「僕らの夏」大人課題図書&児童文学

木村れい

第1話 「御茶ノ水の変」

 御茶ノ水駅前、人混みが行き交う喧騒の中で、声を震わせながら僕は、髙山に言った。

 我慢が限界の頂点だったのである。


 「髙山君のいつも人を何かバカにするような言い方、特に香川さんを傷つけていて謝らないのは許せない。見ていて辛い。もし、今後、君がそういう態度を直そうとしないなら、僕は、君と付き合わないし、友達をやめます。香川さんに謝って欲しい。」

 声が震え、足は、ガクガクしていた。

 僕はその場を直ぐに去る。

 カッカッカッ。足早に丸の内線に歩き出した。


 僕らが大学の社会学部に入学して2ヶ月たった頃、知り合いたての髙山唯介たかやまただすけ君の、自分の思う正義感が強いばかりに『何かと周りの人を傷つける言動』について、僕は、腹を立てていたのである。


 怒りの発端。僕ら二人は、ある出版社で、同じバイトをしていた。


 彼が、僕と仲良しの校正の香川さんと何故か学生アルバイトの立場なのに、生意気にも喧嘩をしたらしい。

 聞いた時に、いかにも彼らしいなとは感じた。他のスタッフに後から聞いたが、髙山が何か傷つける言葉を言い放ったらしい。


 しかし、だいたい俺が先にバイトをしていて、髙山君を紹介した経緯もあるし、僕の立場がないのである。


 僕は怒りに震えていた。


 2部社会学部(夜間部)の授業は、当時に2時間目は、19時に終わった。髙山君と学校の帰り道に、たまたま遭い、僕はついに冒頭のように啖呵を切ったわけだ。




 しかし、その翌日、髙山君が開口一番に言った。

 「言われるまで、気づかなかった。香川さんに謝るよ。」


 言葉少なに謝罪してきた。かなり痛く傷ついた様子だった。僕も未熟だし、言葉選びが出来なかったかもしれない。


 正直は彼の癖の強さや、尖りっぷりは直るとは思えないから、違和感は残ったが、謝ってくれたし、香川さんにも謝ると言う。だから僕らはその後も友達で居た。


 




 そんなよくある学生時代の友人との衝突である。そんな話からこのストーリーは、はじまるのだ、のだ。


 あちこちの野田さんごめんなさい、はとりあえず入れておくのだ。




 ※この作品はエッセイ的要素は持ちながらも完全なる架空フィクションです。登場する人物、団体、その他の事象は想像の産物になります。あらゆるコンプライアンスに配慮した作品と思いながら、すべての物、事象にリスペクトの気持ちを忘れずに書いていきます。

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