第30話


ゴブリン・ウィザードを倒した後、俺は新田と共に森の中を進んでいく。


カナンの街はまだ遠く、今日中には辿り着けそうにもなかった。


一日、森の中で野宿をする必要があるだろう。


「ファイア・アロー」


「わっ!?」


というわけで、道中、俺は食料を確保しながら進むことにした。


火属性の初級魔法、ファイア・アローで見かけた小動物を狩っていく。


火属性に関してはすでに上級魔法を使えることがカテリーナに知られてしまっているだろうから、この程度の魔法を狩に使うのにはなんの問題もないだろう。


結局、日が暮れるまでに俺は十匹以上のうさぎや小鹿を狩ることに成功した。


「それ…どうするの…?」


「収納しておく。いい魔法があるんだ」


狩った小動物は、収納魔法という便利な魔法で亜空間に収納する。


この世界では商人なんかに愛用されている魔法で、荷物の持ち運びに便利だ。


「す、すごい…消えた…どこにいっちゃったの?」


「亜空間に収納してるんだ。随時取り出せるぞ」


不思議そうにしている新田に、俺は一度収納したうさぎを亜空間から取り出してみせた。


「…っ!?」


新田には、何もないところから突然うさぎの死体が飛び出したように見えたことだろう。


目を剥いて驚いていた。


そんなこんなで新田と森の中を進むうちに、やがて日が傾いてきた。


そろそろ野宿できる場所を探さなければと思っていた矢先、俺たちの前方に川が現れる。


「あっ…!!川だ…!」


新田が声をあげる。


「そういや水分補給していなかったな」


とある人の元で修行した時に、三十日間飲まず食わずだったこともあるため、俺は大して喉の渇きも感じていなかったが、しかし、新田にしてみれば朝召喚されてからずっと水分をとっていないのだから、さぞ喉が渇いていることだろう。


「一ノ瀬くん…私、喉が渇いた…」


「もちろんだ。飲みに行こう」


「うん…!」


嬉しげに駆け出す新田。


俺は周囲を警戒しながら、新田についていく。


「はぁ…っ、やっと水が飲める…っ」


新田が嬉しげに川の水を救って飲もうとする。


「あ、ちょっと待て、新田」


俺はそんな新田に待ったをかける。


「一応魔法で綺麗にしておこう。クリーン」


俺は新田が飲もうとしていた水に生活魔法であるクリーンを使った。


これで万一寄生虫などが水に潜んでいたとしても除去されただろう。


「ありがとう…!」


お礼を言った新田が、ようやくと言った顔で水に口をつける。


「ふぁあ…生き返る…」


そして私服の表情を浮かべた。


その後も新田が手にすくった水に俺はクリーンの魔法をかけてやり、新田は喉の渇きを完全に潤すことが出来たのだった。


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