第107話 走るわんちゃん

「よし、今日からは魔境地帯へ突っ走る!異論は認めない!」


「異論など言わんのじゃ。まぁ魔力の運用も小慣れてきたじゃろうし、頑張って進むが良いのじゃ」


「おうよ!」


 昨日は長老に相談を受けてレモン空間内のあれこれを行ったが、いよいよ今日からごぶ助達が待つ魔境地帯へ向けて出発だ。

 魔力の運用修行は相変わらず続けながら行く事になっているのだが、数日間エルフ村を見はったり、オークロードと戦ったからか、魔力の運用が大分スムーズに行える様になっていたので、これまで以上に速度を出していける筈だ。


「よし!んじゃあ出発っ!」


「うむ」


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 そうして走る事1日、元から魔の森東側の3分の2辺りまでは進んでいたのだが、なんと今日だけで東側を抜けて北側まで辿り着く事が出来た。

 これは魔力の運用にもなれたという事もあるが、進化して能力値が上がったと言うのもあるかもしれない。



 その日の翌日、北側へ抜けたという事で様子を見てみたいとエペシュがレモン空間の外へと出て来た。どうやら今日はこのまま俺に乗って進むらしい。

 しかしエペシュが俺に乗ると『隠密』の効果等も切れるのでは?と、ここで初めてその事実に気付いたのだが、どうやら補助魔術に『隠密』の様な効果を発揮するモノがあるらしく、それを使えば問題ないらしい。

 俺はそれを聞いて感心し、エペシュは得意げな顔をしていたのだが、何故かニアがニヤニヤと笑っていたのが凄く気になった。

 なので何かあるのかと尋ねるが、ニアは何もないと答えて来た。

 絶対嘘だと思ったが、ここで聞いても何も言わないだろうから諦めて出発すると、ニアがニヤニヤとしていた意味がようやく分かった・・・。



 出発を再開して3日目、今日も俺はエペシュを背中に乗せながら進む。

 途中で『やっぱり降りようか?』と聞かれたのだが、ニアが『一狼の為なのじゃ、乗っておれ』と言ったのでそのまま進む事に。

 何故エペシュが『降りようか?』と聞いたのか、それは昨日ニアがニヤニヤしていたのと関係がある。

 どうも他人が体に密着した状態で魔力を使うと微妙に俺の魔力が反応するらしく、思い通りに運用できていた魔力が微妙に乱れたのだ。これは普通にスキルや魔力を使う場合には大丈夫らしいのだが、魔力をそのまま動かす様な運用をしていると支障がでるらしい。

 この魔力の乱れも鍛えれば問題は無くなるらしく、ニアは次いでだから鍛えてしまおうとエペシュを俺の背中に乗せることにしたらしい。



 出発を再開して4日目、今日も俺はエペシュを背中に乗せながら進んでいた。

 一昨日、昨日と比べて魔力の乱れも大分安定を見せ、気を抜かなければ問題はなかった。

 その為移動スピードも初日位に戻り、大分距離を稼ぐことが出来た。

 北側は移動する距離が半分で済むので、後2日もあれば出れそうな勢いだ。



 出発を再開して5日目、今日は狩りを重点的にしながら進んでいた。

 魔の森から出ると獲物があまり取れなくなるかもとニアに聞いたので、今日と明日でたっぷり食料を補充しようという試みだった。

 恐らくそんな事をしていても明日の夜には魔の森を抜けれそうだったので、この日は俺とエペシュでたっぷりと食料を確保しながら進んだ。



 出発を再開してから6日目、本日もたっぷり食料を確保しながら進んだ。そして、考えていたスピードより大分速く移動できたため、魔の森の最北端にまで来たがここで一晩休んで行く事にした。



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 ・

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 そして出発を再開してから7日目、いよいよ今日から魔の森の外だ。


「ここから先は平原で、その先に山、んでその先にあるのが魔境地帯・・・でいいんだよな?」


「うむ、そうなのじゃ。一昨日言った通り、魔の森程獲物となる様なモノはおらんのじゃ。山に入ると強い魔物も増えたりするので気を付けるがよいのじゃ」


 予めニアにこの先の情報をサラッと聞いておいたのだが、距離がそこそこありそうな感じだった。

 山で多少時間が掛かるかもしれないので、最初の平原部分で距離を稼げればいいなとは思うのだが、どうだろうな。


「了解っと。んじゃあ出発するぜ」


「うむ」


「うん」


「エペシュ、平原部分はスピードが乗るかもしれないから気を付けてくれ」


「解った」


「んじゃ行くぜ」


 エペシュの足にガッチリ力が入った事を感じると、俺は魔の森を飛び出した。


「おぉ・・・」


 俺は転生してから初めて魔の森を出た訳だが・・・ちょっと感動していた。


「すっご・・・一面草原だ・・・」


 日本に居た時にはまず見ないような草の海、それが視界一杯に広がっていた。

 多少起伏はあるが木や崖なども無いので気持ちよく走れるし、風もダイレクトに感じれる気がした。


「おほぉ~~!!」


 それが面白く、魔力の運用も障害物がないので気が散らずに行えるので多少簡単だったのもあるだろう、俺は夢中になって草原を駆けた。


 ・

 ・

 ・


「あぁ・・・草原が終わってしまった・・・」


「楽しそうだったもんね、よしよし」


 草原を走る事6日程、楽しい時間が終わってしまった。

 犬系の魔物に転生したからか、走るのが凄く楽しかったので、出来るならばもっと走りたかった・・・


「っと、まぁそれはゴブ助達に合流してからでもできるからな。なんならポンコにそういう階層を追加してもらえば・・・」


 ポンコのダンジョンはそこまで階層を弄ったりはしていなかったが、そういう階層を作ってもらうかと頭の中で考えてしまったが、気を引き締める。


「取りあえずはこの山を越えなければ・・・」


「遠くから見えてた限り大きそうだったね」


「まぁそこそこの大きさはあるのじゃ」


 目の前にそびえ立つ山は、走り出して3日目くらいには見えていた。中々たどりつかないなと思っていたのだが、とてつもなく巨大な山だったから距離感が狂っていたらしい。


「これ・・・超えるの大分大変そうだな・・・」


「私も山は専門外だから何とも言えない」


「そっかぁ・・・」


 ぽつりとつぶやいた言葉にエペシュが反応してくれたが、エルフは森担当で山は担当外らしい。


「一応じゃが、端の方へ行けば人間達が通る、多少はましな道もあるのじゃ。このまま突っ切ってもいいし、そちらへ行ってもいい、好きな方法でいくのじゃ」


「ふむ・・・」


 そんなアドバイスをもらったので少し考えてみる。

 真っ直ぐ行くと、遠くから見えていた雪がまだ残っている山の頂上を通っていくのだろう。

 もう一方の端を通れば、それよりかはましかもしれないが人間と出会うかもしれない。



 考えた末に俺が出した答えは・・・



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 作者より:読んでいただきありがとうございます。

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 ☆や♡をもらえると ゴブ助が ゴブスケティウスになります。


 こちらも連載中です。↓『悪役令嬢は嫌なので、魔王になろうと思います。』

 https://kakuyomu.jp/works/16816927860702355532

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