彼女ガチャで今まで引いたNTR(ネトラレア)が、大学生活でDSR(ダイスキレア)になって返ってきたんだけど。

冷涼富貴

心機一転、運気一転……とはならなかった

 親ガチャ、子ガチャ、職場ガチャ。


 ガチャにもいろいろあるけれど、もし彼女ガチャなるもんがあるとすれば、俺くらいヒキ弱も珍しいだろう。なんせNTRネトラレアばかり引いてたからな。


 例えば、小学生時代に好きだった木村愛莉きむらあいりちゃん。とっても仲が良くって、愛莉ちゃんも多分意識してくれてた。

 だが小学生の分際で告白は割とハードルが高かったので、中学生になったら好きだと告ろう、なんて悠長に構えていたら。


 中学生になって早々に、近所のドラッグストアで悪ぶったオナチューの先輩と一緒に腕を組みながらスキンを買っている愛莉ちゃんを発見し、俺は帰宅後、一人布団の中で泣きくれるという甘酸っぱい思い出を心に刻むこととなる。ま、甘味1に対して酸味9くらいなのは明らかだけどな。


 オナチューなのにスキン必要なんかこのボケがぁ!!


 これは正確にはNTRネトラレアじゃなくてBSSRボクサキスキレアのような気がするけど、こまけえこたぁいいんだよ。


 そうしてしばらく時間をかけて、愛莉ちゃんのことは吹っ切り。

 次の彼女ガチャNTRネトラレアは、中学二年の時同じクラスで隣の席だった暮林美衣くればやしみいちゃん。

 愛莉ちゃんの一件で懲りていた俺は、誰かにとられる前にと、勢いで美衣ちゃんに告白して無事成功し、いちおう彼氏彼女となった。


 だが。

 美衣ちゃんには幼なじみの男がいて、その男がなかなか振り向いてくれないから、って半分あきらめた状態で俺の告白をOKしたらしく。

 その幼なじみの男がご丁寧にディレイをかけて美衣ちゃんに迫ってきやがったせいで、あっさり美衣ちゃんに乗り換えられた。

 美衣ちゃんが俺と付き合いだしたことを知り、幼なじみの男は美衣ちゃんが惜しく感じられたらしい。


 ちなみに美衣ちゃんは幼なじみの男に迫られ、その時は俺とまだ付き合っていたにもかかわらず、あっさり最後まで身体を許してしまったとのこと。

 泣いて謝られて結局破局を迎えたが、もうはらわたと俺の分身が煮えくり返るような思いだった。いつかのために、と恥ずかしさを我慢しながらゴム製品を購入して財布に忍ばせていた俺の純情を返せ。


 そうしてしばらく女性不信になったが。

 周りが春真っ盛り、いや性欲真っ盛りとなっていた高校生時代は、さすがに童貞を未練たらしく守るのもむなしくなり。

 好きになれそうな人を精力的に探して回ったもんだった。


 そこで現れたNTRネトラレアは、ちょっと一匹狼入っててギャルっぽかった、小島亜希こじまあきちゃん。

 彼女は屋上でいつも一人でたそがれていた。俺がいろいろと疲れて屋上で休んでいるときに知り合い、苦労はしたが何とか仲良くなり、やがていい子だと分かり、三度目の恋に落ちる。


 だが、彼女の家庭は複雑で。

 実は知り合った時すでに、亜希ちゃんは義理の兄と身体の関係にあった。

 許されないことと知りつつもその関係から抜け出せなかった亜希ちゃんは、俺の告白を受けたのを機に義理の兄との関係を断ち切ろう、と思ったらしいが。

 同じ家で暮らしてるんだもんな、俺と付き合い始めてからも義理の兄のことを忘れられず、結局また身体の関係を持ち始めてしまったらしい。


 俺といるときはいつもクールだった亜希ちゃんが、涙ながらに義理の兄を選び俺に別れを告げてきたシーンは、一番記憶に新しいせいか、今でもたまに夢に出てきて鬱になる。


 だが!

 俺は不死鳥の如くよみがえる男だ! というか童貞のまま死ねるか!


 だって大学生活だよ、大学生。

 親のすねをかじりながら、大人の遊びができる夢のような時代だ。

 ならばこんどこそ、と少しくらい夢見たって許されるだろ?


 ──そう思って、気合入れてたっかーいスーツをきて、入学式にきたっつーのに。


 なんで同じ大学の、同じ経済学部に。


「ゆうたくん? 久しぶり! 同じ大学だったんだー! わたしのこと覚えてる?」


 六年ほどまともに話してなかった、木村愛莉ちゃんと。


「あ……、雄太くん……? 中学卒業以来だね……げ、元気だった?」


 中学時代に別れてからまともに顔すら合わせてなかった、暮林美衣ちゃんと。


「……う、うそ……なんでここに、雄太がいるの……」


 記憶に新しい地獄を俺に見せてくれた、小島亜希ちゃんが。


 揃いも揃って、いるんだよ!!


 血の涙出てくるぞこの野郎!!

 おい、この世にもしも神がいるんだとしたら、どんな嫌がらせなんだ、これは!! 偶然にしては出来杉ひでとしだろうが!!

 俺は彼女ガチャどころか、人生ガチャの神にここまで嫌われてるっていうんかい!!


 てなわけで、俺はその日、帰宅してから退学届を書いた。

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