第34話


冒険者とは早い話が、モンスターを倒して金を稼ぐ職業のことだ。


冒険者ギルドという統括組織で冒険者登録を行い、クエストを受注して、モンスターと戦う。


収入は、クエストのクリア報酬と素材の換金代。


戦闘能力がフルに活かせる職業であり、現在の俺たちが手っ取り早く路銀を稼ぐには冒険者になるのが手っ取り早い。


大体そのようなことを俺は新田に説明した。


「わ、わかった…冒険者になってモンスターを倒せば、路銀がすぐに稼げるんだよね?」


「そういうことだ」


新田に冒険者がなんたるかを説明した俺は、すぐにギルドを目指して歩き始めた。



冒険者ギルドは、大抵その街の中心にある。


俺は都会に出てきた田舎者よろしく異世界の街並みに見惚れている新田を引き連れて、街の中心地へ向かって進んでいった。


「お…あったあった」


1時間ほど歩いたところで、見覚えのあるエンブレムを掲げた建物を発見。


あれが冒険者ギルドで間違いないだろう。


「あれが冒険者ギルド?」


新田が訪ねてくる。


「そうだ。あそこで冒険者として登録すれば、クエストを受注出来るようになる」


「そ、そっか…!」


「よし、行こうか」


俺は新田と共に両開きの扉を開けて、ギルドの中へと足を踏み入れた。


「おぉん?」


「あぁん?」


中へ入ってすぐのスペースは、酒場のようになっており、昼間っから飲んだくれていた冒険者が入ってきた俺たちに鋭い視線をよこす。


「ひっ!?」


新田が引きつった声を上げた。


「新田。目を合わせるな。絡まれると面倒だ」


「う、うん…っ」


立ちすくむ新田の手を取って、俺は冒険者たちの間を縫って歩くように進んで、奥にある受付を目指した。


幸いなことに、冒険者は俺たちに絡んでくることはなかった。


「おい見ろ…」「日本人だ…」「またかよ…」


ただ、彼らが俺たちを指差してひそひそ噂をしたり、時折『日本人』という単語が聞こえてきたのは気にはなったのだが…


「いらっしゃいませ。今日はどのようなご用件でしょうか」


受付スペースへ入ると、俺たちの姿を認めた受付嬢がにっこりと微笑んで軽くお辞儀をした。


「冒険者登録がしたい」


俺は簡潔にそう言った。


「かしこまりました…ではまずステータスを鑑定させていただきます」


そう言って受付嬢がステータス鑑定の水晶を出してきた。


「う…」


それを見た新田が、ちょっといやそうな顔をする。


「ん?新田…?どうかしたか?」


「あ、ううん…大したことじゃなくて…その、スキル鑑定を思い出しちゃって…」


「あぁ、そういうことか」


おそらく召喚直後にカテリーナに強制されたと言っていたスキル鑑定の時のことを思い出したのだろう。


「安心しろ、新田。これはスキルを鑑定するものじゃないし、何より新田は鑑定する必要がない」


「え…そうなの?」


「ああ。鑑定するのは俺だけだ」


「でもそれじゃあ、私が冒険者になれないんじゃ…」


「冒険者には一人につき一人まで助っ人をクエストに同行させることが出来るからな。冒険者になるのは俺だけでいいんだ」


「あ、そうなんだ」


新田がほっと安心したような顔になる。


一方で俺はステータス水晶に手を翳した。


パリン!!


「あっ」


直後、ステータス水晶が粉々に砕け散った。


「へ…?」


受付嬢がぽかんと口を開けて固まった。


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