成功し続けるために
シヨゥ
第1話
「よし。今日も順調にPV数が増えているな」
彼は今日も日課としているアクセス解析を眺めている。鳴かず飛ばずだった彼のオリジナル小説サイト。それがここのところヒットを飛ばしたようで順調にPV数を伸ばしているとのことだ。
「なんかコツでもつかんだの?」
そう問いかけると、
「そうだと思う」
と返ってくる。
「やっぱりみんなが面白いと思う話の構成があるんだよ。テッパンってやつ。それに気づいちゃったみたい」
「なるほどなるほど」
「これでプロット作成がだいぶ楽になる。この構成を使いまわして話を盛り上げていけば小説家デビューも夢じゃない」
PV数が異様な伸びを見せていることで天狗になっているようだ。だから水を差すようで悪いけれども、
「本当にそれでいいの?」
と問いかける。
「なんでそんな質問をするんだよ?」
もちろん彼は気分が良くない。食って掛かるような言い方をしてくる。それでも彼のため。怯むわけにはいかない。
「成功したからこそ、守りに入らずに改良点を探すべきじゃないかな?」
「せっかく手堅いやり方を見つけたのに?」
「そう。だって同じ話の展開を見せられたらさすがに読者のみんなが飽きちゃうよ。そうなってから試行錯誤していたらまた元に戻ってしまうんじゃないかな?」
「それは、そうかもしれないけど。今はこの方法をしっかりと運用していくのが重要だと思うんだ」
「成功ってね。その時にしかないんだよ」
守りに入ろうとする彼にそう語りかける。
「成功するパターンが分かれば真似される。真似されれば似た作品が溢れかえる。その時、君は独自性を維持できるのかな?」
その問いかけに彼は答えられそうにもない。
「君は賢いから私の言っていること、理解できるよね?」
「……分かったよ」
不貞腐れた感もあるが理解はしてくれたようだ。
「PV数が伸びだした頃の作品から徹底的に読み返してみる」
「頑張って」
彼はまたパソコンにかじりつく。自分が書いた作品の粗探しというのは相当辛いようで顔がみるみる青くなっていく。それでも何かを感じ取ってメモを取っているのだからまだ伸びしろがありそうだ。
そんな彼の頑張りに報いるためにもこちらも宣伝広告で盛り上げようじゃないか。PV数が増えた陰に私がいる。このことはまだまだ彼には気づかれないだろう。
成功し続けるために シヨゥ @Shiyoxu
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