義妹と同居を始めたら、何故か元カノがかまってくる
川田戯曲
プロローグ
恋というのはとても素敵なものだと謡ってるドラマや小説がこの世には蔓延っているけれど、あれが嘘だと気づいたのは、俺の彼女に浮気をされた高校三年生の冬だった。
その日、俺の彼女は同級生くらいの男子と、仲睦まじげに二人で歩いていた。
この話を聞いて、なんだそれだけか、そんなの浮気のうちに入らないだろう、と思われる方もいるかもしれない。実際、それを目撃した時の俺も、当然面白くない気持ちにはなったものの、それを浮気だとは思わなかった。
けれど、それについて彼女を問い質したら、彼女はこう言ったのだ。
「したよ、浮気。だって、あんたが構ってくんないのがいけないんじゃん」
こうして俺は、高校卒業を控えた一月中ば。
交際相手に浮気をされるという形で、失恋した。
そして、気づいたのだ――恋愛っていうのは、ごく限られた人間しか本物を掴めない、クソみたいに分の悪いギャンブルだということに。
きっと、心から大好きな相手と一緒になって、おじいちゃんおばあちゃんになるまで一生寄り添い合って――という、おとぎ話みたいに素敵な恋を成し遂げたカップルも、この世のどっかにはいるんだろう。たぶん、いない訳じゃないんだ。
ただ、俺はそうなれなかっただけで。
そして、失恋という大きな痛手を負ったいま……俺はもう、そんな風に誰かと一生を添い遂げるという奇跡が自分の身に降りかかることを、信じれなくなっていた。
もしかしたら俺はまた、誰かを好きになってしまうかもしれない。
でもそれは、決して素敵なことじゃない。手放しで喜べる事態ではない。
誰かを好きになった俺が、何かしらの理由で失恋するまでの、長く苦しい、凄惨な旅の始まりなのだ。
……わかってる。こんなの、好きな女に浮気された男のやっかみだ。だから、話半分で聞いてくれていい。
でも、あの経験を経て、俺は……恋なんて、噂で聞いていたほど良いものではなく、むしろ、入れ込めば入れ込むだけ後々深い傷になる悪夢だと、そう気づいたのだ。
つまるところ、こんだけ長々と独白をして、俺が何を言いたいのかというと――。
幸せそうなカップルはみんな、ゾンビか何かに食われてくんねえかな。
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