第4話 いもむしとワンチャン

 シーーン・・・


 あれ?発動してる?特に何も起こった様子が見えないんだが・・・。


 俺は首をひねり考え込み、その後周囲に何かあるのかもと見回す。

 しかし周囲にあるのはただの森と、芋虫を倒したそばでゴーブゴブゴブと喜び踊っているごぶ助のみである。


 俺のほうは何も起こらずショボーンとしているのに、いまだにゴブゴブ踊っているごぶ助に少しイラッとしていると・・・


 『ガサガサ・・・』


 周囲にある草むらからまた芋虫が出てきた。


 しかし出てきた芋虫は今さっきごぶ助が倒した芋虫よりも大分小さかった。この芋虫ならまさにワンチャン俺でも倒せるのでは?とまだ踊っているごぶ助を横目で見ながら考える。


「キュピュゥ!」


 なんか微妙に威嚇しているような感じの芋虫をみて沸々と感情が昂ってくる。


「ううう・・・きゃん!」


 やったらあ!と気合を入れるために吠えた!


 微妙にかわいい鳴き声だけど吠えたんだよ・・・?


「キュピュウ!」


「きゃんきゃん!あおーん!」


 生死を賭けた戦いの始まりである!


 ・

 ・

 ・


「ごぶごぶ、がんばれごぶ」


 その戦いはまさに・・・泥仕合であった。しかもごぶ助よりもひどかった。

 まあそれもそのはず、俺のステータスは間違いなくごぶ助よりも低いであろうし、相手の芋虫も小さいのでさっきの奴よりも弱いのであろう。


 なのでごぶ助達の戦いよりもいっそう泥仕合なのであった。


「ううう、きゃーん!」


「キュピュゥゥ・・・」


 そして何度目かの攻撃が決まりようやく小さな芋虫を倒した。俺はうれしさのあまり雄たけびをあげる。


「きゃおーーん!」


 よっしゃー!かったどーおらー!と喜んでいると体がわずかに熱くなる感覚がする。


 まさかこれは!と思いステータスを確認。



 名前:

 種族:魔チワワ

 年齢:0

 レベル:2(1↑)

 str:2(1↑)

 vit:1

 agi:2(1↑)

 dex:1

 int:1

 luk:2(1↑)

 スキル:

 ユニークスキル:ワンチャン

 称号:最弱犬 転生者



 おお!レベルが上がってる!


「たおせたごぶな、おめでとごぶ」


 やったー!と喜び、ごぶ助もおめでとうーと言ってくれて二人ではしゃぐ。

 よっしゃあ!この調子でどんどん獲物を狩っていって強くなるぞー!と俺は決心する。


 すると・・・。


『ガサガサ・・・』


 草むらから大きな芋虫が出てきた。


 ふふふ、レベル2になった俺の敵ではないな。それにユニークスキルのワンチャンもある。

 おそらくこのスキルは使うことによりそのとき望むこと・・・倒せる敵が出てきたり、ピンチだったりした時にはそれを打破できるような事が起きたりする、まさにチャンスを引き寄せるスキルだと思うんだ。


 なのでこのデカ芋虫に使えばあら不思議、木からかたい実でも落ちてきてクリーンヒットしてダメージを受けて瀕死になる、又は地面に落ちている蔦に体が絡まり動けなくなる、そんな風にして倒せる状況になるのではないか。


 そんなことを思い俺は『ワンチャン』発動!と念じながら芋虫にダッシュして飛びかかる。


 くらえ必殺のわんちゃんあたーっく!


「きゃおーーん!」

(ぺしっと情けない音で全く食らわない攻撃がきまる)


「キュピュ?キュピュゥ!」

(なにかしたのか?今度はこちらの番だとでも言わんばかりに体当たり)


「ご・・・ごぶううう!」

(あいぼおおおおと言わんばかりの悲鳴)


 俺は芋虫の体当たりを受けて吹き飛んだ。


 ぐふぅ・・・なぜだ、スキルが発動して何か起こったりするんじゃないのか。


「ごぶぶぅ!たすけるごぶ!」


 そう言いながらごぶ助は木の棒を頭上で振り回し、ジャンプしながら殴りかかった。


「ごぶ!ごぶぶ!」

(キュイーン!ズバーン!)


 何故かごぶ助の持っていた棒がわずかに光り、ポコスカ殴ってようやく倒していた芋虫を、なんと一撃で倒してしまう。


「ごぶ、だいじょうぶごぶ!?」


 なんかやたらかっこいい感じの目をしたごぶ助は、そう言って俺を助けてくれた。


 俺はその時こう思ったね。なんか仲間のピンチに覚醒して強くなるやつじゃん、主人公じゃん!と。


 俺はそんなことを思いつつ気が遠くなっていった・・・


 ・

 ・

 ・

 ・

 ・


 ≪???≫


 その男は煌びやかな一室にてある報告を受け取っていた。


「で?なんだってぇ?ごぶりぃん?」


「ハッ!魔の森近くの村から報告が上がっております!」


「そんなものぉ、適当に冒険者にでも依頼させて倒させるがよかろぉ」


 男は面倒臭そうにため息を吐きながら呟く。


「ハッ・・・ですが領主様、その村の代表の者がその・・・例の方でして・・・」


「例のぉ・・・?あーあやつかぁ」


 そう領主様と呼ばれた男はそのよく出た腹をさすりさすり、ちょびっと生やした髭をちょいちょいっといじりながら考える。


「でぇ?そやつがぁなんとぉ?」


「ハッ、それがですね・・・『冒険者に一々依頼すると金が掛かるだろう?どうせ領主の軍が暇してるんだろう?ならそれに倒させろよ!嫌だってんならあそこの領主が断りやがったってパパに連絡するからな!』だそうです。」


「ぶっふぅ~ん、あの厄介者めぇ・・・どぉせ連絡がいっても、世間の目から隠すようにあんな辺境に押し込めた息子の言葉などに反応はぁしないのだろうがぁ。もしぃなにかぁ言ってきてもぉ面倒だのぉ」


 領主は少し考え、結論をだす。


「しょおがなぃ、兵をだすかぁ。ふぅ~むそういえばぁ・・・」


 領主は積んであった書状の中から一枚取り出す。


「あぁ~、これこれぇ。聖王国のやつらが言ってきおったやつぅ」


 そう言い、その書状を部下に渡す。


「ハッ、拝見します。・・・教徒の訓練の為、魔の森への通行を許可されたし。ですか」


「そぉそぉ、それそれ。それのぉついでにぃゴブリンを狩らせばぁよいかと思ってなぁ」


「ハッ!いい考えかと存じます。あの聖王国の者どもは『魔物は殺すべし!やつらは世界を滅ぼす邪神の先兵!』等と言っている、頭のおかしい連中ですので」


「そぉそぉ、魔物がどうとかよりもぉ帝国民以外はぁすべて劣等だってぇいうのにのぉ。聖王国はぁ回復魔法を使えるものがぁ多いからぁ、便利ぃなやつらぁだから煽ててやってるぅだけだってぇいうのにぃなぁ」


「ハッ、まったくです」


 ハハハ!と二人は笑いあう。


「それでは領主様、そのような方向で動けばよろしいでしょうか?」


「あいつらぁだけで行動ぉさせるとぉ何をやらかすかぁわからんからぁ、こちらからぁも何人かぁ兵をつけとくのだぞぉ」


「ハッ、念のために私も同行しようかと思います」


「うむぅ、どうせぇもうすぐ冬がきてぇ道が閉ざされるからぁ、暖かくなってきてからでぇよかろぉ。村の者がぁ何か言って来たらぁ、適当にぃごまかしてぇ要請は伸ばしておけぇ」


「ハッ!かしこまりました」


 そう言い部下の男は部屋を退室していく。ゴブリンを狩るための準備をするために・・・   


 -------------------------------------

 作者より:お読みいただきありがとうございます。

 「面白い」「続きが読みたい」「あいぼおおおおお!」等思ったら、☆で高評価や♡で応援してください。

 ☆や♡がもらえると ごぶ助が、助けてに駆けつけてくれます。


 お詫び:2021/11/28 にセリフの言い回しや行の改行修正などを行いました。

     2022・1・20 行間微修正

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る