俺だけ最強というのも案外悪くない
@サブまる
第1話
「昨日のニュース見たか?」
「みたみた。まるで、ゲームだよな」
月曜日の朝。
通例どおりなら死んだような目をして教室に入るクラスメイトたちが、やけに会話に花を咲かせていた。
まぁ、あんなことがあって興奮しないわけがない。
クラスでは目立たない存在の俺が、もはや空気と化している。
「お前のステータス教えてくれよ」
「びびるぞ」
俺の席の前で話していた男二人が、耳元でステータスを教え合う。
チビの方が、総合値13で、ガリノッポの方が17らしい。
『ステータス』という言葉、普段ならこのビジュアルからも女子生徒に嫌悪されるような会話だが、昨日からそれが変わってしまった。
聞きづらかったらしいが、この男たちがその言葉を出したのを皮切りに、クラス中がステータスの話になった。
おそらく、昨日のニュースを見てその『ステータス』というものの存在に気づいた人間が大多数だろう。
俺もその一人だった。随分と驚いたものだ。
この、今のところは個人の特性や能力を示すと考えられている『ステータス』。
これにより世界の構造が大きく変わると専門家? たちが言っていたが、実際はそういう事にはならないらしい。
理由は単純で、ステータスは本人しか確認できないらしいからだ。
「お前、見かけによらずだな」
「まあな!」
まぁ、このように、自己申告制で、せいぜいマウントを取るくらいにしか使えない。
こいつらの会話を見れば分かる通り、その申告に信憑性などかけらもない。
デブの方が8で、ガリノッポが6。
どちらもかなり盛っている。
「にしても、すげーよな。ボクシングの全階級チャンピオン自分のステータス公表したらしいぜ」
「これだろ? 300越えとか人間じゃねえよな」
前人未到の全階級制覇とかいう、人間離れした記録を残したメイ・ウェルザーのことだろう。
二人の会話に聞き耳を立てていると、背後から声が聞こえた。
「
「おはよう、元気だな」
「あれ? もしかして昨日のニュース見てない?」
顔は普通だが、色白でスタイルが良く、可愛らしい声と愛嬌で男子からの人気も高い。
「いや見たよ。正直驚いてる」
そして、
「お、お前、ステータスどうなんだよ?」
「へ、へへ。あんま高くないんだろ!」
カズアがそばに来ると、必ず男子が誰かしら話しかけてくる。
「2」
「ぷっ! あははは! 2?! 弱すぎるだろー!」
「だなだな!!」
恥ずかしげも無く盛りまくるお前らがいうな。
ちなみに、俺自身、このステータスには驚いている。
ーーーーーーーーーー
総合値:25
武力:5
耐久:5
??:5
俊敏:5
運 :5
ーーーーーーーーーー
おそらく、これは一般人ではかなり高い方だ。
「言いたいことはそれだけか?」
「ちょっとお、ヨウくん、冷たいよ? そんなんだからインキャ扱いされるんだよー」
ほっとけよ。
「ゆ、唯川さんはどうなんですか!?」
「えーナイショだからね。5だよ!」
こいつらに便乗して、カズアのステータスでも覗くか。
ーーーーーーーーーー
総合値:38
武力:3
耐久:6
??:20
俊敏:8
運 :1
ーーーーーーーーーー
………?!
「あはは、こいつよりも高いじゃないですかぁ……」
「だ、だなぁ……」
ちょっと待て。総合値38だと!?
放課後。家まで帰る道。
「ねえねえヨウくん、なんで嘘ついたの?」
「え? お前もしかして、」
「うん! みえ、」
慌ててカズアの口を押さえた。そして、人が周りにいないのを確認して、小声で話す。
「それ、誰かに言ったか?」
「ううん。パパとママ今いないし、私もそこまで馬鹿じゃないからね! 見えることがみんなに知られたら、大変なことになるのは分かるよ! でも、ちょっと我慢するの大変だった」
よかった。
「お前も嘘ついただろ」
「うーん、だってクラスのみんなのみた感じ、10以上なんていなかったもん。そこで私が本当のこと言ったって、嘘だと思われるか騒ぎになるかのどっちかじゃん?」
この女は意外に計算高い。ただ、その計算高さを人を貶めることに使ったことは、俺の知る限りない。素直にこいつの性格がいいからだろう。
「てことはてことは! これって二人だけの秘密ってことだよね!?」
「ん? ああ、まぁそうなるな」
何をはしゃいでいるのかわからんが。
「どこまで覗けるんだ?」
「どこまで? 自分で見れるステータスと同じ、五つの項目と、総合値だけだけど。他にもあるの?」
「いや、」
つまり、まだバレてないってわけだ。
おそらく俺だけに存在するこの項目。
ーーーーーーーーーー
総合値:25
武力:5
耐久:5
??:5
俊敏:5
運 :5
***********
潜在:100000
ーーーーーーーーーー
この、『潜在:100000』という、項目が。
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