第5話 借金 5080万8305ゴル
「はっ!?」
そこで目が覚めた。
「夢か…。
それにしてはやけにリアルな夢だったな…。」
蹴られたところが痛むような錯覚を起こすくらい、リアルな夢だった。
「はぁ。
寝てる時くらいゆっくりしたいよ…。」
それから数日後、宿や飲食店のゴミ箱を漁り、なんとか飢えを凌いでいたニクラスは、バルドゥルたちに受けた傷がよくなってきたため薬草採集に行くことにした。
モンスターに遭遇していないだけまだいいが、やはり成果は思わしくない。
それでも貴重な収入。
(今日はあいつらに見つからないように気をつけなきゃ…。)
ニクラスは建物の物陰から辺りを見渡し、<不吉な狂人>たちがいないことを確認しながら目立たないように移動していた。
(よし、大丈夫そうだな…。)
物陰から物陰へと移動する。
その時、うっかり報奨金の硬貨を落としてしまった。
コロコロと転がり見えなくなる硬貨。
急いで拾いに行くニクラス。
転がっていった方に行くが、なかなか見つからない。
ふと側溝を覗くと、泥だらけの溝の中に硬貨が落ちていた。
(ん…?
なんだか昔同じことしたような感じがするな。
デジャブっていうんだっけ、こういうの)
ニクラスは蓋を持ち上げ、硬貨を拾い上げる。
(よかった…!)
そう思ったのも束の間、恐れていた事態が起こる。
「そんなとこで何してるのかな〜??」
(…最悪だ…。)
ニクラスは振り返らずに走って逃げようとするが、あっという間に囲まれる。
「ちょっと待ちなさいよ〜。
困ってそうだから助けてあげようと思ったのに〜。」
【魔法使い】のゾーニャがニクラスの肩に手をかける。
「何か落とし物したのね〜。
グレイグ、探すの手伝ってあげたら〜?」
「そうだなぁ!
見つけやすいように手伝ってやる、よ!」
グレイグはニクラスの身体の自由を奪い、顔面を溝の中に突っ込む。
「ぐ…は……っ…、…ぶはぁっ…!」
抵抗できないニクラスは何度も何度も溝の中に顔を突っ込まれる。
「手伝ってあげて親切ね〜。
でもお礼はいただかないとね〜。」
ゾーニャはニクラスの腰袋から報奨金を奪い取る。
「また500ゴル〜?
もうちょっと頑張りなさいよ〜。」
「ガハハハ!
違いねえ!
まあ全然足りねえが、せっかくだからもらっといてやるよ!
じゃあ…、なっ!」
バルドゥルに蹴り飛ばされるニクラス。
<不吉な狂人>が笑いながら立ち去っていく。
(同じだ。
何日か前にみた夢と全く同じだった…。
でも…、それがなんなんだ…。
嫌な思いを2回しただけじゃないか…。)
その夜、ニクラスは前回暴行を受けた日と同じ様に、自分の無力さに強い悔しさを覚えながら、そして暴行された時のことを何度も頭で思い返しながら眠りについた。
すると、またバルドゥルたちに襲われる夢。
前回よりも鮮明な気がする。
バルドゥルが今まで持っていなかった新しい剣を鞘から抜く。
まさか…。
流石にそこまでするはずはない、と思っていたニクラスの腕は、バルドゥルの剣により胴体から離れてあっさりと地に落ちた。
「あああああぁっ!!」
激痛に悶えるニクラス。
その傍でバルドゥルたちが何やら談笑している。
ニクラスの意識が遠のき、途絶えそうになる…。
「はっ!!」
思わず飛び起きたニクラスの全身は汗びっしょりだ。
「はぁっ…、はぁっ…。」
(これは…、ただの夢とは思えない…。
もし、これが現実になったら…。
恐らく僕は…、死ぬ。)
ニクラスはこの未来を避ける方法を考えた。
(衛兵に助けてもらう?
いや、今まで暴行を受けているときも見て見ぬふりで助けてくれなかった。
火事の件も動いてくれなかったし、相談しても絶対に助けてくれない。
逃げるか?
といっても遠くに逃げるにはお金がいる。
お金はないし、離れた場所へ行くだけの強さもない。
隠れる場所も…、ない。
この街の人は全員【よた野郎】の僕の敵だ。
きっとバレるし、隠れ続けていたら餓死してしまう。)
いくら考えても回避する方法が思いつかない。
(もしかしてこれが【予知者】の能力なのか?
だとしたら、全然役に立たないじゃないか!
予知できても、金も力もない奴は結局踏み躙られて終わりなんだ!)
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