転生お蚕妖精、生産チートで頑張ります
赤ぬこ むぎ猫
第1話 まさかの異世界転生 西暦2018年8月5日正午
今日も明日も、俺...三津英司は、日課の蚕の世話をするはずだった。
会社員を辞め、家業である養蚕業を継いでから七年。若い頃より激しい運動が出来なくなったと感じる。
少し傾斜がかった土手の近くにある畑で、強い日差しを背中に浴びながら、桑の葉を刈り取っていく。太陽が傾いてその日差しが弱くなった頃、今日の分はある程度刈り終えた。
桑の葉を載せようと、乗ってきた中古の軽トラに戻ることにする。
家に帰ろうと踏み出そうとして、足を置いた斜面の土が崩れる。
昨日降った雨でぬかるんでいたためなのか、はたまた単に油断したのか、それは判らないが、英司は凄い勢いで滑り落ちた。
道のど真ん中に転げ落ちてしまったことに気づき直ぐに立ち上がろうとしたが、足を捻挫してしまったのか、思うように動けない。
もがいて何とか動こうとした時、強い衝撃があった。。
トラックだ。トラックに跳ねられたんだ。
そう感じる程度にはまだ意識があった。
それ故に、骨が折れる嫌な音とぐちゃりと肉が抉れる音を、はっきりと聞いた。
視界が暗くなっていく...
あぁもう死んでしまうんだな、と思いながら、俺は意識を手放した。
目を覚ますとお爺さんの前に立っていた
お爺さんは何と地球を管理する神様らしく
神様いるんだなぁと思っていたら
神様からこう提案された
「転生.....ですか。」
転生? 転生って小説家になろうぜ!で人気のあの転生?
「うむ、そうじゃ。」
「転生すると言ってもただ転生するわけではない。」
「お主が行く世界はいわゆるファンタジー世界という奴で、色んな種族がおる、例を挙げるならば妖精や獣人とかじゃな。」
「もちろん君みたいな人類、つまり人族もいるから安心せい。」
と神様は言う
「へぇ色んな種族がいるんですね」
「あぁそうじゃ、それでなぜ転生するかを説明するとお主が異世界に行く時になら魔力の補充ができるからじゃ」
神様曰くその世界では年々大気中の魔力の減少が起きているらしい
なお魔力の減少による影響は魔力を持った赤子の出生率の低下と魔法技術の衰退が挙げられるとか
ふむ、それは大問題。魔法が技術の根幹を成すなら尚更である。
「いわば、お主が転生することでわしに利があるのじゃ」
「こう言う場合は特典として希望した能力を持っていけるのだが、規則があって世界観を壊す特典はダメじゃ、前に一つの世界が滅んでしまったのでな」悲報、世界一個滅んでた
今回の場合だとファンタジー世界なので銃はダメだなと神様は言う(ただし、マスケット銃や魔力式の銃擬きは存在する模様。)
なるほど、確かに銃とファンタジーじゃ世界観に合ってないな。
というか滅んだ世界あるんだ。
慎重に選ばなくては.....
特典か....魔法か武術か....どれも俺には無縁だな
剣術とか魔法とかそんな知らないし扱える自信がない
俺の人生は色々忙しかったしな、なるべく楽に生きたい
例えるならうちで育てていた蚕みたいに誰かに依存する系の種族かなぁ
目指せ誰かのヒモとしてのスローライフ
「じゃあ、楽に生きることができる種族にしてください」
「えっ、それだけでいいのか?」
とキョトンとした表情で俺を見る
「え?」
もっと言っていいのか? 今言ったのじゃ少ないかな?
「もっとこう、世界一の冒険者になりたいとか勇者になりたいとかないのか?」
勇者ねぇ.....憧れるけどなぁどれも俺には荷が重い
もし失敗したらたたじゃ済まないだろうし
「無理、そんな勇気ないし扱える自信がないから」
剣を扱うことができてもそんなに戦いたいってわけではないですしね
「そうか、では楽に生きることができる種族に転生させてやろう」
そう言って神様は近くにあるパソコンの様な道具で転生する際に付与される設定。つまりはその世界での自分を創造していく。
入力を始めてから、数分、粗方入力し終わるとこちらの方へと振り向き、
「粗方出来上がったが他に欲しい設定はないか? 後一個なら追加することができるぞ?」
他に欲しいのかぁ......あるとするならば......あれだな
「じゃあ、いい縁があるようにしてください」
例えば運が上がるとかいい出会いがあるとか
「ふむそれならいいじゃろう、特典に加えておこう」
「ありがとうございます!」
「では、達者でな」
体が消えていく感覚を感じながら俺は気を失った。
次目覚めた時には異世界だろうそう思いながら。
こうして俺の順風満帆異世界生活が幕を開けた
はずだった
ガタガタと体が揺れる振動で目が覚める
目を開けると白い髪、白い肌の何かが見えるが他は何かを被せられていて見えない
ただガタガタ音がすることから舗装されてない道を歩いているのがわかる
あっ音が止まった
どさっと体が落とされた
ぐぇこいつ落としやがった
「ごめんなさい、私には貴方の存在は重すぎるの」
おい、まてや置いてくなよ
「さよなら」
のぉぉおおお!
くそぉ、まさかの異世界生活初日に捨てられるとは思っても見なかった
まずい、とてもまずいこのままでは捨て猫よろしく餓死してしまう
はやく拾い主を見つけなければ.....
と考えていると橋の向こうから
白い髪のお爺さんとお婆さんがこっちに歩いてくるのが見えた
優しそうな人だしあの人に拾ってもらうか?
「ばぁさんや、あの白い布の塊はなんじゃ?」
「なんでしょうねぇ? お爺さん」
おっ、気づいた
お婆さんは屈んで白い布を退けると四歳くらいの子供が一人布に包まっている。
「どれどれ....捨て子か」
「あらあら、可愛そうに、なぁ、お婆さん、この子をうちの子にするかのぉ」
ちょうど後継者も欲しいしなとお爺さんが言う
「いい考えねぇ、君は今日からうちの子よ」
こうして俺はこの老夫婦に拾われたのであった
つづく
{許されよ、許されよ 我らの罪を許されよ}
{罪を犯し、感謝を忘れ、今も争う愚かな子らよ}
{いつかの地、いつかの未来、かの王が目覚めるとき我らはその身をもって知るでしょう}
{大地も・・・空も・・・何もかも終わる頃に・・・}
記述 予言の言葉より
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