ほどのお時間を頂戴するほどの物語となるが、まぁ追々、語らせていただくか、何処かのネット上に転がっている拙作、「羊蹄に揺蕩う雲よ」に詳らかに語っているので、今は割愛させていただきたい。

 要するに9月、心を病んで人生で6度目の「遁走」を果たした私の心を、一旦休めて治療するために、精神科の自由病棟へ入院する、と言う次第となったのだ。


 さて、入院する際、どんな書類が必要なのか?結論から申し上げれば、「健康保険証」、「高額療養費適用認定証」、「限度額適用認定証」の3種類が、最低限必要な書類である。「高額療養費適用認定証」と「限度額適用認定証」については、「健康保険証」に基づいて、その保険者が申請に基づいて、速やかに用意してくれる物となっている。

 現在の日本は「国民皆保険制度」の下、何もなければ医療費は医療保険で自己負担は3割で済むという、米国から見ればたまげるような手厚い制度の庇護下にある。「協会けんぽ」や「国民健康保険」、各種組合独自の健康保険などなどが、それに当たる。

 更には高額な医療費がかかる場合も、一定額の自己負担までで済む、「高額療養費の申請」を行えば、適用範囲内の治療であれば、一定の自己負担額で高額な手術も受けられるのだ。

 入院に当たっては、「限度額適用認定証」を交付されれば、世帯の収入に応じた自己負担のみで、入院費を抑える事が可能となる。

 診療を受けて、入院が必要となると、お金に余裕がある場合は別にして、上記が「三種の神器」とも言える強さを発揮する。大概の病気による入院については、イージスの盾となり得る。今回、私の場合は手術の無い入院であるため、「健康保険証」と、「限度額適用認定証」の2つがあれば、入院に何ら支障はなくなるのである。


 ここで、私が入院を決定した9月24日の状況を見てみよう。

 まずは遁走して5日間行方不明になり、職場へ連絡なく欠勤を続けたため、9月24日付でその会社で加入していた協会けんぽを脱退するという形となった。そう、保険証を喪った、つまりは入院の入口で盛大に爆死したワケである。

 これを通常、資格喪失と言い、つまりは医療保険上、宙ぶらりんな状態となる。国民皆保険制度上、空白期間はあってはならないため、通常であれば速やかに各自治体の窓口へ赴き、国民健康保険への加入手続きを取る、もしくは別口で協会けんぽ等の健康保険への加入手続きを取るという事が、通常一般に必要な手続きとなる。

 また、一つ厄介な問題として、国民健康保険と協会けんぽで保険の切り替えをすると、医療保険が負担する分の医療費については、切り替えた月に受診があった場合、申し出て切り替え先の負担に変えるという、非常に厄介な手続きも必要な場合がある。

 私の場合、運良く母の扶養で協会けんぽを継続できるという見込みがあった。そのため、即座に母の扶養で協会けんぽへの加入手続きをする事とした。9月24日付での前勤務先で資格喪失のため、9月25日付での加入手続きとなる。

 加入手続きには、前勤務先での資格喪失を証明する書類が必要になるが、実はこれ、結構出し忘れる人事担当者が多いので、しっかりと退職時には念押しする事を、強く勧める。この、「資格喪失証明書」が届いて初めて国民健康保険や協会けんぽ等への加入手続きがスタート出来るからだ。

 では、「資格喪失証明書」が届くまでに病院へかかる場合はどうすれば良いかと言うと、これまでの保険証をそのまま使う、もしくは無保険として10割自己負担での受診しか道は無い。意外に思われるかもしれないが、資格喪失してすぐに保険証が使えなくなるものでは無いため、すぐに手続きすれば、保険証が届くまでは使い続ける事が可能だ。ただし、上記の様に保険の種類が変わる場合、請求先の切り替えが必要となる為、厄介な手続きが増えることにはなる。

 私の場合は幸運にも、保険の種類が変わる事が無かったため、引き続き保険証の使用を続けつつ、「資格喪失証明書」が届くのを待った。

 2週間掛からずに「資格喪失証明書」が届いたので、これを持って母に扶養と資格取得の手続きをお願いした。この際、前年度の所得についての情報が必要となる。扶養者より、被扶養者の方が収入が多いと、扶養には入れないからだ。

 やがて、入院が10月19日から3ヶ月として確定したため、保険証が間に合わない事態が想定された。これはマズイ。仮にも長期の入院に、資格を喪失した保険証のままでは体裁もよろしくない。そのため、裏技を使う事にした。

 現在保険加入手続き中である事の証明である、「健康保険加入証明書」を発行してもらったのである。

 これは、保険証の本証作成に時間がかかる場合、資格取得している事と、その資格を取得した年月日を、会社が証明する、という性質の証明書であり、これが保険証の代わりとして機能するのだ。これを10月13日に手に入れた私は、早速翌日、10月14日に、協会けんぽの札幌支部へ、「限度額適用認定証」の発行依頼に乗り込んだ。

 勿論、抗争や抵抗やタライ回しや皿回しなどに遭う事もなく、粛々と手続きは完了し、速達での発送となった。これで差し当たっての入院に関する心配事は無くなったのである。


 如何だったろうか?一言、「入院」という単語の裏には、これだけ煩雑な手続きが必要となる。今回は完全に、私が行動不能な精神的ダメージを受けていたため、殆どを母親にお願いする事になってしまったが、いかんせん関連業務に従事していたため、流れについては、精神的に落ち着いて来た今、冷静に解説する事が出来てしまうのである。

 第一回目の今回は、入院に必要な最低限の武器、「健康保険証」と「限度額適用認定証」について、私の場合の話を書かせて頂いた。乱文乱筆につき、参考にし辛い所があるかもしれないが、もしも読んで頂いた読者諸兄の一助になるのであれば、幸いであります。

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