第54話イーストポーン攻防戦前夜3

「強欲ですか...それは貴方たち人間の方ではないのですか?ティアナ・ローウェル」

「なに?」

グリードは手に持っていた本を閉じ本を置く、そして私の目を見る炎揺るその眼で私に問う

「一つ聞いておきましょう、シルキー、貴方にとって欲望の象徴とはなんですか?」

その問いを聞いた時私の中での答えは既に決まっていた。

私にとっての欲望の象徴それは「人間」だと。

「ほう...つづけて?」

グリードは興味深そうな声を漏らし、続きを催促する。

「理由は色々あるけど、人間である以上、ヒトは欲する事を辞めることはない。あれが欲しい、これが欲しい、満たされないからこそ全てを欲する」

私の答えを聞いた時、グリードは

「愚かだと思いませんか?魔族という明確な敵が居るのに、団結せず、協力どころか同じ人類で争ってばかりのニンゲンに失望しているのではないですか?」

....

「私の手を取りなさい。共に人間を根絶しこの星を救いましょう!」

「確かに....人間は愚かで他の種族を見下し、己の欲望を満たす為に家族すら犠牲にする。これ程愚かな種族は人間の他にいないでしょう。」









「でも」




「人間だからこそ、欲望を持ったからこそ、生み出された文化がある。知恵がある。営みがある。もちろん争うこともあるけれど、一歩一歩、着実にヒトは...人間は進化していく。」





「だから....私は貴方の手を取ることはできない。ヒトと共に生きていく事を決めた先祖の決断を否定することはない。それに...私自身が人類のことが好きだから...」



「シルキー....」

「ティアナさんやアルカお婆ちゃん、ラインハルトさんにウィリップさんも...みんないいヒトでした。だからこそ、ティアナさん達の事を裏切ることはできない」


「そうですか....残念です。貴方とは分かり合えると思っていたのですが....」



「グリード...私はお前とは分かり合えない、人間だからではなく、お前の思想が嫌いだからでもなく」

「ただ、私は人間の善性を信じたいから」


「.....ここは退くとしましょう」

「まて、逃すと思うか」

ティアナさんは腰の剣を抜き

「貴方に私は捕まえれませんよ...ではシルキー次は戦場で....お会いしましょう」



つづく

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