第27話 ダンジョンコアとわんちゃん1

 謎の物体が異変を起こしてすごい音が周囲に響き渡った。

 同じようなことはこれで2回目だ。ごぶ助はびっくりしつつも余裕そうにしている。俺の方は倒れて転げまわるまではいかなかったが、今回も大音量だった為に耳にダメージは負っていた。


「ごぶごぶ、すごい音だったごぶ」


 そのすごい音を発生させた元凶でもあるごぶ助はニコニコしながらそう言った。

 俺はそれを見てクールに一言行ってやることにしたね。


「(なぐりたいそのえがお)」


「ごぶっ!?」


 謎の大音量が響き渡ったが、前にも同じようなことがあったので来ると分かっていた分ほんの少しマシだった。それでも耳に大ダメージを受けてまだ耳がキーンってしている。


「(前にも同じような事をしたんだからもうちょっと慎重に動こうぜ!?まぁ素手で触りにいかない分はまだよかったけどさ!)」


「ごぶごぶ、そんなに褒められたら照れるごぶ」


「(文句9割褒め1割だからな!?)」


 ごぶ助にグルルルと唸りながら文句を言っていると耳のダメージが抜けてきた。文句も言ってちょっと冷静になれたので、未だにそこにあるにまだ鑑定をかけれてなかったのを思い出した。


「(ふぅ・・・、まぁガミガミ言うのはこの変でやめといてだ。この謎の物体に鑑定をかけるので大人しくしているように!ごぶ助わかった!?)」


「ごぶ、わかったごぶ。大人しくしてるごぶ」


 反省しているのか反省していないのかよくわからん感じだが、とりあえず大人しくはしておいてくれるらしい。俺は「本当でござるか~?」と言いつつ謎の物体に鑑定をかけた。



『迷宮構成部品:迷宮核(完全実装前、オーバーロード中、魔力残量低下中)

 ・迷宮を構成する為の最重要物である迷宮核。魔素を星の龍脈から取り入れ魔力に変換する機能も持つ。』



「(やっぱりこれダンジョンコアだ)」


「ごぶ?ダンジョンコアごぶ?」


「(そうそう、簡単に言えばダンジョンの本体みたいなものだな)」


「ごぶ、これが本体ごぶ?」


 俺がごぶ助にダンジョンコアについて説明すると、ごぶ助は「これがねえ?」と言いつつまた触ろうとするので即座に止めた。


「(反省した直ぐにまた触るんじゃなーーい!とまれぇぇぇえい!)」


「ごぶ!?ごめんごぶ・・・」


「(わかればよろしい!さてごぶ助、そのままストップしてるんだぞ?)」


「ごぶ?」


 俺はごぶ助がダンジョンコアに触りに行った姿勢のままそこで静止しているように言う。そして俺はそのまま部屋の外へ出て、扉から半分顔を覗かせる。


「(よし!ごぶ助触っていいぞ!)」


「ごぶっ!?」


 ごぶ助は何故っ!?みたいな顔をしているが、これは必要な犠牲なんだよキミィ?

 迂闊に触るなとごぶ助に言ったがそれは場合によりけりだと思うんだよね?現状この部屋には他に何もなさそうだし、どうせ触って調べなければいけなくなるんだったら犠牲は少ない方がイイジャナイか?

 ・・・決してあの緩さがイラっときたとかではない。ナイハズダトイウキモナイコトモナイ。


「(さぁ触るんだ!ゴーゴーごぶ助!ごぶ助の~ちょっといいとこ~みてみたい~!ハイハイハイハイ!)」


「ご・・・ごぶ・・・」


 ごぶ助は納得いかないといった顔をしながらダンジョンコアにしぶしぶ素手で触った。今度は何も起こらずに触れられているみたいだ。


「(ごぶ助~!体に異常とかないか~?)」


「ごぶ、特に何もないごぶ」


 特に何もないと言う事なので俺は再び部屋に入りダンジョンコアの近くへ寄っていき、ダンジョンコアの周りを回りながら観察してみる。

 ダンジョンコアは丸い球みたいな形をしている様だ。大きさは割と大き目で、大体1メートルくらいはありそう。それが高さ50センチくらいの台の上に置いてあるといった様子だった。

 ごぶ助がすでに触って何もないという事なので俺も触ってみる。

 ダンジョンコアは触ってみるとツルツルした手触りだった。色は曇ったガラスみたいな感じで透明、その表面に軽く爪を立ててみたが傷は入らなかった。


「(ん~、特に何もわからんなぁ。ごぶ助は何かわかった事あるか?)」


「ごぶ、何もわからないごぶ。そういえば鑑定で何かわからなかったごぶ?」


「(そうだなぁ・・・)」


 俺はごぶ助に言われ鑑定結果を思い出す。そういえば状態を記しているみたいな感じで何か書いてあったな。


「(完全実装前、オーバーロード中、魔力残量低下中って鑑定に出てたんだよな)」


「ごぶごぶ、最初のと次のはよくわからないごぶ。最後の魔力低下中は魔力が少なくなってるごぶ?」


「(俺も最初と次はよくわからんな。最後のは字面だけで判断するならそうなるなぁ)」


「ごぶごぶ、じゃあ魔力入れてみるごぶ?」


「(ふむ・・・、なるほど?)」


 魔力を入れるとごぶ助は言うが俺はそんな事できないぞ?いや、やったことないからわからないだけで出来たりするのか?

 一度試してみようと思い、ダンジョンコアに触れて目を瞑り集中してみる。

 まずはダンジョンコアに魔力を入れるイメージをする。そして魔法を使うが使わない、そんな矛盾したことだがそんなイメージをする。


「(むむっ・・・!何か魔力がダンジョンコアに入っている気がする・・・?)」


「ごぶ!すごいごぶ!」


「(けどなんか・・・うぐっ・・・)」


 イメージしたことが成功したようで、魔力をダンジョンコアに入れれている気はした。だが入れても入れても全然満ちて行ってる感じがしなかった。そして魔力を使い過ぎたのか段々と体がだるくなってきた。


「(うぅ・・・もうだめだ・・・)」


「ごぶっ!?大丈夫ごぶ?」


「(だいじょばない・・・今日はもう無理だ・・・)」


「ごぶ・・・、大人しく休むごぶ」


 魔力を使い果たしてフラフラになってしまいへたり込んでしまった。なので今日の探索活動はここまでとして休むことにした。

 休むにあたりこの部屋の安全性についてなのだが、道中の魔物は行き止まりのこの部屋まですべて倒してきた。だから新しく魔物が生まれない限りは安全なはずと判断して、一応は警戒するが休むことにした。


「(ごぶ助ぇ・・・、すまんが今日は魔法は打ち止めだぁ・・・。だからご飯は果物食べるくらいで勘弁してくれぇ・・・)」


「ごぶごぶ、わかったごぶ。果物出すから食べるごぶ」


「(さーんきゅー。それ食ったら俺はもう寝るわぁ・・・)」


 俺はそう言ってごぶ助から果物を受け取って食べた。


「ごぶごぶ、おやすみごぶ」


 そしてごぶ助のそんな声を聞いたのを最後に夢の中へ旅立っていった。


 ・

 ・

 ・


 俺は気が付くと石造りの部屋の中に一人でいた。体が動かしずらかったので周りを見回すように視界を動かして周りを確認した。周りを見ても石の壁があるだけで何もない。何かを忘れている気がするが思い出せなかった。

 そうだ何処かへ行かなければならない!そんな気がした。だが今の俺では弱すぎるので大きくならなければならない。なので強く大きくなるために力を取り込む。

 力を取り込んでいる最中にふと思う。強さを求めるなら数だ。そう思って数を増やすために俺は・・・


 ゴブリンを産んだ。


 あれ!?俺男だよ!?男だよね・・・?

 俺が混乱している横で、産んだゴブリンは「ごぶごぶ、ごぶごぶ」と言っていた。煩いなぁと思ってそちらを見るとゴブリンの数が増えていた。


「「「「ごぶごぶ、ごぶごぶ」」」」


 石造りの部屋の中はゴブリンで溢れかえるようになっていた。その光景を見て、誰か助けて!と叫ぼうとしたが声が出ずパニックになった。

 その間にもドンドンとゴブリンは増えている様だった。


「「「「「「「「ごぶごぶ、ごぶごぶ」」」」」」」」


 石造りの部屋の中はいっぱいになり、遂には部屋の底が抜けてしまい俺は落下する。落下する時にようやく声が出た。


「うわぁぁぁあああ!たすけてええぇぇええ!」



 俺は落ちていった。そして落ちていくにつれてどんどんと浮遊感が強くなった行った。



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 作者より:読んでいただきありがとうございます。今回は話が長くなりそうだったので分割しました。なのでもう1話連続投稿します。


 果たして落ちて行った主人公の運命は・・・!


 2021/12/29 誤字修正

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