第77話 服用には気を付けるわんちゃん
ニアから衝撃的な事実を聞かされた俺は・・・走っていた。
「うぐっ・・・ぬぅ・・・」
「ほれほれ、もっと均等に行き渡らせるのじゃ。脚ばっかりに魔力がいっておるからばてるのじゃ」
「そ・・・そんなこと言ったって・・・ぬぐぅ!」
しょうがないじゃないか!
ああ、仕方ない。ニアから出れないと聞かされたところで仕方ないのだ。
だから俺は走っている!
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「うむ、今日はここまでにしておくのじゃ」
「あ・・・あざっす・・・」
重力魔法を使った修行も無事終わりを迎え、休憩タイムなのだが・・・。
「仕方がないとはいえやはり外が恋しい・・・」
仕方がないから走っていると言ったが、あれはヤケクソの走りでもあった。やはり白一色でなく彩がほしいのだ。
走る前にも少し駄々を捏ねたのだが、ニアにもどうにもならないらしいし、精神修行だと思え、いいから走れと言われ取り合ってもらえなかった。
「うぅ・・・白は勘弁してくれ・・・」
余りにも気が休まらないので、俺は収納してある物を辺りに出して並べだした。
すると辺りには色が生まれ白一色ではなくなり、以外にもいい感じに気が休まったのだが・・・。
「妾特性の苦し良薬が出来たのじゃ・・・って一狼よ、何ゴミを散らかしておるのじゃ。片付けるのじゃ」
「ゴ・・・ゴミじゃない!オブジェだ!芸術なんだ!」
ニアにはどうもゴミを辺りに撒いていると思われたみたいだった。
言い訳もしたのだが解ってもらえず、片付けぬのなら妾が一掃する、と言われて慌てて収納する羽目になってしまった。
「全く困った童なのじゃ。さぁ、片付いたところで飯なのじゃ」
「ういっす・・・。いただきます」
またあのカラフル料理『苦し良薬』とやらを差し出されたので、俺は無心でそれを口に入れ始める。
いや、嘘だ。決して無心にはなれない。
苦いやら不味い、でも色があるのは素晴らしい。でも苦不味いと思いながら口に入れていた。
何とか地獄のご飯タイムを終わらせると、俺は再び収納から物を取り出す。
「これ一個ならいいだろう?」
「む?・・・まぁ良いのじゃ。じゃがそれだけなのじゃ」
俺は頷きながら、取り出した物を前足で突っつく。
「しかし何でこんな物をドロップしたんだあいつは・・・。トロフィーなのか・・・?他の処も回って集めるのか?」
そう言いながら突っつき続ける。
俺が突っついているこれ、『バクス』迷宮の『守護者』キラーアント・クイーンのアンの落としたアイテムなんだが・・・何故ぬいぐるみ?
それはキラーアント・クイーンをデフォルメしたような感じのぬいぐるみで、鑑定結果も『ただのぬいぐるみ』としか出てこないという、何だこれはアイテムであった。
「マジで何だこりゃ・・・。そして何で俺はこれを出したんだろう・・・。まぁ良いか、色があるだけでハッピーだ」
そう言って俺はぬいぐるみの傍で休み、気が付いたら寝ていた。
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「・・・んがっ!?床が柔らかい・・・」
目を覚ますとどうもぬいぐるみの上で寝ていたようで、下がふんわりと柔らかく気持ちが良かった。
「意外と良いものかもしれないな、このぬいぐるみ」
思わぬ使い道にうんうんと頷いているとニアが挨拶して来た。
「おはようなのじゃ一狼、飯を用意しておいたのじゃ」
「おはようニア、ありがとな」
此処の処、ニアは結構な頻度でご飯の準備をしてくれるのだが、意外にも面倒見が良いタイプだったのだろうか?
それはともかく、折角用意してくれたので頂くことにした。
「いただきます。って今回はあのカラフル料理じゃないんだな?」
「うむ、薬草も結構入っておるので、流石に食べ過ぎは駄目なのじゃ。薬も過ぎれば熱さを忘れるのじゃ」
「ヤバイお薬かな?それと、薬も過ぎれば毒になる、だと思う」
「うむ、それなのじゃ」
ニアの日本諺って大体どこかがおかしいんだよな・・・。
過去の教えた転生者達が間違っていたんだろうかと思いつつ、結構おいしいニアの料理を頂き朝食を終える。
そしてご飯が終わると修行の開始である。
「今日はどうするんだ?いよいよスキルの習得に向けて頑張るのか?」
「うーむ・・・。いや、今日も昨日に引き続き身体強化を使い走るとするのじゃ。スキル習得は明日から始める事にするのじゃ」
「了解だ」
今日も昨日に引き続き身体強化で走り込みらしい。特に文句も無いので俺がそれを承諾すると、ニアが魔法を使い俺の体に負荷をかける。
「っぐ・・・っふぅ・・・」
直ぐに魔力を制御し始め、身体強化状態に移行する。昨日一日精根尽きるまで走り続けたかいがあって、少しは慣れたみたいだ。
「まだまだじゃが、まぁ良いのじゃ。さぁ走るがよいのじゃ」
「うぃっす」
慣れたと思ったが、ニアからすればまだひよっ子レベルらしい。
もっと頑張ろうと決意を固め、俺は走り始めた。
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「・・・んがっ!?・・・あぁ、やっぱりいいなこれ」
修行4日目、俺は昨日と同じくぬいぐるみの上で目覚めた。白い床の上と違い、ふわふわしていて大きさも十分なので寝心地はいいのだ。
「おはようなのじゃ一狼。ほれ、飯を食うのじゃ」
「おはようニア。ありがとな、頂くよ」
今日もニアから料理を貰い朝食をとる。苦し良薬は昨日の夜食べたので、朝食は普通の物だった。
「一日一回服用ってか・・・。っと、ご馳走様でした」
「うむ、食ったら早速修行を開始するのじゃ。身体強化はまたやるとして、今日からはいよいよスキル習得の為の修行にはいるのじゃ」
今日からはいよいよ待ちに待ったスキル習得に向けての修行である。因みに、身体強化は昨日終わった時点では「まだまだなのじゃ」判定を頂いているので、後々に再び行うらしい。
「さて、それではスキル習得についてなのじゃが、主に狙うのは二つなのじゃ。それは、『索敵』と『隠密』なのじゃ」
『索敵』と『隠密』か。エルフが度々現れる森を進むには実に良いスキルだな。
しかし『索敵』はミコも持っていたから解るんだが、『隠密』?『隠れ身』じゃないのか?
「ニア、『隠密』は『隠れ身』とは違うのか?」
「うむ、『隠れ身』はレアなのじゃ。極めれば凄いとは聞いたことがあるのじゃ」
何と!?ミコの持っていた『隠れ身』はレアスキルだったのか。これは合流したら教えてあげなければ!
「しかし『隠密』でも十分効果はあるので、こちらを狙うのじゃ。じゃが、先ずは『索敵』を優先するのじゃ」
「そうなのか?」
「最悪エルフには見つかっても大丈夫なのじゃ。要は先手を取られぬ事が重要、そうじゃないかや?」
確かにそうかもしれない。
先にこちらが気づけさえすれば矢と風魔法ならスキルを使って対策できるし、逃げる事もできる。
となると、ニアの言う通り『索敵』を優先すべきだな。
俺が心の中で納得していたら、俺の背筋に寒気が走った。
一体何だ!?と身を震わせていると、ニアがすごいいい笑顔で俺を見ている事に気付いた。
「大丈夫、『索敵』を早く習得させて『隠密』も習得させてやるのじゃ。妾に任せておくのじゃ!」
ニアはそう言っている途中で口が段々と吊り上がり、目も怖くなってきた。
「おぉ・・・何故か妾も滾って来たのじゃ!さぁ、早速始めるのじゃ!」
その時俺は、寒気が走った理由を理解した。
・・・なぁごぶ助、もしも俺が生きてお前と会えたら、肉でお祝いパーティーしてくれよな。
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作者より:読んでいただきありがとうございます。少し時間があいてしまい、もうしわけありませんでした。
「面白い」「続きが気になる」「次話、わんちゃんはどうなる!?」等思ったら☆で高評価や♡で応援してください。
☆や♡をもらえると 一狼が、デュエルスタンバイします。
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↓こちらも絶賛連載中です、よろしかったらどうでしょう。
『女の子になったと思ったら霊が見えるようになった話』 ※一応ホラーです。
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