第6話 『てんぽらりー・あらいあんす!』

「手を組む…?」

 2人は怪訝な表情で平を見る。

「不戦条約。一時休戦。」

「要するに七日間も戦うわけだから、ほんの少しでも消耗は減らそうってことだよ。」

 稲葉の言葉に出口が付け足す。

「で、どうすんだ?あまりは待たないぞ。」

 2人は顔を見合わせて相談した。

「どうする?あっちは停戦協定を結ばなきゃ攻めてくるかもしれない。3人目もまだ見つかってない以上、停戦協定を結ぶべきだと思うけど…。」

「賛成、ここからの消耗は避けたい。」

「二人共物分かりがいいね!あ、俺の電話番号ねこれ。お前らのもくれよ。気に入らねぇヤツ一緒にボコろうぜ!」

 もしかしてこっちの方が本命だったんじゃないかと思いながら、合理は平に電話番号を渡した。

「ってかマモンとサタンは知り合いなんでしょ?めちゃくちゃ気まずそうだけど。」

 出口が二人を見て尋ねる。

「…昔色々あってな。」

「違うゲームでサタンにボコボコにされたんですよ…」

「どんなゲーム?」

「9つの文明を指導して潰し合わせるゲームをやっておりました。私のかわいい国民達を良くも…」

「あれは兵糧攻め対策しないお前が悪いぞ。」

「酷いゲームだな…」

 喋っている三人を見て合理がそろそろかと思い切り出す。

「あ、もう行かないと。眷属探しがまだ残ってるんだ。」

「お、そうか。こっちは始まってすぐ眷属が一人消えたからな…急いだ方がいいぞ。」

「それでは。行こう、渋谷さん。」

「了解。」

「じゃあなー!俺とやるまでは元気でいろよー!」

 2人は、傾く日の方へ歩いて行った。








「やばいやばいやばい…なんだよあのチート剣士…絶対勝てねぇっつーの!」

 武丸は逃げ切れたことには自信はあったが、今度は一人でいる恐怖に襲われていた。

 ─不意に、背後から誰かの視線を感じる。

(おい、もしかして敵に見つかったのか?嫌だァァァ…まだ童貞なのに死にたくねぇよぉぉぉ…!)

 逃げ出そうとしたその時─

「ようやくここにおられましたか!傲慢の眷属、我が兄弟よ!」

 武丸が振り返ると、視線の主がいた。

 緑がかった金髪にシスター服を着た女性だ。

「俺が傲慢って知ってるってことは…味方の魔王だぁぁぁぁぁ!!!!!やったぁぁぁぁぁ!!!!!」

「駆けつけるのが遅れて申し訳ありません、兄弟も倒れて…一人で辛かったでしょうに。しかし神の使いである私が来たからにはもう大丈夫です!好きなだけ、私の胸で泣いていいんですよ?」

 武丸は一瞬抱きつこうとしたが、水を差すように背の高い男が現れた。

「おいおい、急に走らないでくれよ〜。おじさんもう歳だからさ、追いつけないのよ。」

「…」

「ん、そこの若いのどうしたのよ?」

(人生初ハグはお預けか…親はノーカンで。)

「あ、俺は武丸仁王!契術はブラックホールを作れるんだぜ。凄いだろ?」

「素晴らしいです!神の使いにぴったりですね!」

 ちょくちょく『神』という単語が入るのは気になるが、目の前の女性が美人だったので武丸はどうでもよかった。

「おじさんは桐生凌駕。ま、仲良くしてよね〜。」

「私はジェシカ=ファナティカと申します。あ、そうです!ルシファー様、我らが兄弟にお導きを!」

 ジェシカがそう言うといかにも神々しい天使のような女が現れる。

 あまりにも眩い輝きに、思わず武丸は圧倒された。

「え?神様なの?」

「あーうん、そうだ。うん、神様だぞ。」

「ルシファー様は偉大なのですよ!この世界を悪魔達の侵攻から3度もお救いになられたのです!特に2回目は正に最終戦争、でした!」

「あー、あれは凄かったな。うん。」

 武丸は親友が悩んでいることにも気づかないほど鈍感だったが、流石にルシファーが困っていることには気づいた。

「まぁこんな子だけど、悪い子じゃないだろ?乳もデカいしな。」

「いや女子の前でそんなこと言っちゃダメだって!」

 武丸は小声で桐生を咎めたが、正直共感はしていた。

「とりあえず日が傾いてきていますので、今日は私の家で休みましょう。」

「おじさん賛成〜。武丸ちゃんは?」

「じゃあ俺もそれで。でもそんな簡単に男を家に入れて大丈夫なのか?」

「何を言ってるんですか?神の前では凡ての兄弟は平等なのです!そうですよね?」

「うん、そうだよ。そうそう。」

「じゃあ…泊まらせてもらうか。」

 三人はジェシカの家に向かっていった。








「じゃあ魔王の私が音頭を取ります!色欲メンバー全員集合を祝って!かんぱーい!」

 そう言ったのは露出度の高いセーターを来た赤毛の女性だ。

 カンッ!とグラスが接触し合う。

「ぷはぁーっ、上等なビールより缶ビールの方が旨いのってなんでだろうなぁ。」

 スキンヘッドで強面の男が楽しそうに言い放つ。

「え、えっと…その…」

「どした?言いたいことがあるならハッキリ言っとけ。」

「ひ、ひぃぃぃぃぃ!!!!!すいませぇぇぇん!!!!!」

 目隠れの女は怯えてリーダーの後ろに隠れる。

「呰見ぃ!スーパーウルトライケメンのMr.アスモデウスを見て落ち着き給え!」

「無理ですぅぅぅ!!!ごめんなさいぃぃぃ!!」

 男二人が呰見を宥めてる最中、スーパーで買った弁当を頬張りながら眼帯の女性がリーダーをせっついた。

「十文字さん…」

「うん、そうだね。まぁそろそろ全員でやっときたいことがあんだよねぇ。」

「お、なんだ?」

「な、なんでしょうか…」

「やはり作戦会議か?ふふっ、このハイパーパーフェク─」

「一発ヤらない?」

「「「え?」」」








 根岸は自分の家に珍しく、人を上げていた。

「なるほど、貴方が嫉妬の魔王でしたか。一人回収するのに一日かかるのも道理です。犬神瀞峡…確か大量殺人で指名手配中でしたね。」

 目の前の囚人服の男を見て言う。

「いいや、おかしいのは世界の方だ!なぜ悪人を殺しただけで逮捕されなくてはならない!跋扈ばっこする悪をのさばらせていることが犯罪の原因であろう!そのせいで、罪のない善人達が犠牲になるのだ!」

「ふむ、私は権力者達の怠慢であると認識していますな。死刑制度を採用しているにもかかわらず、あなたのような存在が指名手配されるなど。既存の権力者達は凡て消すべきであると考えておりますな。」

「つまり、権力者達は悪ということか!ならば天誅を下すべし!一人一殺、悪即殺!」

「えぇ、あなたとは実に気が合う…。まだまだこれからです。出遅れを取り戻していきましょう。ところで、貴方の悪魔はどちらに…?」

「あぁ、レヴィアタンならあっちの隅っこで縮こまってるよ。」

 根岸が見ると、紫色の龍の頭をした小人がそこにはいた。

「うぅ…しくしく…ずるいよぉ…みんな仲間集まって仲良くしてるんだろうなぁ…」

「…悪魔って、実際はこんな感─」

 根岸はふと何かに気づく。

 外を見ると、目の様な生物が飛んでいた。

「ゴロゴロ」

 見られたことに気づいたのか、『目』は慌てて逃げようとするも電撃に撃墜される。

「どうしたのだ、根岸殿?」

「…見られてましたね。」








「まだ動いてない陣営も多いでありますが…。結構な人達の能力が割れたであります。一機撃墜されましたが…。」

 隊服の女性が卯月太陽に告げる。

「ふむ、まだこのぐらいなら問題はない、焦らずにいけ。さて…もう寝ていいぞ。」

「よろしいでありますか?私はまだ─」

「しっかり睡眠を取れ。先は長いぞ?」

「了解であります、先生。」

 女性が下がって行った後、代わりにベリアルが出てくる。

「順調そうで何よりでございます。」

「油断のゆもできないけどね。けど…僕は勝つよ、争いの無い世界のために。」








「…今日で約200人か。」

 一日目が、終わる。

 残り 32人

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