妹はシスコンである
19時20分。
家のドアの前へとやってきて、腕時計で現在時刻を一応と確認した。
ポケットのスマホは、観念したかのように震えが収まっていた。
結構、家に着くの遅れちゃったな。
……ま、いいっか。
晩御飯ぽっきりくらいの時間だし。
と、適当に頭の中で納得し、私はドアを開ける。
「お
と同時に、私に飛び込んでくるちっこいやつ。
「うげっ。……た、たっだまー、
我が妹め。
疲弊した私を、更に疲れさせようというのか。
首からぶら下がるのをやめてくれ。
ちっこいゆうても、楓花は高一だ。
流石、高一のパワーと言ったところか。
骨が折れそうだ。
「ぎ、ぎぶ。手、離して。死ぬ……」
「おっけー」
しかし、今日は部活は休みなのだろうか。
……確かに、今日はいつもの様に正門で待っていなかったし……言われてみれば、いつも相談部にいる時に聞こえてくる吹奏楽の音も聞こえなかった気がする。
「お姉! 遅かったね! いつから私がここで待っていたと思ってるのー?」
「五分前くらいからかな?」
「ぶっぶー! 三十分前からでーす!」
「楓花さ〜。いつも言ってるけど、いい加減シスコン卒業したら? 彼氏でも作りなよ」
これは最近の悩みの一つでもある。
私の高校に付いてこさせたのが間違いだったのだろうか。
学校くらいは別々の方が良かったのだろう。
なぜなら。
登下校はとりあえず毎日引っ付いてきてて、結構周りから奇異な目で見られてしまうのだ。
おてても繋いじゃっているのだ。
休み時間にも、私のクラスに凸って来て、私の安らかな睡眠を妨げてくるし。
のくせに友達は沢山いるらしいし。
一年の頃の私よりも成績いいし。
……何この格差社会。
姉より優れた妹など、この世に存在しないはずなのに。
なんでっ!
「いやでーす。私はお姉一筋でーす。……というか彼氏も何も、女子校だし。……あれ? なんか顔色悪い?」
「あぁ。いや。さっきの首を掴まれた反動で……」
「あーごめんごめん」
あんま申し訳そうにしていない感じに、両手をすりすりと擦っている。
だけれど、どこか恨めない。
これが妹の力か。
「あ、そういえばさ!」
と、不意に、擦り合わせた両手をちょい離し。
今度は、何かを思い出した様にパチンと叩いた。
「どしたの?」
「お姉ってさ、『相談部』っていう、なんかまじで訳の分からなくて不気味な部活の部長をしてるんでしょ?」
「なんか余計なのが付いてた気がするけど……まぁ、そうだね」
「おぉ。最近さー、私の一番仲のいい友達が悩んでるっぽくてさ。明日、その子の相談に乗ってやってくれない?」
「あー全然いいよ。暇だし」
明日は天崎さんも来ないだろうしね。
「やったー! お姉、ありがと!」
「どいたまどいたま。……あ、その子の名前だけ教えてよ。名前は分かってた方がいいからね」
「あ、えっとねー。
どういう漢字を書くのか知らないけど、なんだか美味しそうな名前である。
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