卑弥呼が自伝を書いていた

マチュピチュ 剣之助

プロローグ 世紀の大発見

「ついに見つけたぞ・・・。邪馬台国やまたいこく

 雪田ゆきた教授はとても興奮していた。何しろ長年にわたって謎とされていた邪馬台国の場所を特定できたからである。場所の特定は困難を極めており、何度も大学の他の研究者から見放されてきた。今となっては、雪田教授を手伝っているのは、学部生の澤山さわやまただ一人である。

「先生、ここら辺掘ってみたら何か見つかりますかね」

 興味本位で澤山が聞いてみた。

「そうだな。卑弥呼の装飾品らしきものとか出てくるかもしれない」

 雪田教授も掘ることに賛成した。


 三時間ほど掘り続けただろうか。これといって珍しいものは見つからず、二人の間に諦めムードが漂っていた。その時・・・。

「先生、何か紙みたいなものが入った箱を見つけました!」

 澤山が叫んだ。雪田教授も慌てて澤山のもとへいく。

「本当だ。これは紙のようだ。けど、不思議だな。この時代には紙は使われていないような気がするのじゃが・・・」

 不可解なことは多いが、二人は紙を広げてみた。

「これは、文字ですね!?弥生時代の人が書いたのでしょうか、先生?」

「そんなことはあるまい。この時代は、中国に日本のことを記したものは見つかっているが、日本ではそのようなことはなかったはずじゃ」

 現実に起きていることがあまりにもあり得ないことであり、雪田教授は混乱しだした。

「い・・・や・・・。これは弥生時代に日本人が書き残した書物のようじゃ」

 なんと、二人は邪馬台国の場所を特定しただけでなく、さらなる大発見をしてしまった。


「先生、昔の文字読めるんですよね?なんと書いてあるのですか??」

 澤山は今起きていることに驚くことなく、興味津々に聞いた。澤山はどんなあり得ない話も信じてしまう性格であった。だからこそ、唯一雪田教授についていける存在であったのだろう。

「表紙を読んでみるぞ。『自伝 著:卑弥呼』・・・」

「ひぃみぃこおー?あの、ひみこ??」

 澤山がすっとんきょうな声を出した。雪田教授も放心状態に陥った。

「卑弥呼が自伝を書いたというのは何事じゃ。あり得ないことがたくさんおこっていて、もはや何が非現実的なのかわからなくなってきた」

「先生、これを解読したら大変なことになるんじゃないのですか!?邪馬台国のこと、もっともっと知りたいです!」

 澤山の嬉しそうな声に雪田教授は頷いた。

「しばらく時間をくれ。さすがにこれだけ分厚いと読むのには時間がかかる」

 雪田教授は卑弥呼の自伝らしきものを家に持って帰って行った。


 二週間後~


「先生、解読できたって本当ですか!?」

 澤山が雪田教授の職場を訪ねてきた。

「ああ、大変だったが何とかできたぞ。あそこにおいてあるぞ」

 雪田教授は毎日徹夜で作業したようで眠そうである。

「先生、卑弥呼はどうして自伝を書くことができたのでしょうね」

 澤山は不思議そうに聞いてみる。

「それも、自伝に書いてあったわい。まったく卑弥呼って人は想像以上にすごい女性じゃ・・・」

 そう言うと、雪田教授は寝てしまった。澤山はワクワクしながら現代語に翻訳された卑弥呼の自伝を開けた。


 この小説は、以降雪田教授の監修のもと復興された卑弥呼の自伝をそのまま掲載したものである。

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