第16話
「斎藤くん、本当にこの道で間違い無いんだね?」
「ああ、有馬くん。こっちであってるよ。僕のガイドスキルによると、この森の奥に水源があって、そこで水分補給が出来るらしいんだ」
「そうか…ありがとう」
呼び寄せたクラスメイト……ガイドスキル持ちの斎藤春樹に裕也はお礼を言った。
「うん…他に僕に出来ることがあったらなんでも言ってね、有馬くん」
「そうさせてもらうよ」
「じゃあ」
裕也が笑みを向けると、春樹は手を振って再びこの集団を先導するために前方へと歩いて行った。
裕也と春樹は、別にここにくる前から仲が良かったわけではなかった。
が、今の春樹には裕也の役に立てることが喜ばしいことであるかのような態度が見て取れた。
これこそが裕也のスキル『カリスマ』の威力だった。
自分に少しでも好意のあるものをほとんど洗脳状態にして操ることが出来る。
逆に言えば、元から裕也に対して少しも好意を持っていないものは操ることが出来ない。
裕也が恵美を思い通りに操れなかった理由がこれだった。
だから、裕也は洗脳の行き届いた他の生徒たちを使って恵美を孤立させ置き去りにした。
あれは単なる復讐というだけでなく、自分の思い通りにならない生徒はなるべく集団から排除しておきたかったというのもある。
「残るは…あいつだけだな…」
歩きながら、裕也は少し離れたところを歩いているある一人の女子生徒に目を向けた。
恵美のようにして、裕也の洗脳にかかっていない生徒がそこにいた。
名前は黒崎麗子。
学校一の美少女として、校内で1番有名だった生徒だ。
どこか近寄り難い雰囲気を身に纏っており、噂では富豪の父を持つお嬢様だとか。
そんな彼女は…どうやら恵美同様裕也の洗脳にはかかってないように見えた。
裕也にはなんとなく感覚で、自分のカリスマスキルが効いていない生徒を見分けることが出来た。
他の生徒に関しては、ほとんどが裕也の言葉に従い、支持を出されることを嬉しがるのだが、彼女だけは違った。
一応今のところ周囲に合わせて裕也に対して何か意を唱えるようなことはしないのだが、裕也は彼女が自分のカリスマのスキルで虜になっていないことをほとんど確信していた。
「厄介だな…さて、どう料理するか…」
恵美のようにこの集団から追い出しても良かった。
他の生徒は裕也の虜になっているのだから、孤立させるのは簡単だ。
けれど、恵美と違って麗子にはスキルがある。
それも、ただのスキルじゃない。
この先おそらく役に立つと予想される非常に強力なスキルだった。
「まぁ、いい…今は置いておいてやるか…」
少し考えて裕也は麗子を今のところは仲間として認めてやることにした。
そのうち利用するタイミングもあるだろう。
麗子とて、一人でこの世界を生き抜くことは不可能で、すぐさま反旗を翻してくることも考えにくい。
寝首をかかれないように充分注意を払いながら…管理して最大限に利用しよう。
「うわぁあああ!?」
「に、逃げろぉおお!!」
裕也がそんな方針を頭の中で決めたその時、集団の前方を歩いていた生徒たちが悲鳴のような声を上げた。
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