第11話 『こーと・せっしょん!』

「…ここが北門か。いよいよダンジョンアタックするんだな…」

 出口がドアを開けようとするのを、渋谷は静止する。

「…待って。先に互いに契術の確認だけしておかない?」

「まぁ仕方ないか。僕の契術はやろうとしてることの成功確率を見ることができるってこと。例えばこのダンジョンアタックの成功確率は38%さ。索敵には使えるんじゃないかな?」

「そう。私の契術は自身の周囲に入った敵への自動迎撃。だから迂闊に攻撃しない方がいいと思うわ。」

「できないだろ俺の契術じゃ…」

 出口は今度こそドアを開ける。

 制服の人形が2体、ギョロリ、2人を向く。

「ギギ…侵入者…」

「排除…は…」

 ザンッ!ザシュッ!

 渋谷は一気に校内に入り込み、近づいて2体を斬り裂いた。

「人形にされると血もなくなるのね…」

「…それは反撃って言うのか?」

「近くにいる方が悪い。」

「あらそう…、でこっからどうする?」

「下の階は他が見てくれてるはず。私達は4階に直行しましょう。」








 嵯峨山は、初めて外敵の存在を確認した。

「チッ!もう凡愚共が来なさったか。一応このパターンは想定していたが…。」

「どういたしますか?退避は可能ですが。」

「寝言を言わないでくれるかい。前提条件としてここに限りは僕は負けることはない。それに外敵を鹵獲ろかくした時のメリットは遥かに大きい。」

「ということは…早くもあの二人を切るのですね。」

「その通り!敵が例え何人増えようとも、やることは変わらない。量と策で押し潰すだけさ。」

 嵯峨山は勝利を確信していた。

「それに僕は何があっても負けない…これは油断でも何でもない。ただの事実さ。」








「うし、着いた。音無、準備はいいか?」

「あぁ、問題ない。手筈通りやるぞ。」

 二人が門を飛び越える。

 超えた先はグラウンドになっていた。

「人形がいるが…まぁいいゴリ押せる。自分の身は自分で護れよ?」

 侵略者を見つけた無数の兵士達が、平達に襲いかかる。

「人海戦術にしてはお粗末だなぁ!」

 平の体がゴウゴウと燃え盛る。

「行くぞ!」

「うむ!」

 平が合図すると音無の体が印のついた石と入れ替わる。

 ボゥ!ゴゴゴゴゴ…!

 次の瞬間、平の体からとんでもない大きさの炎が放たれる。

 それは舞い踊り、闊歩し、すべてを焼き尽くしていく。

 ─火がようやく消えた時、辺りには灰と石しか残らなかった。

「戻っていいぞ〜!」

 平がそう言うと、石が消えて代わりに音無が戻る。

「凄いぞ!この火力なら人形遣いも楽に倒せるのではないか?」

「…いや、そうも上手くはいかないだろ。」

「なぜだ?」

「それは…来やがった。」

 平の前に一体の少年の人形が現れる。

 それは明らかに、服装や雰囲気は他の人形と違っていた。

「殺さなきゃ…殺…殺…コロコロコロコロホォ!」

 人形が奇声を発するとグラウンドの砂が巻き上げられる。

 それはやがて砂嵐となり、二人と一体を覆う。

「な、何!?眷属まで人形にしたのか!?」

「通りで成功率が低い訳だ。上等、音無日和ってるか?」

「日和ってない、行くぞ!」









「え、えっと…稲葉さん…だっけ?もう行って大丈夫?」

「準備万端。電光石火。」

 合理は稲葉に対してどう接すればいいか悩んでいた。

 合理たちは門を超えていく。

 やはり大量の人形が、彼らを狙ってやってきた。

 合理は銃と粘着弾を精製する。

「行くよ!」

 ダン!ダンッダン!

 足を狙って撃つ─が、半分程取り逃がす。

「しまった…!」

 合理が粘着弾をリロードしている間に、人形

「…汝、人に触れることを禁止する。」

 稲葉が呟いた瞬間、彼に触れた人形が次々と消えていく。

「─ありがとう。これは君の契術?」

「─肯定。制限過多。自他適用。」

「ってことは…僕達にも当てはまるのか。」

 稲葉はコクリとうなずく。

「じゃあ気をつけて進もう。」

 稲葉は再び頷いた。





 しばらく二人は順調に進んでいた。

「どうする?階段上る?」

「一階探索終了。二階急行推奨。」

「うん、わかった。」

 階段を上っていると、一体ツインテールの人形が現れた。

「ゴ…ゴゴ…御主人様…御主人様…」

 二人はこれまで通り気にせず進もうとする。

 ─が、あと僅かまで距離を詰めた時、人形が呟く。

「─開廷コート・セッション

「んっ!?」

「!?」

 その瞬間、二人は光に包まれて、意識を手放した─








 目を覚ますと、二人は机の前に立っていた。

 その机が何を意味していたか─自分達をすぐに囲う状況を見て理解した。

「法、廷…?」

 弁護士側席には誰もいず、検察官側席にはツインテールの人形が、そして裁判長席には赤い高貴な服を着た少女がいた。

 周囲の顔無し人間が、自分たちを見てざわついている。

 カンッ!カンッ!カンッ!

 少女がガペルを叩く。

「…静粛に!これより、被告人合理帝の裁判を始めます。」

「裁判って…!?」

「…意味不明。」

「無許可の発言は認められないわ。殊にこの私、ハートの女王の前ではね。まぁ私は寛大よ、一度の過ちなら看過してあげるわ。私が裁くのは救い難き罪人のみよ。」

 合理の顔が少し青ざめる。

「それでまず容疑の確認をするわ─




 被告人合理帝には、被害者姫路心を殺害した容疑がある。」

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