短編59話 数ある剣士の踏み込み
帝王Tsuyamasama
短編59話 数ある剣士の踏み込み
「
剣道部の顧問である
……すまん。
(あーつい今日も道城を見てしまったぜ。横に並んでるし間に何人もいるからはっきりとは見えなかったけどさ。寝てるときはあんな顔してるってことだよな。よく見えなかったけどさ)
あ、黙想ってのは
正座をして、右手の甲を脚の上に。その上に左手の甲を乗せて、親指同士輪っか作って……あぁ大仏様のあのポーズだな、うん。
この武道場は、半分が板の間、もう半分に
(きっと道城が柔道部だったとしても、チラ見していただろうなうんうん)
武道場のすぐ後ろには木が植えられているので、風が吹けばサァーッと葉っぱたちの音が聞こえてきて、心が静かになるかと思いきや、今日も道城道城道城と頭を巡らせていた俺、古樫定雪であった。
「
差川先生の声が再び武道場に響き渡ると、俺たち剣道部員……ぁあ柔道部員もそうだったな。は、一斉に目を開けた。
…………すまん。約一名はやっぱり速攻で目を開けて、道城優歌の目が開かれていく瞬間を、見ようとしていました。結局あんま見えなかったけどさ。
「古樫」
「うぉ?!」
「
「ぉあぁ
「
「さ、さんきゅ。あ、こっちの小手持っててくれ」
解けてない方の紺色小手と、『古樫』の名が(自分の手書きのマジックで)刻まれた竹刀を、道城に持ってもらい……いやぁね? 武道やってんのに心動きまくりやん、っていうツッコミは、至極ごもっともだとは思う。だがちょっと待ってくれ。
道城優歌というのは、身長は男子である俺と同じくらいだから、女子の中では高い方。キリッとしたお顔。髪は肩にかかるくらい(剣道してるときは結んで面の中に収められている)。当然のように姿勢はピシッとよく。
声もこんな感じでハキッ。
それでいて剣道の強さも、部員がそんなに多くないながらも
これで小学校から今もずっと仲良くしてくれているんだぜ?
(ほれるやん? 普通)
剣道って、
(でもその目にほれてるんスよ)
あぁちなみに部員はそんなに多くないから、男子と女子は一緒に活動しているぞ。
この前の夏の大会で三年生は引退したから、一年生四人・二年生六人、合計十人とさらに少なく感じる。男女合わせてだぞっ?
柔道部にいたっては男子八人しかいない。くっ。我が国民は武士の魂を忘れてしまったというのかっ!!
(はいすいません黙想中に道城優歌のことばっか考えてた武士の魂のかけらもない人ここです)
黙想は練習開始前と終了後にそれぞれ行う。もちろんどっちも道城優歌のこと考えてました。
「くっ、
なんで小手はあんな薄っぺらいんだよ! 面とか
(まぁ面も正面はガッチガチでも実際は真上の薄っぺらいとこ狙われるんだけどよぉ!)
先生にぶちまけたら間違いなく怒られるであろう心の声はぐっと抑えつつ、今日の練習を終えて、武道場の横にある更衣室で学生服に着替えを済ませて、後は帰るだけ。
右手の手首付近をちらちら見ながら、校門へ向かってゆっくり歩いていた。赤くなってやがる。
剣道部員や柔道部員のじゃーなーあばよーしゃらばーいなどを聞きつつ&返事しつつ、俺は追い抜かれまくっていた。
道城は更衣室の前にて、女子部員同士でしゃべっていた。
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