道路

 道路っていうのは何かと便利な物ですよね。

 全ての道路は繋がっていて、現代じゃどこへ行くにもまず道路がないと行きつくことさえままならない。

 つまり、人間にとって必需品なわけです。

 でもまあ、この世には少し変な道路ってのもありまして。

 僕は民俗学を専攻していて、その日はとある村のお寺が所蔵している書物を見せてもらおう、って日だったんですよ。

 車をざっと45分か1時間くらい走らせましてね。

 で、ある程度書物を見せてもらって、さあ帰ろうって時にですね。

 その村、山間にあるもんですから少し迷子になってしまいましてね。

 かなり山の中を進んでいるような気がするな、と思った矢先に、道が途切れてしまったんですよ。その先はずっと落ち葉とか木々が立ち並ぶばかりで、明らかにどこにも続いてない。

 夕方だったから周りもどんどん暗くなってまして。

 そんな折、ふと僕は何を思ったか車を降りてその先へ歩いて進んだんです。

 はい、今でもよく分からないんですけど。

 いくつもの木々を避けて、明らかに管理が行き届いてない草とか倒木を跨いで。

 それで、しばらく歩いてたらですね。

 街中でよく見るコンクリートの道路が唐突に出てきたんです。

 それ見て僕はなんだ続いてるじゃん、と思って車まで戻ったわけなんですね。

 で、そのまま運転席に座った時に急に気づいたんです。

 こんな所車なんか通れなくないか、って。

 でもさっき見た道は明らかに車道だったんです。

 きちんと白線も引かれてて。

 僕は急いで来た道を引き返しました。

 あれは誰のための道路だったんでしょう。

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