4人のこして離婚

東海林凛

第1話

第一章 紗久良

 母が出て行った朝はとても薄暗く寒かった朝のこと。いつものように学校へ行く準備をして、いつものように中学へ向かった。帰宅した時にはいつも使っていた母の物はぽっかり消失していた。


「お姉ちゃん。」

いつもと変わらず出迎えてくれる美久がニコニコしながらやってくる。

「今日はお母さん、いないって。」

「そうなの。どうかしたの?」

「ごめんな。今日からしばらく母さんいないから不便をかけるかもしれない。」

と父が言った。


両親は共働きで4人兄妹。庭に梅の木のある一軒家に住み、特に不自由なく生活していた。長男の菅ちゃんは中三で受験勉強の真最中。次女の葉月は小学二年。三女の美久は年少。そして中2の私で4人。毎日賑やかな家族だった。


「お母さん仕事忙しいの?」

「今立てこみで留守にすることが多くなりそうだ。もうすぐできるから支度してな。」

夕飯の魚を焼きながら父はいつものようにチャチャと夕飯を作ってくれた。その横で美久がお手伝いをしている。


うちは母が帰宅しても父が料理をするような母が二人いるような、父が二人いるようなそんな家族だった。得意なことはやれる人がやればよいとゆうスタイルで私の不得意なことは誰かがやってくれていた。


しばらくして菅ちゃんが帰宅した。そして、そのまま部屋へ戻った。受験勉強で疲れているのか最近カリカリしている。

菅ちゃんが受験勉強に打ちこめるようにと母の職場の後輩が家庭教師としてやってきていた。いかにも勉強が出来ます風のオーラをもっているかと思いきや、髪はツンツンしていて、うるさい車に乗ったちょっと悪そうなお兄ちゃんだった。いいところの大学出身で、母とは同じ部署で働いているらしい。


「菅ちゃん、先生きたよ。」

「こんばんは。お邪魔します。」

「仕事もあるのにありがとな。今日は日勤かい?」

「今日は夜勤あけで。」

「ママね、忙しくて今日はお泊りだって。」


寒い時期になると母の部署は忙しくなる。夜勤もやっている為、母がいなくても生活は回るようになっていた。


母はそれっきり帰って来なかった。次の日、帰宅すると美久の姿もなくなっていた。



「あそぼ~。」

家の前で叫んでいるのは葉月のお友達だ。美久がいなくなって葉月は友達とよく遊ぶようになった。小学生になってお友達と外で遊ぶのが嬉しくてたまらないようだ。

ときどき葉月が同じ質問をする。

「お母さんとみっちゃん帰ってこないね。」


春になり、菅ちゃんは県外の高校を合格し、家から寮へ引っ越すことになった。その頃、父から離婚したと言われた。状況が状況だったので理由を聞く訳もなく受け止めた。


菅ちゃんがいなくなって慣れた頃、学校から帰宅すると父に抱っこされながらみっちゃんが泣いていた。

「え、みっちゃんおかえり。」

「かんちゃん、かんちゃん。」

離婚したら子供はいらないってことなのか。母に対し、呆れと怒りしかわいてこなかった。


美久がママはイオンの近くに住んでいると言っていた事を思い出した。母の車はツートンで、知っている人であればなんとなく目に入る。私は学校帰りその周辺を散策した。バスの終電時間間近、ふと目をやると車があった。その日は帰宅した。すぐ近くの路肩には、あのうるさい車があった。

「息子くらい年の離れている奴と今更不倫かよ。」


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