第33話 『ふぉーりん・だうん!』
「行くぞ車田」
「了解です」
卯月は人間の域を超えたスピードで十文字に向かっていく。
(…前に闘った時は、電撃が身体をすり抜けていった。つまり相手の能力は何かをすり抜ける能力。持ってるのは恐らくおんぶされてる方だね。アレを試して見る価値はある…まぁあんまやりたくはないけどね。)
十文字は懐から出刃包丁を取り出して、車田…は狙えず卯月に突き刺そうとする。
─が、卯月は案の定それをすり抜ける。
その時だった。
「がぁぁぁぁぁ!」
ドタッ、ドタッ
「ぐっ…貴様…やったな。」
卯月と車田もふっ飛ばされて倒れ込んだ。
(一度に透過できるのは一つまでってことに賭けて、ナイフの中に強い電撃を流しておいた!身体強化的な能力で電気はある程度防がれてたぽいけど、それでも十分な威力。何より…)
十文字は急いで走って二人の間に立つ。
(二人を分断できたことは大きい!しかも先の仮説がおそらく立証されたことによつて、奴らに有効なダメージを与えられることにもなる!先に狙うべきは…!)
卯月が起き上がる。
車田は、まだ寝転んでいる。
(…まずい。車田が封じられている間は私だけで闘うことになる。だが加護を解放すれば車田を巻き込む。急いで車田を回収しなくては…!)
十文字が電撃を放つ。
卯月は巧みにこれを回避するも、なかなか車田の元へ辿り着けない。
「ねぇそこのマッチョ君?身体強化ってさぁ、アソコの強化もできんの?いいプレイだと思うんだけど」
(ダメだ、完全にペースを握られている。このままだと…、ん?)
卯月の身体強化は、筋肉や骨だけに適用されるわけではない。
視覚や嗅覚などの、五感にも適用される。
彼は強化された聴覚で、何かが近づいてきている音を感じとった。
ふと見ると、遠くに飛行機が落ちてきている。
─いや、飛行機は急に方向を変えてこちらへと落ちていく。
(冗談だよな…!)
少し遅れて車田、十文字もそれに気づく。
(ちょ、ヤバいって!流石に狙ったって訳でも無さそうだし、何て偶然だよ!とにかく二人を合流させないようにしつつ、自分の命を護らないと!)
(俺へのダメージは問題ない。けどいくら卯月でも流石に飛行機の重さや爆発には耐えられないだろ…!やるしかない!)
車田は急いで卯月の元へ駆け寄る。
十文字は勿論これに立ち塞がる。
車田と十文字が、激突した。
(焦っちゃったね。さっきのナイフから学習しなよ!)
その瞬間強力な電撃が車田に走る。
(…耐えられる内にやるしかない!今だ!)
車田は電撃ではなく、十文字の身体をすり抜けていく。
(すり抜け対象を途中で電撃に変更することで、俺の身体と重なった分だけヤツの身体を消し飛ばせる!この感じ…間に合った!)
車田の全身が、十文字の肉体を突き破る。
「…ウソ、でしょ?」
通り過ぎられた後、十文字はバッタリ倒れた。
それを
ふと車田は思い出す。
自分は昔務めていた企業に殺されそうになっていたことを。
物理的にと言う訳ではない。
ただ働かせる、それだけのなんてことない方法だ。
行政と癒着していたその会社は、卯月が来るまでは横暴の限りを尽くしていた。
「セーフ…変更する前に電撃で気を失ったらアウトだった。一か八かの賭けは余りやりたくなかったんだがな…。」
「助かったからいいだろう。」
飛行機が、落ちてくる。
ガシドォンッッッ!
そして、大地の少し上で散り散りになって、再び飛んだ。
二人はその欠片をすり抜けていく。
「…やれやれ。お前がいて本当によかったよ。」
「それはお互い様」
「ははっ…何というか…私達はどうやら気が合いそうだ。」
「そうかもね。」
二人は、焼け野原を背に歩く。
本当に久々に、彼らは談笑した。
十文字は、目を覚ますとすぐに自分が何かの下敷きになっていることに気づく。
(あれ…。私…押し潰されて…あれ、なんで私…まだ生きてるんだろ…?)
ボーッとしてる中、必死に頭を働かせる。
─大分考えた後、理由に辿り着く。
(そうだ…私は戦うんだ。皆の為に…!)
「『
「おぉぉぉぉぉい!隠れてんのはわかってんだぞ?出ないならレェェェッッツバァァァァァァヌイング!」
ドウゥ、ゴォォォォォ!!!!
平は電柱の方向に火炎を放つ。
龍崎はすぐに氷で自らを護る。
─が、やはり出力が足りない。
少しずつ、氷の壁が薄くなっていく。
(まだだ…まだ…!私が足手纏いになったら…そしたら…私は心から世界を楽しめない!)
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