第6話 ブラッドとの距離
夜会があった翌朝 、
私はブラッドを探した 。
「ブラッドー!ブラッドー」
朝食後はいつも父様の仕事のお手伝いで 書斎にいるはずのブラッドが見当たらない 。
キャロルと庭園でお茶でもしてるのかな・・・・・・
いつもはキャロルを避けていた私なんだけど、 キャロルが横にいてもかまわない。
今はブラッドに この3年間の事を謝りたい 。
8歳で1人でブランジュ家にやって来て、 本当に心細かったと思うのに 私は少しも優しくなかった。
今は私以外の人達がブラッドに優しくしてくれているが、 この先きっとブラッドは裏切られる。
だったら私だけでもブラッドの味方でいよう! ブラッドがこの家を無事継げるように尽力しよう !
その横には父様もいれるように・・・・
頑張ろう・・・・。
がんばれ私! 庭園の奥に進むとブラッドが1人でいた!
「ブラッドー!」
ブラッドは思いがけない声に少し驚いている 。
「・・・・オリヴィア?」
それはそうだ!私はここ最近ブラッドの名前を呼ぶことがなかったのだから、 ブラッドは緑色の綺麗な瞳で私を不思議そうに見つめる。
・・・・ うっ
・・・・ ブラッドのイケメンに一瞬めまいが・・・・っ
まともにブラッドを正面からみるのはいつぶりだろう、
「今はキャロルと一緒ではないの?」
いつもは一緒にいるキャロルがそばにいなかったから何気なく質問すると 、ブラッドは少し瞳を曇らせて 、
「いつもキャロルと一緒ではないよ・・・それよりオリヴィアはどうしたの?」
「あっ!今日はブラッドに謝りたくて!」
「え?何かしたの?」
ブラッドは驚き私の顔をのぞきこむ 。
「今まで冷たくしてごめんなさい!私も大人にならなくちゃって思って・・・・」
「オリヴィア・・・・婚約したの?昨日王子様に見初められたの?」
急な私の意味不明な謝罪にブラッドが驚いて昨日何かあったのかと心配する。
「違う!違う!そうじゃなくて!王子様とか関係ないから!」
「そうなの?僕はオリヴィアに謝ってもらうような事はされてないから気にしないで。」
ブラッドは恐る恐る私の手をそっと握ってくれた 。
私が嫌がる事なく握られた手を握り返すと 、ブラッドは少し顔を赤らめて柔らかく微笑んでくれた。
ブラッドは私より2つも年下だけど私と身長はそんなに変わらないし、精神年齢は私より上かもしれない。
私は自分の幼さに恥ずかしくなりブラッドから視線を外す。
「オリヴィア?・・・・僕は幸せだよ!みんな僕に優しくしてくれるしこの家に来て良かったよ」
その言葉に私は顔を上げた!
・・・・・・・・・・・・この後地獄に落とされるんだってばー!
そんな事言えないけど
「オリヴィアと話せて嬉しいよ」
とブラッドは私が今まで見たことない最高の笑顔を見せてくれた イケメンの笑顔に私は顔を真っ赤にしてしまった。
んー!この笑顔凶器だよ!心臓止まりそう・・・・ 。
「オリヴィア顔赤いけど大丈夫?熱があるの?昨日からやっぱり具合悪いんじゃないの?」
心から心配してくれるブラッドはそっと私の頬に触れ、私の顔をのぞきこんでくる。
近い!近い!ブラッドの顔が近い!逆に体が硬直して動けなくなる。
「オリヴィア・・・・やっぱり何か雰囲気が違うね昨日やっぱり何かいいことあったの?」
ブラッドは少し複雑な顔をしてたずねてきた 。
「ない!ない!ないから!」
私があわてて大きな声で否定すると、 ブラッドは笑いをこらえて片手で口元を隠す 。
少しバカにされた気がした私は頬を膨らませて 「ブラッドー!」と言うが、真っ赤な顔は威厳がなく 、ただただ13歳のかわいいすね方だ。
3年間の溝が嘘のように埋まっていく気がした 。
ブラッドは優しく私の頭をポンポンと軽く撫でて家に入ろうと、私の手を再び握った 。
手をつないだまま歩き出す私は手を振りほどかなかった・・・。
ブラッドは赤くなっていく自分の顔を隠すように逆の腕で顔をかくした。
私は下を向いていたからブラッドの顔は見ていない 。
「ブラッド優しくしてくれてありがとう・・・・」
ブラッドに聞こえるか聞こえるないかの声だったけど 、ブラッドは繋いでいる手をぎゅっと力を少し入れて握ってくれた。
その優しい手に泣きそうになる。
やっぱりブラッドはこんなにも優しい男の子なんだ・・・・・。
『ブラッドの未来が明るいものでありますように』
心から私は願った・・・
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