bugs
ありづき
いつかの話
ビー。ビー。
赤く点滅する照明とともに、サイレンが建物中を響きわたる。
その中を、糸で体をぐるぐる巻きに拘束された大男と、それを引く黒い看守服を着た男が9と書かれた扉へ歩いていく。
「今日はなんだ?」
「異能の違法使用者だとさ」
「またか。まったくいつになっても懲りないなぁ」
ここは、世界最恐とされる刑務所【bugs】。
主に、常人では押さえつけることのできない異能使用者や【バグ】と言われる異形が収監される。
「それで?今回は誰が捕まえたんだ」
「それがさ、第9番の蜘蛛だとよ」
「あぁ。蜘蛛か」
ここでは、1〜10までの番号をつけられた看守がそれぞれ区域管理権を持ち、数多くの囚人たちを管理している。
そして、今回手柄をあげたのが看守第9番、通称【蜘蛛】。両手の指先から、強靱な蜘蛛の糸のように細い糸を出すことのできる異能を持つ、黒髪の褐色の男だ。
「あら。久しぶりのお手柄お疲れさまね」
看守たちの共同休憩所にて、収監を終えた蜘蛛に看守第4番、通称【蝶々】が煽り気味に話しかける。
「お前こそ、最近手柄が少ないと焦っていたようだが?蝶」
「ちっ。まあでも、私はこのままでも4番で安定。少なくともあなたのように落ちることはないわ」
パチンッ――。
「――っ!」
蜘蛛が袖の中で指を鳴らすと同時に、蝶の首に糸が一周する。
「ち、ちょっと煽られただけで手をあげるなんて、やっぱりあなたも焦っているじゃない」
焦りながら蝶々がそういうと、蜘蛛はばつが悪そうに大きく息をはいて指先の糸を切り、9番管理区に向かって行った。
bugs ありづき @ari-8-duki
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