第4話
新田恵美は学年で2番目に可愛いと言われている女子生徒で、男子たちに人気があった。
今までに幾度となく告白されてきたが、恵美は異性を好きになるという感情があまりピンと来ずに全て断っていた。
そんな恵美に、気になる人物ができた。
隣の席の一ノ瀬快斗という生徒である。
快斗のことが気になり出したのは、快斗が恵美に対して全く興味を示さないことがきっかけだった。
これまでは隣の席になった大抵の男子が恵美に好意的に話しかけてきており、恵美はそのことをあまり快くは思っていなかった。
どうしても、その奥に隠された下心が見え隠れてしてしまうのだ。
まぁ、男女という関係である以上仕方ないことではあるのかもしれないが。
そんな中、一ノ瀬快斗という生徒は、隣の席になっても全く話しかけて来ず、恵美に興味を示していないように思われた。
いつも机に突っ伏して寝ているか、窓の外を見つめてぼんやりとしている。
仲のいい友達は一人もいないらしい。
不思議な雰囲気を持つ生徒だと恵美は思っていた。
また快斗には妙な噂があった。
それは、快斗があの有名な『クラス神隠し事件』の当事者だという噂だ。
『クラス神隠し事件』というのは、三年前、恵美が中学二年の頃に起こった事件であり、とある中学のクラスに所属する生徒たちが丸々いなくなってしまったという事件だった。
この事件は、ニュースで報道され瞬く間に全国に拡散され、ネットでも色々な考証がなされたが、結局原因もわからず未だ解決に至ってはいなかった。
そんなある意味伝説的な事件の当事者の一人が、快斗であるという噂がクラスには流れていた。
気味が悪い。
そう言ってクラスメイトたちはあまり快斗に近づこうとはしなかった。
そんな中、恵美は快斗に興味を持ってしまった。
何を考えて、どんな人生を歩んできたのだろうか。
学校にいない間は何をしているのだろうか。
こっそりと隣の席から快斗を眺めながら、恵美は毎日そんなことを考えていた。
話しかけようとも思ったが、恵美にはその勇気がなかった。
何を話していいかわからないし、拒絶されることを恐れたのだ。
快斗の学校での過ごし方は、言外に俺に話しかけるなと言っているようだった。
「あ、今日も寝てる…」
その日の朝も、恵美は隣の席の快斗を眺めていた。
快斗はいつものごとく机に突っ伏して寝ていた。
腕の間からわずかに安らかな寝顔が見えている。
「可愛い…」
声にならない声で恵美がボソリと呟いた、まさにその時だった。
「うわっ!?何だこれ…!?」
クラスメイトの一人が、地面を指さして声をあげた。
教室の床に、魔法陣のようなものが浮かび上がっていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます