俺が異世界転移した話を少ししようか?
猫神流兎
第1話
この世界は理不尽だ。
他人と少し違う特徴を持っているだけですぐに排斥される。俺はただ他の男性より可愛いモノが好きなだけだというのに。発言力、腕力がない弱者は誰に認められずに排斥されるだけの運命なのか。
そんなクソみたいな世界に絶望した俺は家に引き籠った。
最初は実家に引き籠っていたけれど親に迷惑かかっている事に嫌気が差したので自分が持ちうる技術を使い、色々な投稿サイトをフルに使って少量だが稼いだお金を元手に株をして資産を増やした。その結果、こうして俺はマンションの一室を借り一人で毎日パソコンと睨めっこするだけの引き篭もりライフを送っている。
とまあ、今日も今日とてそんな説明染みた回想もとい、モノローグを終えた俺はパソコンに向かうとスマホの通知がなり響いた。
「——っ! ビックリしたぁ…」
すぐにベッドの上に置かれていたスマホを手に取り確認するとSNSの通知だという事が分かった。どうやら俺のSNSアカウントの一つに設定されていた時間指定投稿が投稿され、その投稿がされた瞬間、俺の数少ないフォロワーさんの一人がコメントしたらしい。
SNSに投稿された写真を確認する。その写真は顔を半分程隠した俺が女装した姿だった。
「ナイスだ、俺のもう一つの人格。アンタのお陰で今日も生きていられる」
誰も居ないゴミだらけの自室で俺は一人、呟く。
俺のもう一つの人格、それは俺が寝ている間に起きて俺が心の底から欲しかったモノやしたかったコトを叶えてくれる魔法の人格。俺はそんなもう一人の人格に尊敬と淡い恋を抱いていると言っても過言ではない。
そんな感じで今日も可愛い可愛い自分の女装姿の写真に俺は見惚れていた。
「あ、そうだ……写真が上がっているという事は……」
スマホの充電器の近くに置かれているA4のノートを手に取りパラパラと捲る。
「ふむふむ、今日は一段と書いていることが多いな……なになに? 『今週はアクセサリーに制作に挑戦したいので二十時には寝て欲しいです。』か……」
俺ともう一人の俺の人格は記憶を共有していないのでこうして交換ノートを通じて会話している。もう一つの人格の字はとても綺麗で女の子らしさが滲み出ている。同じ自分なのに薄汚い俺の字とは大違いだ。
俺は『了解』と汚い字で書いて今日から八時に寝ることを決め芋けんぴの袋に手を突っ込む。
「おっと……」
どうやら食べていた袋の中身の芋けんぴがなくなってしまったようだ。新しく芋けんぴの袋を開けなければ。
芋けんぴの食べカスと袋を集めてゴミ袋に捨ててからクローゼットを開ける。綺麗に整頓されている女の子用の服とその下に置かれた大きめの段ボール。俺はその段ボールを開けた。そこには大量の——一日一袋食べてもざっと二年はかかるだろうという芋けんぴの小袋が詰まっている。賞味期限から考えるとバカな量だと自覚している。だが、二ヶ月前はこれの倍の量があったと思うと多分、大丈夫だろう。適当に数袋取り出しパソコンの近くにドサドサッと置いて芋けんぴの小袋をを一つ開けて一本取り出す。
「やっぱり、芋けんぴは美味しくてやめられないぜ」
一人で過ごす時間が多いせいで口走った戯言と共に芋けんぴを口に運び齧った瞬間、齧った芋けんぴが眩く光輝き俺の身体は飲み込まれた——。
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