魔王の幹部が弱体化せずに亡命してきたらチート過ぎた
黒井丸@旧穀潰
第1話 敵幹部が亡命してきた
昔(25年前)やってたゲームとかで思っていた事をネタに、つらつらと物語風に語ってみようと思います。
なお、カバネタはDQ4コママンガ劇場の石田先生のネタです。
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「誰がカバじゃぁぁあああ!!!」
大口を開けて小柄なカバが襲いかかってきた。
俺の名前は
ごくふつうにトラックで異世界に召還されて、ごくふつうに勇者として少額の金を渡され、ごくふつうに異種族の3人を味方にして魔王軍と戦っている勇者である。
そして、1年の冒険の末に魔王城の玉座にたどり着いたのだ。
おどろおどろしい城の中、俺は玉座に座っていたカバを見て「この世界にもカバっているんだな」とつぶやいたところ戦いとなったのである。
まさか、カバが人語を解した上に怒ってくるとは思わなかった。
カバと言うのはこの世界だと悪口なのだろうか?
「ワシはカバではないぃぃぃぃぃ!!!!」
大きく開けた口から炎を吐きだして来た。
臭い。
口の中から吐かれた炎が獣臭い。
昔見た動物園のカバってこんな匂いがしたな。
「…………いや、ワシは四天王が一人、カッファーなのじゃが」
見た目もカバなら名前もカバらしい。
なるほど、この世界のカバという言葉は、ちょっと巻き舌で英語風に言わないといけないのか。カッブァー。(※カバは英語でヒポポタマスです)
もしかしたら、このカバは地球から異世界に迷い込んで知能を獲得したカバなのかもしれないカバ。
そう納得していると、血管を浮き上がらせたカバは、やっと落ち着いたようで大きく息を吐くと
「……………まあ、よかろう。勇者などと祭りたてられた愚か者どもよ。貴様等の臓物をくらいつくしてくれるわ!!!」
魔王四天王のような威圧感を出して叫ぶカバ。
『カッファーのこうげき 全員に30のダメージ』
「うわ!このカバ強いぞ!」
電撃系の魔法を使われた。
全体攻撃呪文まで できるのか。恐ろしいな、この世界のカバ。
「さすが魔王城。愛玩用のカバですら呪文を使うのか」
ドワーフのスイヘイが焼け焦げた盾を見て言った。
「だから我が輩はカバではない!!!」
顔を真っ赤にして抗議するカバ。
「魔法も効かない。信じられないわ。あのカバ」
エルフのリーベも冷や汗を流す。
「いや、だから我が輩は魔物…」
だが、こちらには秘密兵器がある。
「聞けよ!魔物の話!!!」
最後の一匹の味方を振り返り、号令をかける。
「フネ!やっちゃえ!」
「わん!」
その一言で、フネが背中に背負ったキャノン砲が火を噴く。
『フネのこうげき。カッファーに913のダメージを与えた』
反則級のダメージを叩き出し、戦闘に勝利した。
・・・・・・・・・・・・・・・
「いやあ、強かったな」
「ペットですら魔法を使って来るとは思わなかったな」
「電撃のお陰で髪が焦げてしまったわ」
「わん(大丈夫ですか?)」
所々やけどを負った俺たちは、カバの健闘をたたえた。
きっと名のあるカバだったに違いない。
それぞれ状態を確認した俺たちは、倒れたカバの冥福を祈ってから城の探索を再開するのだった。
「ちょっとまてぃ!!!!」
フネの砲弾を喰らい、ズタボロになったカバが抗議の声を上げる。
「貴様!何故ゆえに犬が勇者パーティーにおるのだ?そこまで人手不足なのか!?」
メタルマッ●スだと当たり前にいるじゃないか。
オーバーキルダメージを喰らったはずなのに元気に叫ぶカバ。
すごいな。まるで魔王軍の幹部みたいだ。
「質問に答えぬか!何故 犬なんぞを戦場に連れて来ておる!!!勇者がわざわざ出るまでもないとでも言いたいのか!」
「ふっ。それは違うぞ」
「違う?」
俺の言葉に戸惑うカバ。
「このパーティーで最強なのはお犬様のフネ!我々は勇者フネのお世話係とサポート役にすぎないのだ!」
「威張って言うことかぁぁぁ!!!この馬鹿者!!!」
貴様、勇者として…いや人間としての尊厳をどこに捨ててきた!とカバが叫ぶ。
「そこのドワーフにエルフ!おまえたちも何か言え!犬以下と言われてるんだぞ!」
そうわめいたが。
「いや…パーティ組んでいきなり犬を勧誘し始めたときは この男を見捨てようかと思ったんじゃが…」
「本当に強かったから何も言えないのよねぇ…」
うつむきながらもフネを称える二人。
「そんなに落ち込むことはないぞ。カバは確かに強い。アフリカで人間が死ぬ理由の5位に入る位には強いそうだけど、うちのフネがそれより強かっただけだ」
そう言って負けたカバを慰める。
ちなみに俺たちの強さをステータスで表すと
HP200 攻撃力180 守備力 230 素早さ120
位なのだが、我らがフネは
HP1800 攻撃力900 守備力 1000 素早さ500
なのである。
それもこれも、犬だけが装備可能な犬キャノン 犬ターボエンジン 犬アーマーのおかげである。
「それをお前たちが装備すれば良いだろおぉぉぉぉぉ!!!」
「犬専用装備を他種族が付けられるか。バカなの?君」
人間やドワーフならともかく犬に負けるのはイヤだとわめくカバ。
わがままだな。
テッドブロ●ラーさん始め賞金首のみなさんにあやまれ。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
そんな動物とのふれあいを楽しんでいると
「勇者よ、聞こえますか?今、あなたの脳に直接語りかけています。」
と、俺をこの世界に呼び出した背後霊「守護精霊です。いい加減覚えないと、毎晩あなたの脳にデスメタルを流し続けますよ」守護精霊大先生が語りかけてきた。
こんなタイミングで一体なんだ?
「そこにいるのは魔王軍の幹部 四天王がひとりです」
?
どうみてもカバなんだが。
「……カバの四天王で良いので取りあえず敵です。倒してください」
そう言って守護精霊はカバのステータスを見せる
『魔族;カッファー 魔王軍 四天王のひとり』
HP;1/914 MP;333/555
「……………」
「……………」
「……………」
「……………ここまでだな、魔王軍四天王」
何事もなかったかのように剣を突きつける俺。
カバに擬態するとは、さすが四天王。あやうく騙されるところだったぜ。
「……………………釈然とせぬが、よくぞ我を倒した」
上級魔族らしく威厳正しく言う四天王。潔く覚悟を決めたらしい。
四天王ともなれば大量の経験値と金と特殊アイテムに、ボーナスポイントなどを持っているに違いない。
物欲に溢れた目で見られて、カバが震えあがる。
だが、そこへ
「そこまでだ」
四天王の影が膨れ上がったと思ったら、一枚の扇子が姿を現した。
「なんじゃ?」
スイヘイの声に反応するように扇子はLEDライトでも付いているかの如く、赤く光り、女性が一人姿を現した。
「ふむ。貴様が今代の勇者か」
そこには目の覚めるような豪華な衣装に身を包んだ女性がいた。
漆黒のマントは裾が炎のようなエフェクトがゆらめき、手に持つ扇子はルビーのように煌めいている。
闇と炎の化身のような出で立ちの中には、形容するのもはばかられるような絶世の美女がいた。
クトゥルフ神話TRPGなら恐怖を感じるレベルの美しさだ。SAN値直送のダイスロールが必要である。
「…何か…非常に失礼な事を考えておらぬか?お主」
「いいえ、なんにも」
隣のまな板と違ってこちらのお姉さんは胸が豊かであるな。などとは絶対に考えてない。
考えていないから、足を踏まないでくれ。まな板エルフ。
『勇者よ。油断してはなりません』
守護精霊さんが緊張した声で言う。
ステータスを見てみると
『 UNKNOWN / UNKNOWN 』
HP;??????/?????? MP??????/???????
攻撃力;?????? 防御力;??????
………………これ、別のゲームの登場キャラじゃね?
「勝てるかぁぁぁ!!!!!」
クソゲーのような強敵に叫ぶしか無かった。
「おしまいだぁ!!!もうだめだぁ!!!」
「ままだまだまだあわわわわああわてって」
一瞬にして恐慌状態になるパーティ。
なんだこいつ。
正確なHPは分からないが、最低でも10万はあると言う事だ。
俺達500人分。先ほどのカバなら100頭に匹敵する。
仮に、あれが999999なら、約10倍だ。
チートにも程があるだろう。
「どうする。勇者?」
「いつもの小賢しい智恵を貸してちょうだい」
「わんわん(とりあえず一発ぶっぱなしましょうか?ご主人様)」
すがるような目で仲間たちが俺を見る。
よし、ここはゲームの知識を活かしてみよう。
俺は今までプレイした理不尽な敵キャラたちを思い出してみた。
こういうHPの大きな敵は割合ダメージ…毒ダメージなり麻痺させる事が出来れば勝てる事が多かった。
…そして、こちらには毒薬もしびれ薬もあるのだから
「上手くいけば勝てるかもしれない」
その言葉に3人の顔に希望が灯る。
そうだ。今まで俺は幾度も「こんなの絶対勝てないよ」と思った理不尽な敵との戦いをこなしてきた。ゲームの世界で。
チートやバグ、たった一人での特攻など、様々な方法で勝利を納めてきたのだ。
どんな強敵でも弱点はあるだろう。
そう思って、強く目の前の美女のステータスを見ると
『 状態異常無効。一定ダメージ以下の通常攻撃無効。魔法反射。 』
……終わった。
「不味いぃぃぃぃ!逃げるぞ!!!やってられるか!こんなバケモン!!!」
勝率0%と判断して逃亡を選択する。
なんだあのステータスは。
ゲームプロデューサーが中2病全開で作った「僕の考えた最強の敵」かよ!!!
「1ターンだけ、1ターンだけ肉の盾になる!!フネを連れて逃げろ!!!」
死を覚悟しながら、ヤケクソで叫ぶ。
全員同時に逃げても逃げられる訳がない。かといって他人に「死ね」と命令しても聞く奴はいない。
下手に時間をかければ死人が増えるだけだ。
リーベもスイヘイも悪い奴ではないが自己犠牲精神などは持ち合わせていないので、生存率を上げるには俺が犠牲となるのが一番効率が良い。
ゲームで培った頭脳により、冷徹に自分の命さえも駒にして瞬時に判断するとそんな答えしかでなかった。ガッデム!!!
「来るなら来いやぁぁぁぁ!!!!でも、出来るなら来ないで!!!」
足に力は入らず、剣を握れただけでも自分をほめてやりたい。
5mはある巨竜と戦ったときでも、ここまで恐怖は感じなかった。
山が一つ崩れて土石流がおそってきたような、自然災害が襲いかかってくるかのような絶望感を感じる。
しかし、目の前の女性は興味なさそうにこちらを見ると
「ああ私は魔王の幹部をしている者でな、今日はこのカバを回収しに来ただけじゃ」
別にお前たちを始末しようとは思っておらぬ。と言った。
驚いた事に目の前の怪物は戦う意思は無いらしい。
道端の石でも見るように、目の前の敵幹部は俺達を見てから四天王に視線を移す。
「何を言っておる!!!お前なら出来るだろう!さっさとあいつらを始末しろ!!!」
おい、カバ。余計な事を言うんじゃない。
「だいぶやられたようだな」
「4対1でなければ負けんかったわ!それよりも、勇者たちを始末しろ!!!」
偉そうに命令するカバ。だが、敵幹部は意に介さず。
「正々堂々と戦ったのだろう?だったらこの戦いはあいつらたちの勝ちでよかろう。本来ならお前はここで死ぬ所だったのだぞ?だが、魔王がお前をまだ必要としているらしい」
まるで隣の部屋から文房具でも回収に来たような気軽さで、カバを掴みあげると
「なので引き取らせて貰おう」
「おい、何を勝手に…」
そう言うと女の敵幹部とカバは影に沈んだ。
後には静寂だけが残った。
「……た」
「助かった…」
「…のか?」
「くぅん(油断は禁物です。ご主人様)」
誰もいなくなった玉座をにらみながら、俺たちは命が助かった事に感謝して、その場にへたりこんだ。
・・・・・・・・・・・・・・・・・
「というわけで退職します」
俺たちは人間の城につくと、王様の前で3人揃って辞表を提出した。
命からがら帰る途中で、仲間たちと話し合った結果
「この旅、最終的にあれと戦わないといけないのかな?」
「じゃとしたら、ワシはパスじゃな」
「わたしも」
「俺も」
「ワン!(そんな!もっと頑張りましょうよ、ご主人様!)」
となったためである。
魔王?知らない人ですね。
命の方が大事だ。
「おお、ゆうしゃよ 退職するとは情けない」
テンプレセリフを抜かす王様。
「情けなくあるかぁぁぁ!!!!」
「ヒノキの棒一本と50エンでここまでやってきた方が鬼籍なんじゃよ!」
「情けないと思うなら、アンタやってみなさいよ!!!棒きれ一本で!!!」
ブラック企業からの扱いを思い出して怒りが爆発する俺達。
本当に、何の支援も無くよくあそこまでやれたよな。俺達。
そんな事を考えていると、背筋が凍った。
「お初にお目にかかる。我は至高の存在、大魔王様にお仕えする者…だった」
先日 出会った敵の幹部がいつの間にか背後に現れた。
そう言えば某有名RPGの3で影に潜んで憑いてくる敵がいたっけ。
「実は折り入って頼みがある」
一度あったばかりの敵幹部は、身にまとっていた上着を挙げると、身なりは豪華だけどひかえめな印象を受ける少女がいた。
「至高の方、大魔王様の御令嬢と我の亡命を受け入れてもらえぬだろうか?」
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