第22話 『じゃいあんと・だんす!』
三機は戦闘機からミサイルを取り出す。
「一斉発射で行くよ!3、2、1!」
ミサイルが飛ぶ…が、巨人は軽々とこれを避ける。
「甘い!」
ミサイルは巨人から逸れると、向きを変えて巨人の方に向かっていく。
ズドンッドンッドンッ!
「ぐぁぁっ!」
3発全弾、命中。
巨人は両腕と足に傷を負った。
「俺達も負けてられるかってんだ!龍崎!」
龍崎も氷の槍を今度は顔に放つ。
だがこれは、頬を傷つけるのみだった。
「チキショー…、あっ…そうだ…!」
巨人は自賛も込めた笑みを浮かべると、ゆっくりと息を吸う。
そして─米沢達に一気に吐き出した。
「ぐっ…」
米沢は力の向きの変更が間に合わず、二人は一気に飛ばされていく。
力を最大限に掛けて、マンションにぶつかる寸前で漸く止まった。
「あんま効果はないか…あ、もう一つ思いついた!」
巨人は今度は何かに向かって走っていく。
「機銃掃射の準備完了!」
「よし、3人とも撃って!」
戦闘機に内蔵された機関銃から、銃弾の雨が降り注ぐ。
(巨大化にあたってかは知らないけど皮膚も固くなってる…そもそもこれは本当に巨大化なのか?本人はそう思ってるかもしれないが…。とにかくまずは、さっき傷ついた所─特に足を狙って動きを封じる!)
「さっきからごちゃごちゃ…ウルセェぞオラァっっ!」
巨人は近くのテナントを引っこ抜いて持ち上げる。
─そして、テナントに巨大化をかけて、戦闘機を打ち壊しにかかる。
「回避っ!回避っ!」
渋谷はなんとか回避できた。
音無も
だが…不運にも合理は斜線上から逃れられない位置だった。
「しまっ─」
次の瞬間、合理の戦闘機と音無の戦闘機が入れ替わる。
「音無ッ!」
「安心しろ、死ぬわけにはいかない!」
音無は窓を開けて、下に向かって石を投げる。
そしてテナントが音無にぶつかる寸前で、石と自分の位置を入れ替えた。
「おっしゃ!まずは一人…!」
(よかった…奴は幸い私が死んでいると勘違いしているようだ。さて、第三関門…)
音無は地面に向かって飛び降りる。
「それっ!」
そして脱いだ自分の上着を大地めがけて落とした。
当然上着は自分より先に落ちていく。
そして地面についた瞬間、自分と上着を入れ替えた。
(…ふぅ、落下の衝撃もこっちに来るかは賭けだったが、良かった良かった!しかし、私ができることは正直もうない…、一応渋谷に印はつけてあるが。仕方ない、巻き込まれないように適当に逃げるぞ!)
龍崎はずっと悩んでいた。
最初は有頂天になっていたものの、自分が先の戦闘から何もできていないからだ。
事実、彼女の契術は火力においては米沢に劣り、応用力においては宮藤に劣る。
ほぼスリル目当てで戦っていたとはいえ、そういう状況は龍崎にも歯痒いものがあった。
(巨人を倒す決定打がない…!ミサイルで漸くマトモなダメージになるレベルの硬さをどう攻略すればいいの…?)
「龍崎、体に負担はないか!?」
「大丈夫です、が…ジリ貧ですね。」
「全く以てその通りだ。パチンコ玉砲が当たればそれなりのダメージになるとは思うけどなぁ…」
「…ねぇそれって、パチンコ玉じゃないとダメ?」
「いや、パチンコ玉は手軽なのと硬さから持ち歩いてるだけだ。合作が炸裂すればさぞいいダメージになるだろうよ。けどその間に飛行は制御を失う。撃ってすぐ力をかけ直せば落下死は防げるが…、急に重力に勝る力がかかるんだ、人体はズタボロだろうな。制御ミスったら死ぬぞ。」
「確かにさっきまでならそうかもしれない…、でも今なら行けると思うんです!」
「…と言うと?」
「手を、組む?」
十文字と倭島は
「せや、おてて繋いで決勝で会おうぜってこと。期間は6日目まで。ウチの仲間が帰ってきたらの話やけど…、まぁ帰ってこんかった場合は関係ないか。とにかく向こう行きながら喋ろ。敵が来るで。」
十文字と宮藤は走って倭島のいる方向に向かう。
「…なんでこのタイミングで?さっき三国同盟を提案することもできたはず。」
倭島が尋ねる。
「あーまぁその時はそんな気はなかったんや。で今その気になった理由は…
命乞いや!」
「命乞い?」
「せや、流石にこれは勝たれへんからな!」
(確かに彼女からすれば、敵陣営に囲まれてる状況は絶体絶命。だから同盟を結んでワンチャン生き残りを狙うのは理に適ってる…の?普通に逃げた方がいい気もする。何より、『本気になればお前ら全員殺せるぜ』って感じのゆとりをこの女からは感じる…)
「で、どないすんねん?」
「どうする、十文字さん?正直彼女の態度は無謀そのもの。ハッタリだけで大きく出るとは思えない。これ程の何かしら奥の手があると思う。」
「…わかったよ、手を組もう。けど条件がある。まず、移動する時は私達の間に挟まること。そして、米沢とできる限り速やかに合流すること…。最後に、これが貴方の独断だったとしても同盟関係は維持してもらう。それでいい?」
(灯火ちゃんは悩んでるみたいだけど、先のことを考えればこれは利用できる。それに万が一他が同盟を組んでいたら、彼女の提案を蹴ることは大きなディスアドバンテージを生み出すことになるからね。)
「おおきに!あ、ウチは宮藤愛蘭。仲良くしてや!」
「じゃあこれからよろしくね!私は十文字莉杏!」
「どうすんだ?アイツら追うか?」
「…やめておきましょう。」
「驚きだな、お前なら『カミノテキシネー』って感じで追撃すると思ってたけど。」
「ここでは私の加護は生きません。」
「まぁそれもそうか、辺りはボロボロだしな。」
「焦ってはいけませんよ。これは『時間の問題』なのですから。」
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