第27話 『ほわいと・るーむ!』
「おいそこの二人!」
武丸は声を振り絞り二人に呼びかける。
「あぁん?」
(ひ、ひぇぇぇぇ!!!正直アイツら怖い!何か他の奴らとは雰囲気違うし…。でも、ジェシカは神しか言わないし、結局俺の交渉次第なんだよな。何も思い浮かばないけどやるしかねぇ…!)
「よ、4VS1の方がよくね?」
「え、やだ。このシスター神のためーとかで裏切って来そう。」
「ですよねぇぇぇぇ!!!!!」
(チクショウ、否定できねぇ…!)
「そ、そんなことないですよ!」
「じゃあ人間のことは何と思っとるん?」
「神の奴隷に決まってるじゃないですか!」
「ほらやっぱ信用できねぇ」
(ジェシカァァァァ!!!!!)
「なぁ米沢はんどうする?正直真ん中二人の生殺与奪権半分ぐらい持っとると思うねんウチら」
「ならやる事は一つだなぁ…、対岸の方も同じ考えみたいだしよぉ…」
「あぁ、せやな!」
(((全員殺す!)))
「なんてことでしょう!交渉は何故失敗してしまったのでしょうか…!あぁ神よ…、愚かなる兄弟達をお赦し下さいませ…」
(九割方お前のせいだと思う)
「臨機応変に…まずここは撤退だ!」
最初に動いたのはジェシカと武丸。
瓦礫の山を二人で登っていく。
合理はマシンガンを生み出して二人に撃ち込むも、巨大なブラックホールによって遮られた。
更に兵器を生み出そうとするが、今度はブラックホールに吸い込まれそうになる。
「はっはぁ!対象が違ってもでかけりゃ大丈夫!言っとくが前と同じ方法はオススメしないぜ?」
(…その通り。自分を覆って穴より大きいの部屋を創れば吸い込まれることはない。けど…今回の場合は更に二人いること。そして僕が一人ってこと。閉じ籠もったら間違いなくあの二人のカモだ。)
「でも…君は勝てない」
「ほえ?」
ブオオオオオオオッ
合理のスーツのあちこちから煙が出る。
そして、彼は上空へと飛び上がっていった。
「吸引力を振り切ってやがる!」
米沢もまた宮藤を抱えて飛び上がって、合理を追う。
「空中戦になるのか。ならまずは、下の奴らを…!」
ドォンッ!
合理の体が爆発した。
「ナイス米沢…ってあれ?いつの間に触れとったんか?」
「いや、おそらくこれは…!」
焼けた合理が墜ちていく。
ドタッ!
そのままビルの屋上に消える。
ジェシカは、静かに笑っていた。
「イカロスの最期をご存知ないでしょうか?『分を弁える』事を知らないことは傲慢…人間の原罪です。」
「わ、わからん…何なんやあれは!?」
「こっちが聞きてぇよ。奴の能力が…全くわかんねぇ…!」
「ジェシカちゃんすげぇぇぇぇぇ!!!!コレで2VS2!対等だな!」
「えぇ、まぁ…本番はここからですが。」
「この部屋のルールだからな…、先に説明を聞いてもらうぞ。」
「ルールがあるの?」
「この部屋はどちらかの死によってのみ開かれる─密室ってことだ。次に、この部屋にあるものは全て少しずつ腐食していく。俺は勿論例外だ。」
「え、じゃあ急いで倒さなきゃ!」
十文字は電撃を部屋一杯に放つ。
─が、急にそれが止まる。
「…ッ!?」
十文字の体がビクンと震える。
「3つ目のルール。この壁や床への攻撃は全て同じ方向に反射される。…一発でも外せないなぁ。」
(い、意識が飛びかけた…!攻撃用の電撃ってこんなに威力高かったんだ…、めっちゃ気持ち良かった!ってそうじゃなくて、『適応』使い始めとはいえ私でもこれもう一発喰らったらヤバいって!)
「さぁ来い。我が同胞に舞を捧げよ。」
既に、十文字の体は違和感を覚えている。
「じゃあ遠慮なく!」
十文字は真っ直ぐな大量の電撃を犬神に放つ。
犬神がこれを避けると、壁に当たった電撃が跳ね返ってくる。
十文字は難なくこれを避けて、また同じ様に電流を撃つ。
「成程、逃げ道を減らしていくという考えか。だが甘いな。」
突如斜め方向に電撃が跳ね返る。
(何これ、見えない壁に弾かれたように…いや実際そうなるのか。)
無数の予測不可能な電撃が、十文字に襲い来る。
(もうちょっと…避けなきゃ!)
初めの下から来る電撃は、左に転がって
次の上からの電撃は、頭を引いて躱す。
次々と迫りくる電撃を紙一重で躱しながら、犬神の隙を
─少し、犬神が壁の向きを調節する。
電撃は、既に十文字を取り囲んでいた。
「終わりだ!」
電撃が十文字に突き刺さる。
─が、十文字は全く動じない。
「適応完了…っと!まさか自分の電撃が牙を剥くとか夢にも思わなかったわ。いやぁ慢心ダメ、絶対。」
「適応。成程、それが君の能力か…」
「そだよ?知っててもどうしようないと思うけど。」
(でもこの腐食は適応できる気がしない…。加護によるものだからか?電撃を放っても壁で防がれるのは変わらないし。)
「なら話は簡単だな。もう一つの能力が分からないので躊躇していたが…そもそも部屋を区切って壁を張れば問題ない。」
(そうなんだよね。私の電撃じゃこの部屋は壊せない。もしかして…詰んだ?)
「ぐ、ぐぬ…!」
ビルの屋上から、一人の男が起き上がる。
「治療の契術で良かったでございますね。それでもかなり重傷ですが。」
「マモン…問題ないよ、すぐに治る。」
「それは良かったです。」
合理は屋上から外界を見下ろした。
(アイツらはまだ闘ってる…できればそのまま潰し合って欲しいけど。とにかくあの能力の正体が分からない以上、また行くのは危険だ。爆撃だけしとくか…)
合理は爆弾を大量に搭載したドローンを10機創り出す。
「行っておいで」
ドローンは戦場へと向かって行った。
「よし、とりあえずは…ん?何だろうこれは?」
合理の目に白い建物が入る。
「…行ってみるか」
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