第26話 『さんどいっちど・さばいばる!』

「…強敵、切札使用?」

「やめろ。できるだけテメェは殺したくない。…覚悟してても、やりたくないもんはある。」

「御意」

「下がってろ」

 平が龍崎達に突っ込んでいく。

「させない!」

 龍崎は氷を放って凍らせようとする。

 ─しかし、氷の刃は全て平に燃やされた。

 ならばと龍崎は平自体を凍らせる。

「やっぱり…!」

 平は自身を燃やして氷を溶かしていく。

 龍崎はすかさず平に氷を送り込むも、追いついてない。

 少しずつ氷が溶けて来ている。

(この防衛ラインを突破されれば私達は終わり。なら…!)

 倭島は蜘蛛の糸を電車の残骸にくっつけて、それで自身を引っ張って移動する。

「ちょ、ちょっと!」

(禁止されていたのは動くこと。糸に引っ張って貰うのはどうやらセーフだったみたい。元々信用ならなかったし、貴方の事は見捨てさせてもらう。悪く思わな…)

「それはダメ!」

「逃亡することを禁止する」

「えっ…!」

 次の瞬間、倭島の体が少しずつ薄くなっていく。

(やっぱりこれが狙い…!)

「な、何で…?」

「違反者消滅、大自然摂理。」

「やだ、やだやだやだ!せっかく認めてもらえたのに!せっかく幸せになれそうだったのに!お願いだよ!誰かた…」

 倭島の体が宙に溶けていった。

(敵の狙いはわかったけど…、全く状況が好転していない。何か…私にできることはないの…?)








「瀞峡ちゃん…だっけ?君中々いい攻撃するねぇ。」

「黙れ!色欲を以て現を堕落させんとする冥府魔道の手先め!今度こそ天誅を貴様に浴びせん!」

 その頃、十文字は偶然遭遇した犬神と泥仕合を繰り広げていた。

 犬神の攻撃は脅威だったが、どれも大振りだったので易易と回避される。

 一方十文字の電撃は壁に完全に防がれていた。

(…灯火ちゃん!?)

 反応が唐突に消滅する。

「隙あり!」

 ブンッ!

 犬神は十文字目掛けて鎌で薙ぎ払う。

 しかしそれは十文字の素早い回避により空振りに終わった。

「…これでもダメか。なら…っ!」

「え、奥の手あんの?」

「『因果応報リンカーネイション』」

 そう言って犬神が手を合わせると辺り一面が白い壁に覆われる。

 やがて、二人は立方体に包まれた。

「ヤリ部屋作ってくれたの?センキュー。」

「…これは私が一人になってから発現した完全新作だ。貴様は記念すべき一人目の客だ、誇ればいいさ。」








「気をつけろジェシカ!コイツはどんな物でも創造できちまうバケモンだぞ!」

「ええ…まぁそれなら問題ないでしょう。」

 ジェシカは最大出力のビームを放つ。

 対する合理は鏡を出して相殺した。

「やべぇ!鏡ってビーム跳ね返せる物なのか!?」

「いえ、これはおそらく…!」

「『天地想像クリエイト』。君が思ってる通り、僕は新たな力に目覚めた。無限の力を…見縊みくびると後悔しますよ。」

 合理が大砲を創り出して、勢いよく放つ。

「10時43分…この時間ですね。」

 電車がもう一本、走ってくる。

(この技は暫く使えなくなりますが…、駅は市内にもう一つあるのでそこまで問題はないでしょう。神の名のもとに、見極めさせて貰いましょう。)

 ジェシカが念じると、走行中の快速列車が急激に方向を変える。

 スピードも上がっていく。

「…」

 合理は壁を創り、これを抑え込もうとする。

 ─されど、壁は崩れる。

「おっしゃ!これは確実に決まっ…」

「いえ、まだです!」

 電車の上から、全身に機械のような装束を纏った男が現れる。

 いや、それはさながらアンドロイドのようだったが、正体が合理であることは自明だった。

 合理は試すように手を結んだり開いたりする。

「思いつきだけど…。うん、いい感じ。」

「な、何だよこれ…さながらアイアンマンじゃねぇか!」

(ビームは防がれたが、電車は行けた…ってことは、存在しないものを創造するにも限度があるってことか?それならまだ勝機はあ…)

 次の瞬間、全員の死角からパチンコ玉が飛んでくる。

 慌てて武丸はブラックホールの中にそれを吸い込んだ。

「あっぶねぇなぁ!誰だよおい!」

「君は…!」

 武丸の背後から米沢と宮藤が現れる。

「その声…飛行機の奴か!何だぁ、ダブルデートでもやってんのか?俺達も混ぜてトリプルデートにしてくれよなぁ!」

「そっちの方は一人やけどな。しつこく迫って振られてもーたんか?」

「…あまり僕を怒らせない方がいい」

「おいおい、キャラ変わり過ぎだっての。ここは一旦冷静になって…もっかい俺と手を組まないか?」

「挟み撃ちってことか。」

「せやで♪多分コイツらが電車ぶっ放した犯人やしな!」

 ジェシカと武丸は顔を見合わせる。

「ヤバいヤバいヤバいって…!逃げよ、な?」

「何を言ってるんですか、神の敵がそこにいるんですよ!」

「一時撤退だよ!後で倒したら一緒だろ!」

「…それもそうですね。しかしどうやって…チラッ」

「囮作戦以外でお願いします。」

「神のために犠牲になるのは光栄なことですよ…?」

「やだ俺まだ生きたい!…そうだ!」

 武丸は何か思いついたのか、米沢の方を向く。

(正直ここからマトモに脱出するのは至難の業。ましてや3人撃破は不可能と言っても過言ではない。なら取るべき策は懐柔…!アイアンマンは話が通じなさそうだ。だがカップルの方なら行ける。最低限、全員潰す方向に行かせる!俺の交渉で!)

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