第1章 3話

 時が経つのは早いもので、あの日からもう半年が経とうとしている。


 あの後すぐに俺は、フィリアの友人である師匠―アレスに紹介され、弟子入りすることとなった。


 アレスは天界では闘神と呼ばれていて、こと戦闘においては、天界でも右に出るものはそういない程の実力者なのだそうだ。


 いや…まぁ、その強さはこの約半年間で、しごかれまくった俺が一番理解している事なのだが……。


 「それで…、今日の修行はどうだったの?」


 美少女フィリアがカップに紅茶を注ぎながらこちらに顔を向ける。


 「んー、今日は一本取れたよ」


 そう俺は、今日この約半年間に及ぶ修行の中で初めて、師匠から一本取ることができたのだ。


 「えっ、ホントに?」

 「ああ、本当だよ」


 この約半年間で、フィリアとの仲はかなり縮まったと言えるだろう。

 

 彼女とは修行の終わりによく、こうしてお茶をする。俺にとってフィリアは、初めての友達兼保護者ともいえる存在なので、俺はこの時間が結構かなり気に入っている。


 「そっかぁ。なら、もうすぐ最終試ね……」


 そう言って、彼女は紅茶の入ったカップを机に置いた。


 ……俺は師匠アレスのもとで、主に創神流そうしんりゅうという武術と魔力の使い方を学んでいた。創神流は神達が使う剣術や体術などの基礎となる流派で、全ての神達が最初に習うものだと教えてもらった。


 フィリアの言う最終試験の内容は、創神流を習った上で自分だけの技、秘剣ひけんを生み出すというものだ。


 これが出来なければ、創神流を会得えとくしたとは言えないらしい。


 そして俺は、この試験に合格すれば遂に異世界へと転生する事になるのだ……。


 俺はフィリアのれてくれた紅茶を飲みながら、試験の事について考えていた。


 するとそこへ、腰に一振りの剣を差したがたいのいい四十代半ばくらいの男性がこちらに向かって歩いてきた。


 ……といっても、容姿が四十代半ばに見えるだけで、実際のところは数百歳超えのお爺なんだよなぁ。まったく神様の躰はどうなっているんだか。


 ……はて、では今俺の目の前に座っているこの女神様の年はいったいいくつなのだろう?


 「――こほん」


 前方から聞こえよがしに淡く光る純白髪の女神様の咳払い。


 言外に込められた意味は『何、失礼なことを考えているのかしら?』怖い怖い。


 俺は紅茶を一口。うん、美味いな。


 「…ユウ、あとで訓練場に来てくれ。そこで最終試験を行う」


 おじい――もとい師匠にそう淡々と宣言され、俺は飲んでいた紅茶を吹きかける。危ない危ない。


 おいおい、マジかよ……。


 そのうちやることになるだろうと覚悟はしていたが、まさか今日だとは。

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