第2章 ダンジョンで相棒と
第33話 ゴブリン村とわんちゃん
闇の中から意識が浮上する。
意識が戻ると、何も考えたくない、そう考えまた意識を闇の中に落とす。
暫くすると、再び闇の中から意識が浮上する。
だが再び何も考えたくない、そう考えて意識を闇の中へ落とす。
そんな事が何回か繰り返されたころ。
『グゥ~~・・・』
そんな音が俺の腹から聞こえてきた。俺はのそりと体を起こす。
「(ハハッ・・・あんな事があっても腹はすくんだな。・・・当たり前か・・・チクショウ・・・)」
そう・・・あんな事。・・・っ!思い出したくないっ!
『グゥ~~~・・・』
現実を見たくない!そう思っても俺の腹は現実を教えてくる。そのことに俺は自分が心底情けなく感じてきた。
「(チクショウ・・・一人で情けなく逃げてきたってのに俺は・・・)」
(おヤ、お目覚メですカ?おハようごザいマス)
「(・・・)」
俺が自己嫌悪で落ち込んでいるとポンコが挨拶してきた。俺はそれに言葉を返さず無言でいた。するとポンコはそれを気にしてもいないのか、続けて声をかけてきた。
(先ホど一狼様ノ体が空腹を訴えテいマしたガ、このポンコの機能を使っテ食料を生産イたしマすカ?)
「(あぁ・・・)」
(カしこマりマシタ。生産機能実行。食料生産開始。食料生産終了。コア前へ出現させます。)
俺が無意識に答えてしまい、それを受けてポンコはダンジョンコアの機能を使って食料を生産し、俺の前へ出してきた。
俺の体は無意識にその出された食料をかじっていた。
「(まっず・・・生臭いし・・・焼いてない肉みたいだ・・・まるで転移罠にかかった後、しばらく食べてた肉みたいだ・・・ごぶ助と・・・)」
無意識に食料を食べたことにまた自己嫌悪に陥るが、食べた食糧のあまりの味に悪態をついた。そしてそのついた悪態でまたごぶ助の事を思い出してしまう。それに連動して俺の目からは涙があふれ出てきた。
「(くっそおおおおおおおおお!!!うおおおおおおおおおお!!!)」
俺はそれから少しの間、食料を食べながら泣き叫んでいた。途中でポンコに声をかけられた気もするが、それに何も反応せずに、ただただ叫びながらやけ食いを繰り返した。
・
・
・
「(まずかった・・・けどありがとなポンコ・・・)」
(はイ、どうイたしマシテ)
ひたすらに叫んで、ひたすらに食べたらほんの少し気分が晴れた。もしかしたら食べている最中に、最後に見たごぶ助の一瞬の笑顔が思い浮かんだからかもしれない。
まるで「生きて元気で過ごせ」そう言っているような顔だったから・・・。
それに少し前向きになったことで、1つ思った事がある。もしかしたらごぶ助は生きているかもしれない。
俺は死んだと決めつけていたが、あのごぶ助だ。ひょっこりと「呼んだごぶ?」とか言って出てくるかもしれない。きっとそうに違いない!
そう考えて少しは前向きになれたが、同時にごぶ助の家族は死んでいた事を思い出した。それでまた気持ちはブルーになる。
そしてごぶ助の生存確認と、家族の埋葬をしなくちゃなと思い、自分に活を入れる。
「(っしゃぁ!ポンコ!)」
(はイ?なんデしょウ?)
「(俺が戻ってきてどのくらい時間が経った?)」
とりあえず俺はあの日からどれだけ時間が経ったのかポンコに聞いた。正直、何も考えたくないと思い、意識を茫然とさせていたからどれだけ時間が経ったのか全く分からなかった。
(はイ、おおヨそ5日程でスネ)
「(そうか・・・5日も経っていたか・・・)」
(はイ、そレに2日程経っタ日かラ、一郎様のお腹ハ空腹を訴エてグーグーとイってイマシタヨ?)
気付かなかったがずっとお腹はグーグーと言っていたみたいだ。今日初めて気づいたのは、限界ギリギリだったのかもしれない。
生き物っていうのはすごいな。心は死んでいても体は正直だ。
「(・・・っふ、こんな少し卑猥ワードな冗談も言えるようになったか・・・)」
(はイ?)
俺が口に出してしまったセルフ突っ込みにポンコは疑問の声をあげた。
まぁそれは放置するとして・・・。元気が出て動けるようになったからには動くべきだ。
「(ポンコ、またちょっと出かけるわ。今度もすぐ戻ってくると思う)」
(はイ、行ってらっシャイ。そレで卑猥ワードとハ?)
「(じゃあ行ってくる。行ってきまーす)」
俺はポンコに声をかけて外に出ることにした。ゴブリン村の様子を再度見るためだ。ポンコにされた質問を華麗にスルーして、俺は転移した。
ダンジョンの入口に着くとそのまま外へ出て村へと急ぐ。一応、
そんな風に考えたりして進んでいると、ゴブリン村へたどり着いた。
「(着いたか・・・。とりあえず村の中の様子も確認していくか・・・)」
俺はそう思い村に入る。
・
・
・
確認した後に思った事だが、やめておけばよかったと思った。いや、でも見るべきだったんだろうな。
・
・
・
俺は村の様子を確認しながら進んでいた。家などは所々壊れているが、大部分は残っているみたいだった。
「(これなら皆戻ってきたらすぐに住めるな。いやでも、また
それがそんな事を言いながら進んでいると、索敵で
「(そういえばあのゴミ野郎共、最初はここら辺で集まって・・いた・・・な・・・)」
俺は見てしまった。
村の皆の遺体だった。
「(うっ・・・・)」
俺は胃の中の者を吐き出しそうになる。暫くうずくまりその場でえづいていた。1・2時間程経ってようやくフラフラと立ち上がる。
「(うぅ・・・皆ぁ・・・)」
村の皆の遺体はボロボロだった。
ゴブリンの皆はあちこち切り裂かれボロボロに。
ウルフの皆はもっとひどく、毛皮がはがされて中身だけが残っていた。
そんな村の皆の遺体が1か所に集められていた。
「(くっそぉ・・・うぅ・・・)」
俺は暫く泣いていたが、そのうち泣きながら皆の遺体の傍の地面を掘りだした。
鳴きながら延々と掘り、やがて皆の遺体が全部入るくらいの巨大な穴が掘れた。俺はその穴の底に、まずは崩れた家の残骸の木を敷き詰める。そうしたらその上に皆の遺体を乗せて行った。そして遺体の上にまた木を軽く乗せる。
「(どういう埋葬したらいいかわからないから、前世の日本式、火葬にするが許してくれ皆・・・)」
俺は村の皆を火葬にして送り出そうとした。その際、接したことのある皆の事を思い出していた。
ゴブリン達からは、「ちっちゃいが頑張れ」とか「これでも食べろ」っておやつをもらったりした。
ウルフ達からは、「ちっちゃくてかわいい」だとか「将来カッコよくなる顔だ」とか、偶にかわいがってもらった。
獲物が取れるようになってからは、皆「よくやった」「頑張ってるな」と褒めてもらえた。
「(皆・・・ありがとう・・・)」
そうして火をつけようと思ったが、アッと思い出す。
「(そうだ、ごぶ助の家族は家で・・・。それに他にもいるかも・・・)」
そう思い、まずはごぶ助の家族以外を探してみる。すると何人か別の場所で死んでいた。俺はその人たちを穴まで運び入れた。
そして気が重くなるが、いよいよごぶ助の家族を迎えにいった。足取りも重くトボトボと進む。
「(家・・・見えてきたな・・・崩れてるし・・・)」
家が見えてきたが、どうやら家は崩れていた。家付近で戦闘していたし崩れるのも仕方なかったのかもしれない。
「(ん・・・?)」
その時、崩れた家の裏手に
「(・・・っ!誰かいるのか!まさかごぶ助!?)」
俺は急いで走り、その
「(そ・・・そんなっ!ごぶ助えええぇぇぇえええ!!!)」
そこにあったのは、石となったごぶ助であった。
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作者より:読んでいただきありがとうございます。今回より第2章となります。
本日はもう1話いきます。
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