《Endless World》~その日、親友が死んでデスゲームが生まれた~
小桜 丸
~Prologue~
『そういえば……明日は《
『あっ、そうそう! クローズドベータはとっても面白かったから、
『配信のガイドラインとかって大丈夫なんですか?』
『うん大丈夫だよ! 一通り見てみたけど、特に制限っぽい制限はないみたい!』
一人暮らしの男部屋、大学二年生の
画面の向こうでテンポの良い会話を交わすのは大手の
『有名な配信者さんとかプロゲーマーさんたちも沢山参加するみたいだよ!』
『へぇー、そうなんですね。じゃあ私もオープンベータを配信してみます』
『あっそうそう!
『あははっ、ここぞとばかりにアピールするんですね』
《
「時代は、いつの間にか変わるもんだな……」
配信を閉じてベッドで横になる。知らぬうちに視覚と聴覚が売りのVRが主流になっていたかと思えば、今の時代は五感が共有されるVRMMOが主流だ。時の流れは歳を取れば取るほど早く感じる。
「まぁ、俺には関係ないか」
けれど俺にとってはゲームなんて
「あぁそうだ! 大学の課題やらないと……!」
今日の零時に《
Mtubeには『初心者向け!効率の良いレベリング!』のようなタイトルの動画がアップロードされているに違いない。
「"アイツ"が中心になって作った──初めてのゲームか」
EWの開発者は
「……あの頃が懐かしいな」
赤峰は小学生の頃から共にゲームをして過ごしてきた親友。批評家気取りで話をする度に最近のゲームをつまらないだのと語り合った。今思い返してみれば、馬鹿丸出しだ。
『お前はゲームセンスが天才的すぎる。何で初見のゲームも上手くプレイできるんだよ?』
『……そんなお前もさ。どんなゲームも自分の思うように事を進めて、組み立てられるよな。そーゆうゲームメイクは天才的だと思うけど』
俺がアイツを褒めれば、アイツもまた俺のことを褒め返してきた。ゲームメイクと言われても、自分ではいまいちピンとこない。ただいつもゲームをするときは俺が後衛の役割で、アイツが必ず前衛の役割だったのは確かだ。
「赤峰、どんなゲーム作ったんだろうな……」
かつての親友が、天才的なゲームセンスを持つアイツが作った初めてのゲーム。少しだけプレイしてみたいという気分になったが、すぐに過去の記憶が蘇る。
『……ごめん赤峰。俺、もうゲームをやりたくない』
『は? どういうことだよ?』
『俺さ、お前とゲームをする度に思うんだ。ゲームセンスが無いって。だから、もうやりたくなくて……』
あれは高校一年生の夏。
別々の高校へ通うことになった俺とアイツは、お互いが空いている日にどちらかの家へ集まり、いつも通りゲームをしていた時だ。
『待てよ。お前はゲームメイクが天才的だ。それにゲームセンスなんて気にする必要ないだろ? 二人で楽しくやれれば、それで十分──』
『もう、ゲームが楽しくないんだ』
『……!』
『高校に入ってからゲームに対する関心も失せて、興味も失せて……。お前がオススメしてくれたゲームも、買っただけで一回もプレイできなくてさ……』
俺は歳を取るにつれてゲームに楽しさを見出せなくなった。ゲームをしていて笑えなくなった。ゲームを上手くなろうとする努力をしなくなった。そんな俺とは対称に昔と変わらず楽しそうにゲームをする赤峰。
どうしても、耐えられなかった。
『正直、お前とゲームをするのが一番楽しかった。一番楽しかったからこそ、楽しめなくなった今の現状が……もう終わりなんだと思う』
『青塚……』
『……ごめん、今日はもう帰るわ』
『……』
その日から、俺と赤峰は連絡を取り合わなくなった。俺はゲームに手を出すこともなく、ごく普通の日々を送りながら大学へ入学。対して赤峰は高卒で大手のゲーム企業へ就職した。
「やっぱり、やめておくか……」
嫌な記憶を思い出し気分は落ちる。俺はベッドから起き上がると、変に考えることを止め、課題に取り組もうと立ち上がった。
「けど、人気作になってほしいな。アイツが作ったゲームだからこそ、絶対に面白いはずだ」
心の底からそう願った──オープンベータがリリースされるまでは。
『EWオープンベータへと参加した一万六千人のユーザーがログアウト不可。開発者である赤峰陽介は自殺。最新技術の投与が最悪の事態へ』
「……どういうことだ?」
次の日に見かけたネットニュース。
俺は気持ちの整理が追い付かなかった。かつての親友が自殺をし、かつての親友が作ったゲームが最悪の事態を招いている事実。
『EWによる死者多数。仮想空間でのゲームオーバーは現実で命を奪う。医療機関はEW対策本部を設立』
「アイツ、何でこんなことを……」
ゲーム内で死ねば、現実でも死ぬ。そんな小説をどこかで聞いたことがある。そんなものは夢物語だと、現実で可能なわけがないと。しかしそんな夢物語を、この時代は可能にできる。
「……夢であってくれ」
その日、俺の親友が死んで──デスゲームが生まれた。
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