第5話
「うわっ!?」
「何これ!?」
「ドッキリ!?」
一人が声を上げたことで、教室にいたクラスメイトたちが次々その魔法陣に気がつき、声をあげる。
皆、突然浮かび上がった幾何学文様の構成されたサークルを、遠巻きに不思議そうに眺めている。
その間にも、最初は薄かった魔法陣は徐々にくっきりと存在感を増していき、やがて光を放ち始めた。
「うわ、光り始めた…」
「なんかやばそうじゃない…?」
「逃げた方がいいんじゃ…」
クラスメイトたちは危機感を覚えたのか、ちらほらとそういう呟きが恵美の元にも届いてくるが、しかし、興味の方がまさるのか、以前その場に止まって魔法陣を観察し続ける。
そうこうしているうちに、魔法陣から放たれる光はどんどん強くなり、あまりの眩しさに恵美は目を瞑った。
「うわっ、眩しいっ!!」
「何も見えない…!」
「何なのよこれ…!」
あちこちから悲鳴が上がる。
恵美は、何かが起こりそうな予感に体をぎゅっと縮めた。
直後、一瞬だけ浮遊感を感じたような気がした。
「…?」
ふと瞼の奥で光が止んだ気配がした。
恵美は恐る恐る目を開ける。
「え…」
そして絶句し、固まった。
いつの間にか、周囲の景色がどこともしれない森に変わっていたからだ。
「はぁあああああ!?何これ!?」
「夢!?」
「ちょっと意味わからないんだけど!?」
周囲には教室にいたクラスメイトたちの姿も確認できた。
皆恵美同様混乱しているようで、周りをキョロキョロと見回して叫び声を上げている。
「白昼夢…?」
恵美はあまりの展開に思わず頬をつねった。
ひょっとしてこれは自分だけが見ている夢なんじゃないか。
そう思ったからだ。
「いたっ」
しかし、頬から伝わってきたのはちゃんとした痛覚。
どうやら目の前の現象は夢ではないらしい。
「あっ…一ノ瀬くん…」
恵美はふと快斗のことを考えた。
ぐるぐると辺りを見渡す。
快斗は案外近い場所にいた。
恵美の真後ろで呑気にも寝こけていた。
「こ、こんな状況でも寝てるんだ…」
うつ伏せになっている快斗の寝顔は安らかだった。
恵美は、あまりに図太い神経に呆れるのを通り越してどこか感動さえ覚えた。
そんな中、不意に声が響き渡った。
「ようこそおいでくださいました、勇者様方…!その強大なお力でどうぞこの世界をお救いください…!」
それは透き通るようなずっと聴いていたくなる声だった。
全員がそちらの方を向く。
「うわ、綺麗…」
誰かがそう呟いた。
そこには、白いドレスに身を包んだ、見たこともないような美女が立っていた。
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